表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
交差する二つの運命の夢物語!!  作者: 双月キシト&なっぺ
2/9

★第1話 彼等

初めまして、或いはお久しぶりです。駄作者のなっぺです。

今回は縁あって長編の双月キシトさんとのコラボ小説にチャレンジすることとなりました!

なんだか信じられない思いです。全力で臨みたいと思いますので、応援をしていただけると嬉しいです~。

 天気は快晴。風も心地よく、出掛けるにはうってつけのこの日。凪波丘市にある様々な観光地の中でも、人気の高いこの桜間丘。そこは、数々の観光客で賑わっていた。


 その一角、木陰に広げられたビニールシートの上では、地獄の様相を見せていた。


「コータ、どう? おいしい……かな?」


 少女が話しかけた相手は、少女の言葉に頷いて返事を返したようだ。


「よかったぁ〜。早起きして作ったんだけど、うまく出来てたみたい」


 かわいらしい笑顔を浮かべ、手に持った箸を降ろした金髪碧眼の少女は、鏡ありす。この地、凪波丘に住む小学三年生だ。


「コータったら、僕らみたいな美人な女の子たちに囲まれているっていうのに、モグ。テンション低いよ〜? もっと元気にいこうよ!」


 小皿に盛ったから揚げをほお張りながら、言う少女は、リーム。自身を僕と言う、青い髪と瞳を持つ彼女は、口にいれたから揚げを飲み込むと、不満げに視線を向ける。


「マスター、食事が終わりましたら修業を再開します。午後からは座学を行いましょう」

 類い稀なるプロポーションと、流れるような銀髪。どこか、キャリアウーマンにも似た雰囲気を持つこの女性は、フォルティトゥード。トゥードと呼ばれる彼女は、一同にとっての保護者とも言える存在だ。


 そして、先程から彼女達が話しかけている相手こそ、彼女達の中心人物である少年、吉谷吼太。未だ性別の判別が難しいほどに幼い顔立ちと身体を持つ彼は、その気の強そうな顔を、気づかれないように僅かに、しかし確かに歪めたまま、ありすの弁当を一人で食べ続けていた。


「もう、コータ! そんなにありすちゃんの料理ばっかり食べて! 僕だってお弁当作ってきてるのに」


「…………すまん」


 そう一言だけ返し、再び吼太はありすの弁当を食べはじめる。


 吉谷吼太という少年は、特別言葉数が少ないという訳ではない。むしろ、直情的で思ったことは素直に口に出すことが多い。


 そんな彼が何故、必要最低限の言葉しか出さないのかというと、原因は彼が食しているありすの弁当にある。


 口にするのも憚られるような見た目をした具材の数々と、悍ましいほどに形を変えつづける具材の数々。そのどれもが、原色そのままの凄まじい色合いであり、とても食物とは思えない外見をしていたのだ。


 無論、味のほうもおよそ生物が食べられるようなものではない。耐性のない者が食べたなら、体内にいかなる異常が起きてもおかしくはないのだ。


 劇薬にも似たありすの料理に耐えられる生物がいるとするなら、それは生まれてから、ありすと共に育ってきていたが故に、幾度と無く試食相手(じっけんだい)になってきた、吼太だけだろう。


 そう悟っていた吼太は、せめてこの場にいる他の面々にだけは食べさせまいと、ありすの弁当を囲い込んで食べていたのだ。


「もー、たまには僕の作ったおかずも食べてよー。はい、あーん」


「…………あーん」


 ダメージが大きいのを示すかのように、生気の感じることの出来ない虚ろな目のまま、口を開ける吼太。その口に、リームが自身の作ったコロッケの一部を入れる。


 咀嚼し、飲み込む。そして見下ろした先にある、異形の数々。その生れつきの赤い眼の奥に潜む感情は、悲観か諦観か。


「そういえばセンちゃんたち、遅いね」


 ありすが箸で卵焼きを取りながら言う。


 セン、というのは吼太の家に居候している少女だ。彼女もまた下に四人いる妹たちと共に、この桜間丘にピクニックにやってきていた。今は、飲み物を買いにいくために妹たちを連れて、売店に行っている。


「今日は実に良い天気です。ピクニックに来ている方も多いでしょうから、直ぐには買えない可能性もあるでしょう。このまま待っていれば、いずれは戻るかと」


 トゥードが、周囲の状況や賑わいを確認した上で、自分の予想を言う。




 事実、トゥードの予想は間違っていなかった。売店には多数の客が押し寄せ、ぎゅうぎゅうに詰まっていた。


 だが、それでもセンたちは飲み物を買うことには成功していたのだ。


「ほれ、こっちも食べなさい」


「おぉ、すまないな」


「お茶と漬物が好きだなんて、いまどき珍しいねぇ」


「儂も自覚はしておるがのぅ。うむ、これはよい漬物じゃの」


「この酒瓶を頭に思いっきりぶつけたら、どんな感じで死ねるかな」


「おやおや、まだ若い子が、そんなことを言ってはいけないよ」


「ぐぅ……」


「ほれ、こんなとこで寝ていたら風邪を引いてしまうよ」




「だぁぁぁ! セン! 何食っているのだ! ミナ! 和んどる場合か! カンナ! こんなとこでまで死のうとするな! キサラ! 寝るな!」


 あまりにあんまりな姉と妹たちの自由奔放ぶりに、声を張り上げてツッコミを入れるのは、姉妹の中でも三番目の位、つまりは三女のナツハ。尤も、苦労度で言えば断トツで一番かもしれないが。


「ナツハ、うるさい」


「何を言っておるのだカンナ! 妾達は早く飲み物を父君達の元にに届けなければならぬというのに、お主らときたらぁ〜!」


 抑えきれない怒りを表すかのように、地団駄を繰り返すナツハ。


「まぁ、決して急ぎではないし、せっかくのご好意を無駄にするのもなんだ。長居はしないまでも、もう少しは相伴に預かってもいいんじゃないか」


 老人たちに貰ったらしい煎餅をかじりながら言うセン。


「……そんなことを言って、本当はただ食べたい訳じゃないだろうな?」


 じろり、とセンを睨み付けるナツハ。




「………………………………さぁ」


「今の間は何なのだ今の間は! 明らかにそっちが本音なのだろう!」


「………………ナンノコトヤラ」


「カタコトになっておろうがぁぁぁ!!!」






「…………ごちそうさま。もう、無理」


 限界まで詰め込んだらしい、吼太がビニールシートの上で仰向けに倒れる。その顔はどこか青ざめているようにも見える。


「ふふっ、お粗末様でした」


 ありすが笑みを浮かべ、弁当箱を片付けつつ、仰向けのままお腹をさする吼太に言う。


「沢山食べたね〜、コータ」


 リームもまた片付けをしながらも、やはり吼太の様子に笑顔を浮かべる。


 ただ、吼太が倒れたのは弁当を食べすぎたのではなく、ありすの弁当によるダメージが限界に達したからなのだが。


 青い青い空を見上げ、吼太は思う。


 死にたくない、と。


「空って、青いな」


「マスター、発言がまるで死期を悟った人のようですよ」


 トゥードに言われ、微かに見えていた走馬灯を振り払う吼太。身体を起こし、片膝に腕を置く。


「まぁ、二度も飯関連で死にたくないからな。あれぐらいならギリギリ大丈夫……な、はずだ」


「気をつけて下さい。マスターが死んでしまえば、ありす様やリーム様、セン様達が悲しみます。無論、マスターの武具であり、精霊である私も、です」


 吉谷吼太達は、普通の人間ではない。見た目こそ、ごく普通の人間ではあるが、実際はそれぞれが何らかの特異性を持っている。


 例えば、吼太は神によって新たな人生を与えられた、ありすはとある事件に巻き込まれ、殺された末にその犯人によって再び蘇らせられた、といった具合だ。


 リームやトゥード、セン達は精霊と呼ばれる存在であり、厳密には人間ですらない。それぞれが違った、強力な力を持っている。


 尤も、その力も、平和な日常には大した役に立つ訳でもなく。力の存在を公にしていないこともあり、最近は平和な毎日が続いていた。


「分かってるよ」


 そう言い、そこでふと何かに気づいたらしい。吼太の視線がトゥードの手元に向けられる。


「トゥード、それ……宝石か? 何なんだ?」


「これですか?」


 トゥードが、手に持った物を見やすい位置にまで持ってくる。


「宝石……?」


「まるでルビーみたい。スッゴク綺麗……」


 大きさとしては、バレーボールが近いだろうか。非常に大きいが、トゥードが持っているそれが、何の変哲もないただの宝石であるはずがなかった。


「これは、以前にある方から頂いたものです。普段は保管魔法にて、異空間に保管していたのですが、何やら妙な反応を検知したもので」


「ある方?」


 リームが、"ある方"の正体について尋ねる。


「私も詳しくは知らないのです。彼女は、何かから逃げていたようでした。私が彼女と逢った時には、既に致命傷を負ってしまっていて……」


 その時を思い出してか、どこか物憂げな雰囲気を醸し出すトゥード。


「彼女は最期の力を振り絞り、私に、それを託しました。『いつの日か、その力が必要になる時が来るから』、と。私も独自に調べてはみたのですが、奇妙な、魔法に近い何かが内部に秘められた以上は分からず……」


「へぇ……」


 ありすが紅い宝石を覗き込む。魔法の知識こそまだまだだが、その感受性はメンバーの中でもトップクラスのありすだ。何か、感じるものがあるらしい。


「トゥード、さっき妙な反応って言ったよな。そいつは、この宝石からってことだよな?」


 吼太の問いに、トゥードが頷いて応える。


「以前に比べ、活性化している兆候が見られます。最初はマスター達転生者に反応しているのかと思いましたが、どうやらそうではないようです。予想するに、何か、よくないことが起こる、前兆ではないかと」


 トゥードがその、能面を貼付けたような表情で、淡々と告げる。


「よくないこと、ねぇ。じゃあ――――」


 吼太が突然、ユビキタスサークルを起動したかと思えば、取り出したエクスドリルを天に突き出す。


「――コイツも、その"よくないこと"ってことかッ!?」


 突き出したエクスドリルは、上空から迫って来ていた、全身が黒い人間型のモンスター――魔霊種精霊を串刺しにする。魔霊種精霊は、ダメージに耐え切れず、光の粒子となって散っていった。


 しかし、敵はそれだけではなかった。周囲の草むらから、地面から、空から、そして空間を引き裂きながら、魔霊種精霊が次々と現れてきたのだ。


 瞬時に気を引き締め、戦闘体勢に入る。吼太たちの今の表情は、ピクニックを楽しみに来た行楽客ではなく、戦士のものへと変わっていた。


「食後の運動にゃちょうどいいか!」


「お腹いっぱいで元気いっぱい! 僕も頑張るよ!」


 腕を大きく回し、張り切った様子を見せるリーム。


「でもなんで……!」


「恐らくは、あの宝石に惹かれて来たのでしょう。周囲との空間を断絶します。被害は最小限に収まるかと」


 トゥードが魔法を行使するべく、魔法陣を展開した。間もなく、辺りが静寂に包まれていく。魔法により一帯の空間が、周りと切り離されたのだ。


「セン達がいないのがちょいとばかし痛いがな。ちゃっちゃと倒させてもらう。さぁ、いくぜッ!」




 彼等はまだ知らない。


 この戦いが齎すものを。これから起こることを。


 誰と出会い、何を見るのかを。


 彼等はまだ、知らない。


はい、初回から登場人物出過ぎですよね。ただ、こちら側の人物はこれで全員になるので、ご安心を。

まだまだ序盤だけあり、謎のなの字も出てませんが、これからエライことになると思います。

多分!←


ではではこの辺で! 次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ