表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/40

第二十五話 「約束」

第二十五話 「約束」


それは、遠い日の約束であり、一人の男との契約であった。

ただ、悠久の時が流れる中、それは行われた。契約といってもずっとこの惑星にいるというだけの契約

――選びたかった。私が当初この惑星に流れ着いた時は、人類がそこに存在し、豊かに暮らしていた。

その人類は、我達を受け入れてくれた。この広い宇宙で、何事もなく。ただ、当たり前のように

それが嬉しかった。初めて他人を信じられた。

昔の我は、誰も信じられず、認められず。ずっと過ごしていた。この広大な宇宙で

この出来ごとをさかいに、我達はこの惑星で暮らすことにした。

ここには、あらゆる生命が満ち溢れ、そしてその生活を私はさらに便利にしていった。

とても、我には幸せだった。だが、この社会に入ってきた我を快く思わない所か、滅ぼそうとしたものがいた。

一人の男の裏切りによって。

……

「どうした?」

「なんでもないよ、早く位置を教えて」

「分かった。今送る。みょ~ん」

「そのみょ~んってなんとかならないの?凄く気が抜けるんだよ!」

私は、いつも一緒に行動している彼に言った。私は、今、白い機械のコックピットに乗っている。元からこれだけの数があったのにはビックリしたけど、紅の機械だけは、絶対無二の存在らしい。

動力が他のものと格段に違う、それは、ある惑星に一体だけフィアーズ族と共に送られたみたい。二千年前に。

「また、そんなツンデレを。やめてくださいよ、惚れませんよ」

彼はいつもこう。味方に位置を送る時も、果てには、敵にも送る始末。一体何処でこんな語彙を覚えたんだろうと思う時もある。

前の仲間から、彼はこう呼ばれていたらしい「欠陥品」私は彼が欠陥品とは思わない――けど変わっていると思う。

「あなたが優秀なのは分かってるけど、いい加減にしないとこっちも怒っちゃうよ?」

「サーセン。所で、このサーセンという意味はどういう意味なんでしょうか?」

「知らない!とりあえず、ちゃんと謝ってる風には聞こえない!」

「そうですか、ではごめんなさい」

「よし、それじゃあ、仕事しよう!」

「分かりました。では逝きましょう」

「うん、きっと違う意味で言ってるんだろうね。とにかく行こ!」

私は調子を見事に乱されて、戦いに向かった。

いつもこう。どうも緊張感が生まれない。

どうしてかなぁ……。

……

「ん?」

懐かしい

。そのような感情が一瞬、心に灯った。とても懐かしかった。俺は今でも大切だと思っている、人だった。

「どうしたの?輝くん」

咲が、少し困ったような顔で、こちらに目を向けていた。

そんな目で何故見ているんだ。

「いや……多分、気のせいだ」

「そ、そうなんだ」

「ああ」

レクイエムの駆るフェクサーもどきを撃破してから、一週間がたった。未だに、復旧のめどが立たず、街は、似つかわしくないガレキの山が広がっている。

咲、京郎さん、エス、エムは俺との記憶を思い出していた。レクエイムとの戦闘中に起きた光、それがきっと原因だったんだろう。

皆が思い出してくれて、嬉しかった。とても、やっぱり人は一人では生きていけない。

他の皆には、俺のことが解らないみたいだけど。でも……きっと思い出してくれるはずだ。

京郎さんの説明では、俺の存在をギリギリまで吸い取ったファリクサーは、次の段階として、新しい搭乗者を選んだらしい。現搭乗者の存在が吸われることによって、ファリクサーでさえも、搭乗者を判別できなくなる副作用らしい。

それにより、クラスメイトである、大熊が選ばれた。

咲、京郎さん、エス、エムの記憶は、大熊と過ごした記憶。俺と過ごした記憶の二つに分類されているらしい。俺ならそんなことになったら困惑するかも知れない。

正史は、俺との記憶。俺と過ごした記憶。らしい。咲、京郎さん、エス、エムの中では……。

皆に覚えていてもらっているのがこんなに嬉しいと感じられる。それはとても幸せなんじゃないか、と思った。

「輝くん、何処にいくの?」

「え?」

「え、じゃないよ。今からいくんでしょう?私は、何処か知らないけど……」

そうだった、そうだった。忘れてたぞ……今。危ない。

咲を呼びだしたのは俺だ。今日、やっておきたいことがあるから。

「明日にはできないから、今からいこうと思う、ファリクサーに乗って」

「え……?う、うん。明日には、来るって言ってる……」

「ああ、だから今日いかなきゃいけない。あそこに」

「あそこ?」

「そう。皆との約束の場所だ。ファリクサー」

約束の場所と言う言葉で何処か分かったのか、咲はフェクサーと呟いた。

皆との約束。その場所。一度だけ、皆でまたこようと言った場所。

大切な場所。

そこに今から向かう。その後はもう、あと戻りはできない。

今もあと戻りできないかも知れないけど、でも、本当に。

これが、最後。

……

「ん、どうした?――ここにくるとは珍しい。どうだ、ここは、良い所だろう」

我が、人間社会に順応し、二年が過ぎた時のことだった。我を拾ってくれた親友。

人間の友達だった。我にとって人間の中でも特に信じられる人間だった。いや……信じていた。我はこの親友を。

だから――我は、ここで聞いた親友の言葉ですべてが崩壊した。

「お前、この頃調子に乗りすぎだぜ、お前は機械なんだから身の程をわきまえろよ」

「な……に……?」

「拾ってやったら、何?いきなり人間様の社会に入ってきて、いい加減にしろよ、機械」

「わ、我は……良かれと思い……

気に入らなかったのであれば謝る


「ハッ!馬鹿みたいだな。謝る?所詮、機械如きが謝るとか一体なんだ?お前。その態度もすべて気にいらねぇ」

今にしてみれば、我はこの親友に酷いことをしたと思う。彼の居場所をすべて奪ったのだから。だが、このことがすべて水に流せると言えばそうではない。

我にとっても、親友である、彼にとっても許しがたいことだったのだろう。

我が来てからというもの、ある意味、この国に王はいなかった。だが、ある意味王であり私を拾ってくれた王。親友の彼は、我にすべてを奪われたといった。

人間という生き物は、酷く不安定であり、精神的にも幼い。論理的に行動もせず、ムカついたということがあれば、すぐに人を殴る、蹴る。殺す。

人間は愚かだ。

我は親友である、彼の役に立ちたく、ここにいた。ただ、ここにいた。

だが、言葉は、我を狂乱に追い込むには十分の言葉だ。

言葉とは人間が使うとても威力の高い兵器である。これ一つで、人間は不安定になり、他人を追いこむ。

我……。

すべてを奪ったのか?我のせいか?これは、我のせいか?我の……。

何故我が。

何故。

何故。

何故。

「何故……何故……何故……」

「おもしれぇ。同じことばっかり言ってやがる所詮。人間様の人形だな」

「許さん」

「はぁ?馬鹿言ってんじゃねぇ。許さないのは俺だっつーの」

この親友は――否。親友でない。敵だ。明確な悪意を出している敵。

我の中にある、何かが壊れた。

「――様?」

「どうした。何かあったのか、レクイエム」

「いえ、何もございませんが、どうしましたか?」

「どう、とはなんだ」

「少し声が震えておりますが」

「なんでもない」

我の遠い昔の思い出。

「もうすぐ地球に到着でございます。到着次第、部下を地球に向かわせますか?」

「いや、ブラックボックスの搭載機がくるのをここで待つ。惑星周辺で待機だ」

「ではそのように、失礼致しました」

「……ふん。これでいよいよ決着だ!フィアーズ族!この宇宙で貴様たちが生き残るか、我が生き残るか!フゥッハッハ!」

高笑いが響く。ただ、その声は悲しそうであり、復讐心に燃える声だった。

……

氷原に覆われた大地。その中でもっとも目立たない色であろう、白い機械がたっていた。

人間を模した機械だ。大きさは16mほどある。アニメなどにでてくる、機械。

それが、氷原に覆われた大地に君臨している。手持ち無沙汰の様で、退屈そうに、座っていた。

中には人間が座れる、コックピットと呼ばれているモノがあり、ある、女の子が操縦している。

彼女が声を発するっと、外部に声が出された。

「終わったよ!そっちはどう?」

「こちらも適切に処理しました。まいうー」

「いい加減その日本語やめて。地球人の品格が損なわれるよ」

「わっちは地球人ではないので宜しいでしょう。別に地球人の品格が失われようと関係ありません」

「そう?今ここであなたを破壊してもいいんだけど」

「どうも、誠に申し訳ございませんでした」

「うん、宜しい」

「一体私はいつ、あなたと主従関係を結んだのでしょう?」

「いや。結んだ覚えないから」

「そうですか、残念です」

「残念!?」

「残念です。ところで、救出した仲間たちはどういたしましょう?」

「いや……うん。まぁ、連れて行ってあげてよ……助けた意味ないじゃない」

「ああ……そうですね。あなたのことだからてっきり奴隷にしよう!とでもいいだすのかと思いましたが」

「そんな会話あったかな~?いい加減にしないと突っ込むよ?」

「何処に!?いやぁん」

「キモッ!」

「キモッ!とか言わないでください。では一旦合流しましょう」

「え、うん。そうね」

「といいつつもう横にいるんですけどね」

「それも分かってたよ……で、何しに来たの?」

「え?新婚さんな会話を望んでいます」

「はいあなた、お帰り、今日も一回死ぬ?」

「え。私が描いていた家庭とは違うんですが、もっと甘い甘い感じで、砂糖ぐらいに」

「それ甘すぎない?」

「いえ、これくらいないと……ところで、最近ノリがよくなってきましたね」

「あなたのせいでね……」

「喜ばしいです、さぁ、胸に飛び込んできなさい」

「嫌!そんなことしたら私潰れちゃう」

「言葉だけ聞いたらそそられますね」

「そんなの知らないから。いい加減帰ろうよ」

「えー、面白くなーい」

「駄々っ子!ってもう、いい加減にしないと本当~に~」

「……結婚してください」

「どうしてよ!?あなたでかすぎるし嫌!」

「拒絶された!いい加減、鉄のハートをそんな風に扱うのやめてくださいません?」

「鉄のハートなのは知ってるけど、そっちもいい加減、乙女のハート察して」

「あなたが乙女のハート……ぷぷ。無理です。鉄のハートですから」

「…………ねぇ、本当にもう帰ってもいい?敵くるよ!」

「ああ、ハイハイ。帰りましょうね、マイハニー」

「……」

「え?なにいきなりウィアントソード取りだして、え、え?いくら機械といえど、やってはダメでしょう?」

「――」

「なに言ってるか聞こえませんけどきっと呪詛でしょうね!って、あちょ、オマ、そんなの入らな――」

「ふふ……」

「あああぁぁぁあ!」

周囲一帯に断末魔が響いたという。

……

「咲。大丈夫か?」

「え?大丈夫だよ、あそこに置いてきちゃってよかったの……?」

「ファリクサーはもう秘密の存在でもないし。あそこに置いても大丈夫だ」

俺は咲を連れて、京都に来ていた。京都に、約束の場所へ。

しばらく無言で歩く。

俺は何も考えずに直進した。

「輝くん、ここ……」

「ああ……なえかとそして……咲と約束した場所だ」

「修学旅行の時だったね、ここで約束したの」

「ああ、あの時は、日の出が見れなかったから、また見にこようって約束した場所だ」

「うん。今は二人だけど……」

「俺はさ、本当は陽樹や、皆とここに来たかった。胸を張って終わったと言いたかったけど……皆もう俺のことが解らない」

「大丈夫。きっと思い出してくれるよ。全部終わったらきっと……」

「そう……だな……」

「なえかさんも笑ってる気がするんだ。この空の上で。ううん、もっと遠い場所で」

「……そう……だな……」

「どうしたの?輝くん」

「咲は、俺に戦ってほしくないとか言いだすのかと思ってたんだよ」

「あ……ごめんね。でも……これは私達の戦いだから、きっと輝くんにそんなこと言ったら怒られると思ったんだ」

「いや、俺のほうこそごめん。ここにはかんっぺきに迷いを捨てる為に来た。明日の為に」

「明日……うん、そうだね。でも、もう一つやっておきたいことがあるんだ」

「ん……?」

「明日終わったら、ここに皆でこようね。その時にはきっと皆輝くんのこと思い出してくれてるよ」

咲は、笑顔で言っていた。夕焼けに咲の笑顔が照らされている。

やっぱり彼女は強いと思った。これだけの状況下にありながら笑っているから。

きっとあの笑顔は本心だと思う。

今までのことを思う。支えてくれた皆。

幼馴染のなえか、彼女に出会えてよかった。きっと彼女がいなければこの現実を受け入れられなかった。

咲、彼女に出会えてよかった。出会わなければきっと俺はここまで生き残ってこれなかった。

陽樹、彼に出会えてよかった。俺をいつでも励ましてくれた。励ましたつもりはなかったかも知れないけど、本心をぶつけて会話できた。

「て、輝くん?ど、どうしたの?」

俺の頬を少し湿ったモノが駆け抜けた。

「大丈夫。ここには、あと戻りするためにきたんじゃない。また戻ってくる為に来たんだ」

「うん!そうだよ。だから……明日」

「絶対に帰ってこよう」

俺は咲と指きりをした。

明日が最後だ。

きっと。

すべての終わり。

そしてすべての始まり。

約束を成し遂げる。

心で堅く誓った。


第二十五話 オワリ


第二十六話へ続く

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ