第二十四話 「記憶」
第二十四話 「記憶」
「ん……これは、もしかして――ううん、違うような気がする」
「どうしましたか?――さん」
「え、ううん、なんでないよッ!」
私は、横に振った。
目の前には、私の体より、数メートルも大きいモノが立っている。
最初に見たときは、とても驚いたけど。話してみたら、案外、面白いモノ、ううん、人……かな。ということが分かった。
きっと、もうちょっとで彼がくる。
私の直感がそう、告げていた。
でも、私がここにいることはきっと意味があるんだと思う。
私が――ここに飛ばされた訳が、きっと……。
彼は、今きっと苦しんでる。でも、私には何もできないんだよッ。
頼んだよ――。
……る……頑張ってね。今すぐ彼の所へ飛んでいきたい。帰りたい。
私は、その気持ちを必死で抑える。
目の前には、白く輝く機械。
私は、それを見据えて、再び乗った。
……
…
「っ……ここは、ファリクサーのコックピット……か」
俺は、頭部に痛みを抱えながらも、目を開けた。
目の前のモニターには、フェクサーが映し出されていた。無事に着地できたらしい。
最後に叫んだあと、意識が途絶えてから、何があったのか。地面への激突コースを描いていた、ファリクサーとフェクサーは無事に着地できたけど、少し違和感がある。
モニターには、フェクサーが映し出されているのと同時に、真っ暗だった。
俺が戦っていたのは、夕方近くのはずだ……なのに、何故か外は、漆黒だった。
コックピットで操縦。コックピットハッチを開ける。少し寒い風が吹いてきた。
いや、違う。少し寒気がする。一応秋だし……そういうこともあるのかも知れない、と俺はコックピットから降りて、FDAの仮本部へ向かった。
今まで感じたことのない。
悪寒。
恐怖。
その感情を連れて、走りだした。
……
…
「大丈夫?咲ちゃん」
「え、うん、大丈夫。私は大丈夫だけど」
「どうしたのかな?」
「ううん、きっと思いすごしだと思う。大丈夫だよ。大熊くん」
「そ、そう?なら、よかった」
「うん、ありがとう」
「う、うん」
俺は、その場にいた。ただ、目の前にいただけだ。FDA仮本部の医務室。そこには、三人いる。だけど、その場に、俺はいないみたいで。
この大熊というのは確かクラスメイトにいた。でも、FDA仮本部を知っているなんて本来ありえない。
そう。ありえないはずだ。でも、実際、目の前にいる。何故か、そのことが不自然でなく、自然に感じられてしまった。
世界は、最初からこう出来ていた。そう、教えられているようだった。
FDAの仮本部の医務室から立ち去る。どれだけ足音を立てても、咲には聞こえない見たいで、ずっと笑って会話していた。
医務室から出た途端、日々之さんが目の前にいた。
「日々之さん」
「ふふ~ん」
「……」
無視しているような感じじゃない。
聞こえていないのだ。
いや、存在自体が解らないと言った感じだ。空気にすら感じられない。
俺は思わず、拳を握りしめた。こういうこと……。
「分かってた。分かって……た。いつかこうなると」
でも、思った時より早かった。とても、ビックリするほど簡単に消えていた。この世界から、まるで、弾けるシャボン玉のように、俺の存在は消えようと
している。
……
…
それから、あらゆる場所に言った。
学校。学校の校舎は、未だに復旧のめどが立っておらず、ホコリっぽい。
職員室にいくと、少し破れているアルバムがあった。
アルバムを開いて、ページをめくる。ページをめくっている音だけが響いている。
本当に一人になったみたいだった。
アルバムを最後まで見ても――。
名前。
写真。
すべてが「なかった」
存在しなかった。すべて。何もかも。まるで、最初から俺が元から存在しなかったような、感じ。
職員室から、出て、校門へ向かう。
校門からでて、再び歩き出した。
次は、何処にいこう。
宛ても無く、歩く。
今は、帰る場所もない……のに、いつの間にか、家の目の前にいた。
でも、その家は、記憶にある家と違って、二階がなかった。
元から俺がいなかったということはそういうこと。子供ではないということ。両親の子供ではないということ。
これが、ブラックボックスに存在を吸収されるという意味。
その意味は、重く。
辛い。それでも、俺は……戦わないといけない。これが、俺の道。
例え、世界が変わっても、俺は皆との絆を信じて戦う。
それだけが、今の心の支えだった。
そのまま、また歩き去った。何処へ行っても、俺が居たという痕跡は見つからず。
一日が、過ぎた。
……
…
街の上には、突如として、フェクサーもどきが上空で旋回していた。
まるで、何かを探しているかのようだった。
俺は、心で呟いた。
ファリ――。
俺が呟く前に、ファリクサーは俺の上空を通りすぎて、フェクサーもどきへ向かった。
これは……まさか。そうか、俺がいない世界には、ファリクサーに乗る適正を持った人間がいる。
それが大熊……。俺が居るべきところがない。何処にもない。
上空では、いつの間にか到着していた。
ファリクサー、フェクサー、フォクサー、ファエスリアス・改、ファエムリアス・改が戦闘を開始していた。
フェクサーもどきは、モロに攻撃を食らっている。
何を狙っている……?レクイエム。
ファリクサーとフェクサーは上空で合体。ソルヴァリアス。
ファエスリアス・改とファエムリアス・改も合体して、ファクロトアス・改となった。
これだけの数に責められても、レクイエムは、攻撃を食らっている。
でも……装甲が傷ついていない。
ソルヴァリアスの能力が、俺が乗っていた時より、数段落ちていると感じられた。
ファクロトアス・改の能力も、だ。
何故か、全員の気持ちがバラバラなような気がする。
皆を繋ぎとめていた、重要なモノがなくなって、バラバラになったという感じだ。
それは、刹那の内に起こった。
フェクサーもどきが、左右の手を、正面に向けると、目の前にいた、ソルヴァリアス、ファクロトアス・改がいきなり、合体を解除し……いや、解除されて、下へ激突した。
相当な衝撃が四機に加わったに違いない。真後ろにいた、フォクサーも、下へ落下していた。
突如として、静寂が訪れた。
その時には、勝手に体が動いていた。
ファリクサー。
呟くと同時に、ファリクサーは、直立し、こっちへ飛んでくる。
お前だけは……覚えていてくれてる。まだ、戦える。
俺は、ファリクサーに乗り込んだ。
……
…
「ふむ……やはり少し調整するだけでこの威力。アンチ・ブラックボックスとしての完成も近いですね……むッ」
レクエイムが、自分で作ったモノに対して、感想を抱いていると、ファリクサーは直立し、明後日の方角へ飛んで行った。
ファリクサーが、飛んだ場所へ、モニターを向けて、拡大。
「あれは、おやおや……ああ、そうか、いつもより、話しかけてこない、声も違うと思ったらそういうことですか、だから言いました、もうすぐ消えると、でも予想外ですね、もう出てこないと思いましたが」
ファリクサーは一直線に、フェクサーもどきへ向かって直進した。先ほどのファリクサーと違い、速度が二倍以上はある。
「どうしたんですか?甲長 輝さん、あなたはこれ以上戦う必要はないというのに」
「……」
「シカトですか、それもいいですが、あなたは、ずっとこのままではなく、いずれ自分自身の存在も確信できなくなりますよ?」
「そんなことは関係ない!俺はただ、皆との絆を信じて戦うだけだ!」
「熱いですねぇ、先ほどの方とは大違いです」
「大熊くん!?あれ……誰もいないのに、勝手に動いてる……?」
咲からの通信、そして、京郎からの通信がファリクサーに届いている。
「どういうことだ……?自動で動くシステムはないはず」
「でも、お兄ちゃん……何か、懐かしい感じがする」
「ああ……」
「誰にも認識すらされていないとは、これは傑作だ」
「いくぞ!レクイエム!」
「どうぞ、お好きに」
「スパイラルユニコーン!ウェポンコネクト!」
ファリクサーの中にある、スパイラルユニコーンの粒子が、外部へでて、それが実体化し、ファリクサーの右腕に装着される。
ファリクサーは、スパイラルユニコーンの角に、炎を纏わせ、攻撃を開始。
フェクサーもどきは、その攻撃を簡単に回避していく。そして、反撃。右蹴り続いて左蹴り、続いて、右拳を思いっきり振りかぶって、攻撃。
ファリクサーの頭部に拳があたり、ファリクサーが吹っ飛んで、その先にあった、建物に激突。
さらにこの街がガレキに染まって行く。
もう、修復不可能なくらいに。
「くっ……まだだ!」
「そろそろやめておいたらいかがです?今のあなたでは勝てませんよ」
「うるっさい!このまま負ける訳にはいかない!俺は、皆の絆を信じて戦って、今までも勝ってきた、それをこんな所で終わらせる訳にはいかないんだぁぁぁ!」
瞬間。周囲、1kmほどに、光が発生した。その光は、ファリクサーから発せられたものではなく、そのコックピットにいる。
輝から発せられたものだった。
「……て……くん……」
それは、奇跡の光だった。輝の仲間を信じる絆。その心。
その光が絆の奇跡を起こした――否。
奇跡ではないのかもしれない。それは、彼らにとって、当たり前のことだから。
「この光は……これが絆の力ですか、楽しいですねぇ、ゲームがさらに楽しくなった。実に楽しい。これほど愉快なのは、二千年ぶりですよ」
「輝くん……」
「さ……き……?」
「輝くん、私……思い出した、輝くんとのこと」
「甲長隊長!俺も思い出したぜ!」
周囲、1kmの中にいたものにのみ、起こった力の発動。
絆の力が、存在の力を吸い取る、ブラックボックスを凌ぎ、記憶を蘇らせた。
これが、絆の力。
「フェクサーはこれ以上動けないけど……輝くん。お願い……ドラゴンブリザード。ウェポンコネクト。機甲ファリクサー」
それは咲の優しい声。一日聞かなかっただけの声、それはとても輝にとっては、懐かしい声だった。
咲の声と共に、フェクサーの中にいる、ドラゴンブリザードの粒子が、形を作り、ドラゴンブリザードが、ファリクサーの右足に装着される。
「ああ、咲……。いくぞ!レクエイム!ウェポンコネクト!ガトリングバイパー!」
ファリクサーから粒子放出。ガトリングバイパーは形を形成。
ファリクサーに合体せずに、フェクサーもどきへ向かって直進。
蛇のような形をしているガトリングバイパーは、フェクサーもどきに絡みつく。
フェクサーもどきは身動きが取れなくなる。
「む……これは。面白い。実に面白い、さぁ、私を殺して見てみなさい。まぁ、無理でしょうがね」
「うぉぉぉ!スパイラルユニコーン!ドラゴンブリザード!アタァァァク!」
スパイラルユニコーンの炎。
ドラゴンブリザードの氷。
その二つが、ファリクサーの目の前で融合し、ディメンションブレイクにより、さらに空間圧縮。
丸い球体が現れる。
絡み合った、幻獣と龍がその中に存在するかのように、球体の中で、炎と氷がせめぎ合っている。
「いけぇぇ!」
ファリクサーが球体を、思いっきり右拳で突く。すると、球体は、風を切って、フェクサーもどきに進みだした。
フェクサーもどきに当たる瞬間。ガトリングバイパーは粒子になり、ファリクサーの内部に戻る。
フェクサーもどきに当たった球体は、フェクサーもどきを吸収していく。ディメンションブレイクによる空間圧縮。
球体に完全に吸収された、フェクサーもどき。球体は突如、上空へ上がり。
爆発。
ファリクサーに装着されていた、ドラゴンブリザードが粒子になり、フェクサーの中へ戻る。
一瞬のうちに、物事が解決し。
静寂が回りに訪れた。
ただ、その静寂は、ただの静寂ではなかった。
それは……世界を揺るがす、混乱へのスタートラインだった。
第二十四話 オワリ
第二十五話へ続く




