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第十三話 「ドリーム」

第十三話 「ドリーム」


「ここは……」

「あ、輝くん起きた?」

俺の目が覚めると、そこには、咲がいた。確か……俺は、気を失って。

それにここは、ADFの医務室か。そういえば、あの二体のロボットはどうなったのだろう?

それに戦いは、いや、俺がここにいるということは、あの二体のロボットは戦いに勝ったんだ。

俺はさりげなく時刻を確認する。朝の6時。親にどうやって説明したのだろう?そこら辺は日々之さんが何かやったのかもしれない。

「輝くん?」

咲が、心配そうな顔を向けてきた。

「ん、ああ、ちょっと考えてた」

「何を?」

「あの二体のロボットのことを……」

「じゃあ、確かめにいこうか」

「はっ?」

「はっ、じゃなくて、いくよ!」

「お、おい!」

咲は、俺の手を握ると、手を引いて、医務室から飛びだし、格納庫へ向かって、走る。

俺は今起きたばっかりなんだぞ……。でもあの違和感とも言うべきものがまだ残ってる。

それを確かめられるのだろう、多分。

しばらく手を引かれて、走っていると、格納庫から、雑談をしている声が聞こえてきた。

「お、咲隊長。そして……甲長隊長ですね!」

ロボットが喋っていた。そしてその中で談笑している、なえか。

何してるんだ、てか、なんだこれは。

「あ、輝、起きたんだ?」

「あ、ああ……」

俺は驚きを隠せなかった。大きいロボットの中でなえかが談笑しているのだから、ビックリもする。

「ビックリしたでしょ?」

「お、おう」

「彼らは、アルクェル帝国のAIを解析して、造られたロボットよ、そして動力にはフィアート・ボックスというものを搭載しているわ」

日々之さんが、奥から現れた。さながら、悪者が現れる時のような登場の仕方だ。

「あ、日々之さん、フィアート・ボックスって何ですか?」

「ブラックボックスを解析して、造られた動力よ、これは、フィアーズ・コードは必要ないけれどね」

違和感の正体はこれか、フィアート・ボックス……なんとなくブラックボックスに近いものがあったからなぁ。

本当になんなく違和感があった程度だったけど。

こいつらはAIで動いてるのか……だから、か。

「甲長隊長、自己紹介させていただいても宜しいですか?」

妙にかしこまった言葉だ。

「あぁ」

蒼く深い色のロボットのほうが語り出した。色が、フェクサーにかなり近い。

「では、私は、ファエムリアスです、以後お見知り置きを」

お次は、深紅の色のロボット。なんとなく色はファリクサーよりだ。

「じゃあ、次は俺だな!俺は、ファエスリアスだ!宜しく頼むぜ!」

「エス、隊長に向かってそんな口のきき方があるか!」

「そ、そうだな、宜しくお願いします」

「ああ、宜しくな、ファエスリアス、ファエムリアス」

二人は手を伸ばして、握手を求めてくるが、俺は生身だ。相手はロボットの手で何倍もある。無理だ。

エスとエム。SとM。SMつけたの誰だ?開発者が特殊な性癖でも持ってたのかね。

「はい!」

「おう!」

「またお前は隊長に向かってそんな口のきき方を!」

「す、すまん」

どうやら、エムがエスを怒るようになっているらしい。名前とは裏腹に、Mが虐めて、Sが虐められるみたいだ。虐められてる訳じゃないんだけど。

「それでは、隊長。私達は訓練があるので失礼致します」

「し、失礼致します」

エスは敬語に慣れてないみたいだな……あとで敬語でもどっちでも良いと言っておくか。

エスとエムは、格納庫から、外に出て行った。あんな巨体の訓練場って何処なんだろう?まぁいいか。

「咲」

「何?」

今日は土曜日。そして――。

「今日って確か追試だよな?」

「あっ!忘れてた」

「もう8時だぞ……」

「本当だ!早くいかないと間に合わないよ」

咲は額に汗を浮かべている。なえかもその様子を心配そうに見ている。咲が勉強した内容を忘れてないか心配なんだよな。

「咲、そこで慌ててないで、早く学校にいかないのか?」

「う、うん、分かってる、急ごう」

「私もついていくからね!」

なえかは元気そうだ。よかったな。

って待てよ。俺は咲に視線を合わせる。咲が何故か顔を赤らめたけど、そんなこと今はいい。

咲は私服だった。

「咲、制服に着替えないと学校にいけないぞ」

「あっ……は、走ろうかなっ」

俺達は、その後、家に一旦帰り、着替えてから、学校の校門前で待ち合わせをした。

俺が学校についた頃には、二人とも校門についていた。俺がついたのが9時45分で、追試の開始が、9時50分から。

俺のせいで、追試受けれない所だったと思うと、怖い。

……

そして、追試を行う教室前に俺達はいた。

「咲、頑張れよ」

「頑張ってね」

「うん、いってきます」

咲は、教室の扉を開け、吸い込まれていった。

「どうするかなぁ」

「私はここで待ってるよ」

「そうか、なら――」

と言いかけた所で、足音が聞こえた、と思ったら、志乃と陽樹が廊下を歩いて、こちらに来ている所だった。

「どうしたんだ、休みの日なのに珍しいな」

志乃は得意げな顔をしている。

「ふ、甲長、一枚噛まんか?」

「いきなりやってきて何を言ってんだ?」

「俺達は甲長を探していたのだ、お前は携帯を持っていないからな」

そうなのだ、俺は携帯をもっていない、あんな金のかかりそうな物は無駄だとすら思っている。

「宮木、甲長を借りていくぞ」

志乃と陽樹が俺の手を引き、連れて行こうとする。陽樹はさっきからニマニマしていて正直気持ち悪い。

「あ、うん、いいよー!」

いいのか、ならいくか。暇だしな……。

志乃と陽樹はしばらく歩いた後、ある扉の前で立ち止まった。

そこには女子更衣室、と書いてある。

「なんで女子更衣室なんだ?」

「ここにな、前に話した蟲がいるのだ」

蟲……あー、そういえば言ってたな。何か女性の下着を盗む蟲とかなんとか……。

「ここにその蟲がいるのか?」

「ああ、いる、確実だ、ここに入っていくのを見た」

「女子更衣室の鍵は開いてないんじゃないのか」

志乃は、ポケットを探りだしたかと思うと、ある物をとりだした。

「ここにある、準備は万端だ、さー!いこうじゃないか!」

志乃は揚々とした面持ちで、鍵を回す。陽樹が期待に胸膨らましたような顔だ。

さっきからニマニマしていたのは、これのせいか。

志乃が扉をあけるとそこには……。

「むぅ!」

「うぉ」

「おおう!」

真中の声は俺だ。そこには縦横無尽に駆け抜ける例の蟲がいた。

目を凝らして良く見ると、それは蟲ではなく、機械のようだった。

「さて、捕まえるぞ、甲長」

「ああ、分かった」

俺は頑張って手を動かしながら捕まえようとするが、如何せんこの蟲が早い。

そんな俺を見かねたのか志乃は、ある物をとりだした。

「甲長、情けないな」

「お前も何かしろよ!」

「これがある」

志乃が持っていたのは、虫取り網だった。最初から網があるなら使えよ!

「ほぅら!」

志乃が行き良いよく網を振ると、蟲が丁度その中に収まったようだ。

「これが噂の――」

志乃が蟲に触ろうとした直後。

女子更衣室の扉が開いた。

そしてそこにいたのは、女子達。

いや、考えられることだったんだけどな、いくら休みといえどやっている部活もある。

女子の顔がどんどん叫び声をあげる準備をしている。

叫ぶな叫ぶな、いや、男子更衣室に女子がいたら確かにそんな風になるかもしれないけどさ。

「きゃあああああああぁぁぁ!」

女子達の声が女子更衣室という一室に響き渡る。

俺は振り向き、志乃を確認するが、もういない。早!てか、何処言ったんだ!?

「輝、じゃあな」

陽樹はとっとと俺を置いて女子更衣室の窓から飛び降りた。まぁ、ここは一階だから、飛び降りたとは言わないかもしれないけど。

「お、おい!?」

俺は陽樹を追いかけて、窓から降りようとするが、その後頭部に、色々な物が飛んできている、急げ、急げ俺。

俺はやっとのことで、女子更衣室から脱出。目の前に黒い影が現れたのはそんな時だった。

「輝くん」

「て~る?」

この声は咲となえかだ。最悪だ。俺の人生はここで終わるんじゃないか?と思うくらいだ。

いや、俺は何にもしてないんだが、ここで説明しても無駄だろう。

「何してる」

「のかな~?」

二人は見事に言うセリフを交互に変えて発言している。

ぶっちゃけると、怖い。

俺がその後どうなったのか、それは皆の想像に任せる。

でも、これだけは言う、女は怖い。昔からも怖かったけど今日のことで、もっと怖くなった。

このことは俺の脳の中でも、黒歴史と言えるだろう……。

でもこんな日常も悪くない。


第十三話 オワリ


第十四話へ続く

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