第二話「ファリクサー」
第二話「ファリクサー」
俺は「ファリクサー」と書かれているモニターを見つめた。
どうしてこんなことになっているんだ?空中に浮かんだロボットがこっちに向ってビームを撃ってきた。
そこにこの赤いロボットが現れて、俺と原河さんを捕まえてコックピットに入れた。。
そして今モニターには、ファリクサーと書かれている。
なんでこんなことに……意味わからねぇ。
その時突然、音声が入った。
「籐陽くん、聞こえる!?上空に敵がいるのに何してるの!!」
誰だ?一応答えておこう、この状況をなんとかしてくれるかもしれないと思い、声をだす。
「あ、あのー……」
「誰?!なんでそんな所に子供がいるの!!」
女性がモニターに小さい画面で映される。
30歳を過ぎたくらいの女性だろうか。
「自分が聞きたいんですけど……突然こんな所に入れられるし」
一瞬女性が驚いたような顔になり、すぐに真顔に戻る。
「……そう、ファリクサーに選ばれたということかしらね」
「え?選ばれた?」
「あ、ううん、こっちの話し。こうなった以上あなたには、それを操縦してもらいます」
「えぇ……!?どうして!!俺はそんなことできませんよ!?」
「あなたなら分かるでしょう、その動かし方が……」
とても落ち着いたような声だった。
その女性が言った通りに、ちゃんとコックピットに座って、回りを見渡すと。
知っているものだった、何故かすべてが分かる。
動かし方もすべて……。
「なんで分かるんだ、こんなもの見たことがないのに……」
各スイッチを押して、ファリクサーを戦闘モードに移行させる。
最後のスイッチを押し、ファリクサーを地面から上空に移動させようとする。
ファリクサーは轟音をたてて、地面から離れて行き飛翔した。
一直線に敵と思われるロボットに向かっていく。
何か高揚感というのか、そういうものがある。
そのロボットがこちらに向かってビームを飛ばすが、俺は寸での所で回避する。
敵の目の前にいき、無造作に武器を取り出す。
赤く刀身が光っていて、熱気を帯びているような武器である。
「うおぉぉぉー!!インフェルノソードォォォ!」
それを勢いに任せて振り下ろす。
赤い刀身がさらに光って敵のロボットを切った所から溶かしていく。
そのまま振り下ろした後、後ろを向き武器を投げる。
その武器が半分に割れて、腕に装着される。
顔をあげたファリクサーの目が光り、その直後、敵のロボットが轟音をたてて爆発する。
「はぁ、はぁ、終わった……」
俺は一気に汗が吹き出てくるのを感じた。
なんでこんなものの操縦を俺は知っている。
何故、こんなことができる。
自分は何者だ。
そんな問いが頭をループする。
頭がおかしくなりそうだ。
「よくやったわ!!さすがね、これなら……きっと対抗できる」
先ほどの女性の声だ。
ファリクサーのコックピット内部では、原河さんが、寝息をたてている。
それを見ていると何故か落ち着いた。
「対抗?意味が分からないことばっかりです、ちゃんと説明してもらえますか?」
「いいわよ、あなたが選ばれたなら、あなたに話す義務がある。まずはその子を保健室にでもつれていってから、校門まできなさい。そのロボットは校庭に置いておいていいから」
「はぁ、分かりました」
ファリクサーを校庭において、ハッチを開き原河 咲をおぶって、保健室に急ぐ。
今シェルターからでてきた、同じ高校生の主に男子が、こちらを睨んでいる。
さっきのファリクサーというロボットはもういない。
あーぁ明日校内の男子に殺される……と思いながら、保健室に向けてさらに急ぐ。
その間でも、原河さんは、聞いていても心地いいような、寝息をたてていた。
……
…
私は夢を見ていた、とても悲しい夢。
「んっ……うぅ~」
目をあけるとそこには、甲長くんがいた。
私は周りを見渡して、ここが保健室であることを確かめた。
なんで甲長くんが?ううん、私の記憶はあのロボットがビームみたいなものを発射した所で終わっている。
きっと連れてきてくれたんだ、保健室に。
「あー、えっと……原河さんは、校庭であの空に浮いてた、ロボットのビームの攻撃というか、それで気絶したから……保健室に連れてきたんだけど」
やっぱりそうだ。
「うん、ありがとう、甲長くん」
「あ……あぁ、それだけだから」
甲長くんはさっさと、保健室からでていこうとしている。
咄嗟に思いついたような顔で甲長くんは。
「あ、そうだ、気をつけて帰って」
そんな風に声をかけてくれる男子はいなかった、皆下心が感じられていたのに彼からはそれが感じられない。
「うん、本当にありがとう、甲長くん」
私は手を振っている甲長くんに手を振り返した。
甲長くんが保健室からでて、扉を閉める。
彼がいた時からだけど、胸がドキドキする、自分も危ないのに屋上にきてくれる男の子なんかに出会ったのは初めて。
この感情はなんだろう…。
甲長くんは高校の入学式の時も緊張していた私に声をかけてくれた、彼も緊張していたんだろうけど、嬉しかった
私は一時間ほど保健室でそうしていた。
……
…
俺は、保健室を出た後、走って校門へ急いだ。
息をきらせながら、校門につくと、そこにはさっき、ファリクサーのモニターに映っていた、女性がいた。
「遅かったわね、この車に乗って」
そういって女性は、車の扉をあけて中に入っていった。
恐る恐る、俺も車の中に入る。
「全部説明してくれるんですよね?さっきのことを」
「えぇ、説明するわ、その前に私の名前だけど、日々之 皐月日々之さんでいいから」
「はぁ…あのロボットはなんなんですか?町を攻撃していたロボットは?」
「そんなに質問ばっかりしないで!順番に説明するから、あのロボットはファリクサーと呼ばれているロボットなの」
「ファリクサー?」
「あのロボットには宇宙の至宝と呼ばれる、ブラックボックスという動力が積まれているわ、それを狙って、こっちを狙ってきているの空からビームで攻撃してきたロボットが」
「あれはただの雑魚、そしてあの敵の名前はアルクェル帝国…そしてその侵略を止めようとしているのが私達FDAのメンバー」
「あの……全然話が見えないんですけど」
「あー、もう!そのデータを見て!私説明するの苦手だから!!」
投げやりな感じで、色々書かれている、ファイルを渡してくる。
そのファイルにはこんな感じのことが書いてあった。
FDA
ファリクサー・ディフェンス・アースの略
10年前に発足された組織。
秘密の組織というわけではなく、一般にも有名な組織。
だが、活動内容は不明。
10年前にアルクェル帝国が接近その際に、宇宙の至宝である、ブラックボックスは四基あるうちの一基が持ち出される。
アルクェル帝国
古代人 フィアーズ族が予期した、侵略者。
2000年前にもアルクェル帝国とフィアーズ族は戦った。
なんとかそれは撃退したものの、アルクェル帝国は再び、地球を侵略しにくるであろう、それが予期の内容。
ブラックボックスを作ったのはフィアーズ族だと思われる。
フィアーズ族
2000年前に、高度に文化発達をしていた、人間達。
宇宙の至宝、ブラックボックスを作ったとされている。
ブラックボックス
宇宙の至宝 ロボットファリクサーなどの動力源。
永久機関。
これを四つ集めたものは、真の力を手にいれた者は、銀河を支配するであろう。
フィアーズ族がブラックボックスを四つ集め、真の力をていれた者は、銀河を支配するであろうという伝説を信じて地球を侵略しようとしているのが、アルクェル帝国。
ウェポンボックス
詳細不明
ファリクサー
宇宙の至宝である、動力ブラックボックスと共に発見されたロボット。
性能は未知数
そのようなことが永遠と書いてある、ファリクサーのことは前から知っている気がする、どうしてだろう……。
「大体わかった?そこに書いてあることが、今起きてる事態に関しての事柄よ」
「こんなことじゃ、分からないですよ、自分が何故あのロボットを動かせたのかとか俺が一番気になることが書いてないです」
「そう?どっかにあるはずなんだけど……あ、ちょっと揺れるわよ」
車が揺れる。
俺がファイルの中のものを読んでいる間に、いつの間にか車ごとエレベーターに乗っている。
「これは一体どこに行ってるんですか?」
「FDAの基地よ」
「基地!?聞いてないですよ!!」
「何が起こったのか聞きたいんでしょ?なら行ったほうがいいと思うわよ」
「そう……ですか」
「そうよ」
そのままエレベーターに乗ること、五分。
大きな通路のような場所にでた。
様々な物資のようなものが積んである。
一角にファリクサーに似たようなロボットもあった。
「ようこそ、FDA本部へ」
「……」
俺は車から降りる。
「ふふ…司令がお待ちかねだわ、ついてきて」
日々之さんが早々に歩き出す、仕方無く俺もついていく。
そして、狭い通路をしばらく歩いていると、一つの扉の前に出くわした。
日々之さんは横にある、カードを使った認証システムに、カードを差し込んでいる。
音がなると共に、扉があく。
「待っていたよ、甲長 輝さん」
「あなたは…?」
40歳後半あたりだろうか?中年太りのおっさんに見える。
「私はFDA司令 加萬だ、先ほどの戦い見事だった、とても素人とは思えない」
「はぁ、説明してもらえませんか?さっき起きたことを」
「そうだね、何処から話そうか……、ファリクサーが突然、発進したのはこちらでも、予想外だった、君の強いフィアーズ・コードに引き寄せられたんだろう」
「フィアーズ・コード?」
「フィアーズ・コードが何かは今は話せない」
「さっきのロボットはアルクェル帝国の量産型ロボットXH-2 タイプAと呼ばれるものだ、アルクェル帝国とは、この銀河の支配を目論む帝国だ」
「君は何も知らない、それに、こんなことをいきなり言われても、迷惑だろう、だが君に頼るしかない、これからもファリクサーに乗って戦ってくれないか?アルクェル帝国と」
「何を言っているんですか!?自分は素人ですよ?それに突然戦えと言われても俺は……」
「今すぐに結論は出さなくていい、これは君が考えて君が決めるといい、私達はお願いすることしかできない」
「そう、ですか……」
俺があれに乗って戦う?ありえない、理解不能だ、お願いされたってできることじゃない。
「日々之くん彼を家まで送って行ってくれ」
「はい、了解です」
その後俺は、日々之さんの車に乗せてもらい、自宅に帰った。
車に乗ってボーッとしていると、日々之さんは、通信端末を渡してくれた。
これで私に連絡が取れるからっと。
母さんに、ただいまを告げてから、俺は自分の部屋に足を向けた。
自分のベッドに倒れる。
ずっと考えていた、問題。
俺があれに乗って戦う、何故か俺がファリクサーを操縦できる、それを使って地球を侵略するアルクェル帝国とやらと戦えという。
俺は呟いた。
「絶対無理……」
それから、母さんが晩飯を言いにくるまで俺はそうしていた。
それからはあのことを忘れたかのように、俺はお風呂に入って、すぐに寝た。
俺があれに乗って戦うという答えを出したくなかった。
第二話 終わり
第三話へ続く