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青く 広く どこまでも  作者: 花魁
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~魔女 ウィッチェ・ウェスト~

~魔女 ウィッチェ・ウェスト~

ポカポカ温かい日が差し込んでくる昼下がり。私はガーデンカフェ『パラダイス』にいた。甘い香りとお日様の香りが交互する。女の子たちの華やいだ声。目の前にあるショートケーキを口の中に含むとクリームが口の中でとろけ、口当たりの良い甘さがいっぱいに広がる。

「ウィッチェさん! まだ何か注文されますか?」

1人の女の子が聞いてくる。ここにいる彼女たちはこの国唯一の魔女である私を慕ってくれる子達だ。メニューを覗きこんでみると『ラズベリーのミルフィーユ』『イチゴのティラミス』『抹茶のシフォンケーキ』『黒ゴマのババロア』『マンゴープリン』などなど・・・心をくすぐるスイーツの数々が目にはいった。

「うーん・・・どれもおいしそうねぇ・・・。あ、じゃあ、こうしましょう。全部頼んで皆でちょっとずつ食べましょうよ!」

「ウィッチェ様と食べ合いっこ・・・。」

「何たる幸せでしょう・・・。」

女の子たちが手を胸の前で組み、うるんだ瞳で私を見上げてくる。

か・・・・かわいい!!本当にこの子たちはかわいい!!母性本能のようなものがくすぐられてくる。

「お待たせいたしました。ラズベリーのミルフィーユ、イチゴのティラミス、抹茶のシフォンケーキ、黒ゴマのババロア、マンゴープリンでございます。」

イケメンウェイトレスが注文したスイーツ達を運んできてくれる。キラキラ宝石のように輝くケーキ達。そして・・・

「おいしそう・・・。じゃあ、私はこのババロア頂きますね。はい、ウィッチェ様、あーん。」

ケーキと同じようにキラキラと目を輝かせて私を見つめてくる、女の子たち。

『ケーキを女の子たちと一緒に食べる』

これが、私の心のオアシスだった。そしてこの幸せがずっと続くと思っていた。なのに・・・


ある日のこと。いつものように『パラダイス』に向かった。しかし、いつもは真っ先に来ているはずの、私を慕ってくれる女の子たちが来ていなかった。しばらく待ってみても、誰も来ない。珍しいが、皆用事でもあるのだろう。こんな日もあるわ・・・。

そう思い、その日は1人でケーキを食べた。しかし、次の日も、その次の日も女の子たちはやって来ない。だんだんケーキが味気なくなってくる。痺れをきらした私は自ら彼女たちを迎えに行くことにした。ところが・・・迎えに行くと彼女たちは数日前から家に帰ってきていないという。どの家にも彼女たちはいない。彼女たちがよく行っているブティックショップ、雑貨屋に行っても数日前から彼女たちは店に来ていないと言う。おかしい・・・。

不審に思った私はとりあえず『パラダイス』へ足を運んだ。甘いものを食べながら彼女たちがなぜ行方不明なのかを考えようと思ったのだ。

「お待たせいたしました。イチゴのショートケーキでございます。」

いつものようにイケメンウェイトレスがケーキを運んできてくれる。ケーキをフォークで切って一口食べた。その瞬間衝撃をうけた。いつもとケーキの味が違う・・・!!!

ここのケーキは飽きるほど食べているので(かす)かな味の違いでもすぐにわかる。そして、ここのシェフの女主人は人一倍スイーツを作ることに厳しく、いつも絶対に同じ味を作る。味がぶれたりすることは決してありえない。イケメンウェイトレスを呼ぶ。

「お客様、いかがなさいましたか?」

「今日のケーキを作ったのは誰? いつもと違う人が作ってるでしょう?」

「・・・・・・・・・副店長でございます。」

「女主人はどうしたの?ちょっと副店長を呼んできてちょうだい。」

「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」

そう言ってイケメンウェイトレスは奥に引っ込む。ウェイトレスと入れ違いでやってきたのは、すこしぽっちゃりとした副店長がやってきた。

「お客様、お呼びでしょうか。」

「今日のケーキはあなたが作ったのよね。女主人はどうしたの?風邪でもひいた?」

そう尋ねるとなぜか副店長の顔から血の気がひいた。そして震える声でこう言った。

「実は・・・一昨日店長が店に来るなり『運命の相手をみつけたの。彼の名前はストロウンっていうの。私、ストロウン様のもとに行くわ。』と言ってきました。私たちが慌ててお店はどうなさるつもりなのか聞くと『あなたたちに任せるわ。あなたたちでもケーキくらいは作れるでしょう』そう言って私たちが止める暇もなく、飛び出していきました。

ストロウンという名前がなぜか心に引っ掛かったので調べてみると、その男は今、世間を騒がしている魔王であることがわかりました。店長もあの男に魅入られてしまって帰ってこないのです・・・。」

その店長の話で私のなかで全てのつじつまがあった気がした。数日前から急に行方不明になってしまった女の子たち・・・・。そう、きっとこれも魔王ストロウンのせいに違いない。彼女達もストロウンに魅入られ彼の城へ行ったのではないか・・・。

・・・・・・・・・・・ふざけるな!!!!!!!!!!!!!

『スイーツを女の子たちと食べる』私の心のオアシスを取り上げやがって!!!!!

私からスイーツと女の子両方を取り上げるですって!!??そんなの、死に等しいじゃない!!怒りが沸々とこみあげてくる。許さない・・・私のオアシスを持って行った魔王ストロウン・・・こいつはこの手で私が倒す!!!こうして、魔王ストロウンを倒す旅に私は参加することになった・・・。




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