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青く 広く どこまでも  作者: 花魁
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~魔女 ウィッチェ・ウェスト~

~魔女 ウィッチェ・ウェスト~

扉を開けるとその部屋の一番奥の椅子にストロウンは足をくんで座っていた。不敵な笑みを浮かべている。彼は私たちの姿を見るとゆっくりと口を開いた。

「よくここまでたどり着いたな・・・。褒めてつかわすぞ。俺の仕掛けたトラップを全てかわすとは・・・・。恐れ入った。君たちを見くびっていたようだな。」

「いや、あの・・・そこまですごいトラップなかったじゃない。」

「な・・・なんだと! 俺なら猫が喋った瞬間絶叫するし恐れをなす。さらに女子更衣室のトラップにもひっかからなかったな! あれは俺の渾身のトラップのつもりだったんだぞ! なのに・・・・引っかからないばかりかバカにされるだと!?」

「おまえみたいに俺には下心が無いからな!! そんな、安っちいトラップには引っかからないんだよ!」

悔しそうに顔を歪めるストロウンに対して得意げな顔をしてほざくジョフェーレ。私はそんなジョフェーレをジトっとした目で見る。こいつ・・・あんだけ女子更衣室入ろうとしてたくせに・・・。下心無いとかどの口が言ってんのよ・・・。下心の塊じゃないの・・・・・。

それにしても・・・魔王ってこんなやつだったわけ・・・? もっとすごいやつだと思ってたのに・・こんなやつだったなんて・・・。クソ剣士と同レベルじゃないの!!

「おい・・・・。お前さ、なんかすっごい失礼なこと考えてねーか?」

私の視線を感じたジョフェーレが不満そうな声を漏らす。私はスッと目をそらす。

「そ・・・そんなことよりも、せっかくここまで辿り着いたのよ。さっさか倒して私たちの大切なものたちを返してもらいましょうよ!!」

「そんなことって言い方・・・。まあ、そうだな。2人で力合わせますか。そしてとっとと女の子をかえしてもらおうぜ!」

目を見合わせてしっかり頷いた私たちを見てストロウンが嘲笑う。

「君たち2人のチームワークには恐れ入ったよ。だがな、そんなもので俺に勝てるなどと思い上がるなよ。俺の力はこの城にいると最大限になるのだ。城の外で戦ったときにすら勝てなかった君たちがこの城内で俺に勝てるわけなかろう」

「さっきまでの力だったらな。ただな、今のおれにはサラさんの応援がついてるんだよ!!

あの子のためを思えばお前を倒すことなんて朝飯前だ!!」

「そうよ! 私にだって取り戻したいものがたくさんあるのよ! それに・・・さっきは焦ったけどね・・・私たちのチームワークはこんなものじゃないのよ!私たちのことなめないでちょうだい!! 行くわよジョフェーレ!!」

「おうよ!!」

私は呪文を唱え、ジョフェーレはすぐさま駆け出し軽く飛んだ。そしてストロウンめがけて短刀を振り下ろす。それをいとも簡単に避けるストロウン。しかし彼が下がった足元には私が放った水溜りが。足を突っ込んだストロウンだったが小さな水溜りを見て嘲笑う。

「は・・・。こんなちっぽけな水溜りでどうしようというのだ。滑って転倒などという展開でも期待したのか? 運任せの戦いだな。そんな戦いで勝てるわけがない。」

「さあ・・?それはどうかしらね・・・。」

バカにしたように笑いながらジョフェーレの攻撃を避けるストロウン。私もジョフェーレに応戦しながらタイミングを疑う。ストロウンはというとだいぶ余裕が出てきたのか油断が見えてきた。私はその隙を逃さまいとジョフェーレに目配せをする。ジョフェーレは私の合図を確認すると、口元に小さく笑みを浮かべて目にも止まらぬ速さでレイピアを取り出しストロウンめがけて振り下ろした。不意を突かれて焦ったのかストロウンは体勢を崩し、ジョフェーレに押される形となった。私を視界から外してジョフェーレに集中し始めるストロウン。私はその隙に誰にも聞こえないくらいの小さな声で呪文を唱える。先ほど作った水溜りがわずかに光った。その光を見て軽く頷くジョフェーレ。ストロウンは水溜りに起きた変化など全く気付いていないようだ。ジョフェーレは上手く誘導して、ストロウンを水溜りの方へ追い込んでいく。そしてついにストロウンが水溜りの中に足を踏み入れた。次の瞬間、ビリッ! と音がした。

「な・・・・。」

唖然とした顔で崩れるストロウン。彼が踏み入れた水溜りからは煙があがっている。

「ナイス・・・。ウィッチェ・・・。」


息を切らしながら私の方に向かってくるジョフェーレ。ジョフェーレがストロウンを引き付けている間に私は水溜りの中に電流を流した。そしてジョフェーレに誘導され水溜りに足を踏み入れたストロウンに感電したのだ。

「あんたも・・・なかなかいい仕事してくれたじゃないの。レイピア取り出すときとか速すぎて見えなかったわよ。うまく誘導してくれて・・・ありがとう。」

「いや、お前の応戦のおかげだって。こっちこそありがとな。にしても・・・こいつどうする? なんかで縛って持ってくか?」

そんなに電力を強くしたわけではないので、死にはしないだろう。気を失って動けない程度なので、とっちめて王のところへ運ぶのにはちょうどいい。

「そうね・・・。そうしましょうか。」

私が答えた時だった。

「まだ・・・まだ終わってないぞ・・。」

私たちの足元から聞こえてくる声。ハッと足元を見るといつの間にか意識を取り戻したストロウンが私たちを見上げていた。

「意識取り戻すの、思いのほか早かったわね・・・。でも、そんなにボロボロじゃあ、もう戦えないでしょ? 負けをみとめなさ・・・・」

そこであることに気づいてしまった私は言葉を続けることができなかった。そんな私を不審に思ったジョフェーレが私に問うてくる。

「おい・・?どうしたウィッチェ?」

「・・・・・・・・・・こいつ・・・・この体勢をいいことに・・・・私のスカートの中覗いていやがる・・・・。」

ストロウンは私たちと話しながら、倒れたまま私のスカートの中を覗きこんでいた・・・。私にばれると、バツが悪そうな顔で私を見て目をそらすストロウン。

「これは・・・・不可抗力という奴だ・・・・。」

「バッチリ見てただろうが!! このアホがあああぁぁぁぁ!!!」

乙女のスカートの中覗くとかどんな神経してんだ!! 無礼にもほどがある。私はストロウンにとび蹴りをお見舞いする。

「おうふっ・・・・・。」

気持ち悪い声をあげて再びうずくまるストロウン。そんなストロウンを見てぽつりと呟くジョフェーレ。

「ホントにアホだぜ・・・・。ウィッチェのスカートの中なんて覗いても楽しくなんかないだろうに・・・。」

「あんたはさりげなく失礼なこと言ってるんじゃないわよ!!」

ジョフェーレにもとび蹴りをくらわす。

「おうふっ・・・・・・。」

こちらも気持ち悪い声をあげて膝から崩れ落ちる。

「なかなかいい蹴りだ・・・。しかし・・・これで終わったと思うなよ・・・。」

お腹を抑えながらとぎれとぎれに言葉を絞り出してくるストロウン。

「あんた・・・まだ負け惜しみ言ってるわけ・・・?」

呆れたように言った私にストロウンは勝ち誇ったような笑顔で驚くべきことを告げた。

「負け惜しみなどではない・・・・・。君たちが城に入ってくる前に俺は、いや、ストロウンは分身しておいたのだ・・・。俺はその分身だ。言っておくが、分身は俺だけじゃないぞ。もう一体いる。俺よりも強いヤツがな! 君たちも俺との戦いによって心身共に疲れきっているだろう。そんな君たちにストロウンを倒す力が残ってるはずがないだろう・・・。」

「分身・・・?そんなのありかよ・・・。」

呆然として呟くジョフェーレ。私もその横で同じことを考えていた。

分身・・・? つまり、まだ私たちはストロウンを倒してないってこと・・・? しかもコイツよりも強い奴が・・・? そんなのが今ここへ来たら・・・。この体力じゃ戦って勝てるはずがない・・・。絶望に似た気分に私たちが陥った時・・・。

ギイッ・・・・。

鈍い音がして私たちの背後の扉が開いた・・・・。

そこにいたのは・・・・

今私たちの目の前で倒れているストロウンと全く同じ顔を持った奴だった・・・。




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