1-1:変化の始まり
はじめまして
浦沢と申します。
こういった場で文章を書くのは初めてで表現も分かり辛いかもしれませんが、頑張って書いていくのでよろしくお願いします
ミーンミンミンミンミンミンミーーーン―――――
7月21日快晴、気温35℃
夏の日差しが降り注ぐ‥というよりは直射日光が直撃する川沿いの土手
そこに立ち並ぶ桜の木は今は花ではなく蝉の鳴き声が満開だ
桜の木が作り出す木陰だけが唯一涼しい気分にさせてくれる
あくまでも気分だけだが
そんな炎天下の中自転車をこぐ2人がいた
「あ゛ づ い゛ い゛ い゛ー」
「ほんと‥どうかしちゃいそう。」
「暑い暑い暑い暑い暑い」
「‥‥‥‥‥。」
先程から"暑い"以外の単語を発しないのは沢田千波
真っ直ぐな長い茶髪に化粧で少しキツイ目付き
一見クールと見て取れる彼女だが実際は
「暑い。もう駄目だ‥。熱中症で死ぬんだ‥‥。」
そうでもなかったりする
クール、冷たいといった印象を持たれるのは彼女が人見知りだからだろう
「大丈夫だよ。毎日それ言ってるけど死んでないでしょ。大丈夫大丈夫」
駄々っ子をあやす様にそう言うのは岡崎月乃
肩までのふわふわな明るい茶髪
千波は目が切れ長なのに対月乃は垂れ目
何だか対極のような二人だ
「でもこれも後ちょっとの我慢だね。明後日は終業式だ」
二人は高校生だった
そして二人の通う高校は2日後に終業式を控えていた
つまり3日後には夏休みというわけだ。
まあ二人とも3年生なので夏休み中も補習やら何やらがあるわけだが。
「あ、私今日寄るとこがあるからここでバイバイなんだ。」
「わかったー。じゃあまた明日ね」
「うん、バイバーイ」
そう言うと月乃を乗せた自転車は小さな橋を渡り川の向こう側へと曲がっていった
「ふう」
話し相手がいなくなったことで余計に暑さを感じるような気がした千波は、ひたすら無心で自転車をこごうとした
「あっついなあ‥」
呟いた言葉は誰の耳に入るでもなく夏の暑さに溶けていった
ガチャ―――
「ただいまー」
家に着くと千波は玄関の扉を開け誰もいない家にそう言うと部屋のクーラーを付けバスルームに入っていった
ここで少し沢田家について説明をする
家族構成は
母:沢田咲枝
娘:沢田千波
鳥:金子さん
の三人(正確には二人と一羽なのだが、千波は"羽"とカウントするのを嫌う)
咲枝はビジネスウーマンで忙しい為か千波に対しては大分寛容だ
"放任主義"という言葉の方が当て嵌まる気がしなくもないが自由人な千波にはその方が気楽で良かったし、愛情が無いわけでは決してないことを知っていたから、そんな母親を普通に好いていた
暫くするとバスタオル一枚でバスルームから出てきた千波は部屋に行き部屋着に着替えると金子さん(真っ白なオカメインコ)を籠から出してあげた
冷房の効いた涼しい部屋を金子さんが嬉しそうに飛ぶのを眺めていると
玄関の扉の開く音と共に
「ただいまー!!千波帰ってる?」
という声が聞こえてきた
「咲ちゃん?」
玄関へ向かうとそこには暑さに顔をしかめた普段は昼間は家に居ないはずの母親
「どしたの?」
声を掛けると
「ちょっと話があって帰ってきたのよ」そう言って重そうな鞄を持ってリビングへ向かったのでわけがわからぬまま千波も後に続いた
咲枝はエアコンを付け冷蔵庫から冷たい麦茶を出すと、それをグラスに注いだ
「あんたも飲む?」
千波が黙って首を横に振るのを見ると咲枝は麦茶を一気に飲み干した
「で、どうしたの?」
「ああ、そうだった。私しばらくアメリカに出張になったのよ。今日帰りが早いのはそれもあるんだけど」
「へー。気をつけてね」
出張の多い母親に対し、特に驚くこともなくそう言う
「だからその間あんたはどうするか聞こうと思って。家にいるんでも良いけど折角の夏休みだし‥‥‥久しぶりに新潟に戻る気ない?実は千代さんが、よければうちにおいでって言ってくれてるのよ」
一気にそう言うと咲枝はまたグラスに麦茶を注いだ
千代さんとは二人が新潟に住んでいた頃、辺り一帯の土地を所有していた地主で本名は明間千代子。
咲枝は都会育ちだったが、千波が小さいうちは自然の多い所で暮らそうと決めていたので、少し不便だが緑豊かで綺麗な村に二人は住んでいた
けれど父親がいない手前咲枝が働かなくては生活が成り立たない、ということで千波はよく明間千代子に面倒を見てもらっていた
千代子は鬼の様に厳しく、千波はよく叱られたが今思えばそれらの中にも優しさがあったし、甘やかされたことも多かった様に思えた
咲枝と千代子は仲が良いらしく今でもたまに連絡を取り合っているらしい
そして今回のこの新潟行きの話が出た訳だ
自然大好きな千波がこの話を断る筈もなく
「行きたい!」
と即答した
「そうだろうと思って行くって言ってあるわよ。夏休み入ったらおいでだって。私がアメリカから帰るときは連絡するけど、まあ好きなときに帰ってきなさい。ただ、ちゃんと事前に帰る日付を千代さんに言うこと。」
「はーい」
「じゃあこれ。往復分の切符」
「買っといてくれたんだ。ありがとう」
「いーえ」
そんなこんなでこの夏休み私は一人で新潟へ行くことになった
懐かしい場所だけあって、私は珍しくもわくわくしていた
「一応受験生なんだからちゃんと勉強もしなさいよ」
いつの間にか二杯目の麦茶を飲み干した咲枝は言った
「分かってるって」




