第三話 「二つの至宝」
第三話 「二つの至宝」
俺が初めて、ファリクサーに乗って戦った次の朝。
目覚ましがうるさく音をたてている。
それを面倒くさそうに止める。
「はぁ……」
FDAの司令 加萬という奴は、俺に戦いを強要するわけではないらしい。
でも俺が戦わなければ、地球は侵略される……というような、口振りだった。
それに俺はファリクサーに乗ると、妙な高陽感が生まれる、それも怖かった。
気づいたらそのことを考えてしまうから、自分を急かして、用事を作る。
朝ご飯を食べて、便所に行って、着替えて学校に行く。
「いってきます」
母さんが、いってらっしゃいと返してくる。
また同じ日常が戻ってきたのだろうか、いや違う、俺が通っているいつもの通学路にはいつも通り人がいる
でも、皆元気がない、実際に現場を目撃したわけではないだろうに……。
やっぱり町が破壊されていたからだろうか、昨日のあのロボットに何人殺されたんだろう。
……ダメだ、やはりそのことばっかりを考えてしまう。
「おっはよー!!」
後ろからなえかが、大きい声をだして、走ってくる。
俺は何も見ずにおはようと返した。
「元気ないねー、昨日何かあったらしいけど、私達は何ができるわけでもないんだから、元気だしていこ!!」
俺は昨日の当事者なんだけどな、まぁなえかに話すことでもない……か。
「そうだな、元気だしていくか!」
「うんうん、輝はそうじゃなきゃ」
「そうそう、そうじゃなければな、甲長は」
後ろにいきなり雹尾 志乃がいた。
「また勝手に後ろにいるんじゃねーよ!志乃」
雹尾 志乃
同じ聖龍高校 二年三組だ。
いつの間にか後ろにいる奴で、陽樹をいじったりして楽しんでいる。
「ハッハハ、いいじゃないか、それより修学旅行のことなのだが……」
なえかと志乃が笑いながら色々話してくれる。
こういう時とかはなえかの元気に救われる。
この元気に何回救われたんだろう?まぁいいか。
校門前にくると、原河さんに出会った。
原河さんは、こっちを向いて。
「甲長くん、お……おはよう」
そういって、何故か走りだす。
大きい声で俺はかえした。
「おはよう!原河さん」
原河さんが、こっちを向いた、その顔は笑っていた。
俺の声は震えていただろう、俺は人見知りするタイプだし、それに、照れ屋だ。
どうにも女の子とは喋りにくい、幼馴染のなえかを除いてだけど……。
横を見ると、なえかが不機嫌そうな顔でこっちを見ている。
「ん、なんだ?」
「いーや、何にもなーい」
そういって、なえかは走り出す。
俺も後を追って走り出した。
俺が、教室に入ろうとした時だった。
昨日日々之さんにもらって、そのままポケットにしまっていた通信機が鳴り始めた。
それを手にとって、トイレに駆け込む、教室の前なんて所であんなものが出せるか!
トイレの個室に入って、日々之さんが昨日言っていた、通信機の赤いボタンを押す。
「あ、通じたわね!!甲長くん昨日とほぼ同一のロボットが、この町に向かってきているの!」
「昨日と同じロボットって……俺になにをしろって言うんですか!!」
「だから、ファリクサーで戦うのよ!あなたしかいないの!」
「そう言われても、俺は戦えません、戦いなんて御免です」
「あなたが戦わないと、皆が死ぬのよ!?」
日々之さんの声が聞こえた瞬間だった、何かが地面に着弾した轟音。
昨日のビームとかの溶ける音ではない、もっと違う轟音だった。
急いで、廊下にでて、外を確かめる、町は一面、火の海だった。
上空にはまた、あのロボットでも昨日みたものとはちょっと違う……昨日のが中距離タイプなら、今日のは遠距離タイプだろうか?砲身が長い。
一応人々はシェルターに避難した後らしい、気付かなかったが、学校の中にも誰もいない。
いや……校庭に二人いた。
原河さんとなえかだ。
逃げ遅れたか……?この学校は非難警報がでると、学校内には一切入れなくなる、内側から鍵を開けない限り。
そうなると遠くのシェルターに行くしかない。
俺は校庭に急いだ。
階段を飛ばして下りていく。
ゲタ箱で靴を履き替える時間もない。
校庭に続く扉を、開けて叫ぶ。
「原河さん!!なえか!!」
二人はこっちに気づいたようで、こっちに駆け足で向かってくる。
それに気づいたのか、上空のロボットもこっちに照準を向ける。
すべてが昨日と同じだった。
「甲長くん!!念じるの!!ファリクサーがくるようにって!」
もうなりふり構っていられなくなった俺は、言われた通り、念じた、ファリクサーと。
すると、ファリクサーが目の前に現れた。
上空のロボットの攻撃を凌いだファリクサーはこっちを向くと同時にコックピットハッチが開く。
俺はコックピットの中に入る。
原河さんとなえかが何か言っているが、俺はすぐにコックピットのハッチを閉じた。
ファリクサーの目が光り、空へと飛翔する。
敵にぐんぐん接近していくだが。
敵が発砲してくる。
俺はその攻撃を右に避けた……だが、それは俺を狙ったものではなく。
校庭にいる、原河さんとなえかを狙っていた。
急旋回して、地上に戻ろうとする。
間に合わない!!
それは無残にも着弾したように見えた、でも、違った。
着弾したはずのそこには、背中を向けたファリクサーと同じくらいの高さのロボットがいた。
そのロボットは、原河さんとなえかを手でつかみそれぞれのコックピットと思われる部分に入れる。
「あれは……フェクサーとフィクサー、またフィアーズ・コードに反応したのね……」
いつの間にか、日々之さんと通信がつながっていた。
「また……って、どういうことですか!?」
「彼女達もまた選ばれたということよ」
選ばれた?原河さんとなえかが?何の冗談だ。
そう考えていると、また上空にいるロボット、アルクェル帝国のロボットが攻撃をしてきた。
それをソードを取り出し、斬って弾く。
シールドも展開する。
俺はまた旋回して、上空にいる、アルクェル帝国のロボットに直進した。
まずはあれを倒さないと、話もできない。
第三話 終わり
第四話へ続く