屋上にて
連れてこられたのは屋上。朝からずっと強い日差しが校舎を照らしつけている。
日影がない分、余計に暑さを感じる。
何もこんなに暑いところに連れてこなくても。昭はそう思いながら、同じく暑そうに自分を扇いでいる少女に疑問を投げかける。
「さ、ちゃんと教えてよ。あの教壇や部屋の中にいた黒いのはなに?。」
「というか君が誰かもわからなければ、ここは本当にどこなんだ」
昭はまくし立てる。
その少女は言いづらそうに口を開いた。「私も全部はわかっていないんだ。」
「じゃあなんで、さっきは教室から手を引いて逃げるように走ったの?」
昭は単純な疑問を投げかける。
「それは、、、」
少女は言いづらそうに言いよどむが、答えてくれた。
「私もある日、この黒い世界にきたのだけれど、私も同じ体験をしたの」
少女は続けて語る。
「ある日、目を覚ましたらこの教室にいたの。その時にも今の昭君と同じように、混乱していたわ」
「私も気になって黒い影に話しかけようとした。でも、先にいた友達が教室から手を引いて助けてくれたの。
その友人曰く、ここは『生と死の狭間』であり、黒の濃さが死に近づくほど濃くなるといわれ、黒い人に話しかけてしまうと、
自分も黒くなっていくんだって」
「だから、絶対に黒い人にはしゃべりかけちゃいけないって説明を受けた。けど、実際にしゃべりかけた人を見たわけでもないから、正直よくわからないんだけどね」
少女は少し、照れくさそうに説明してくれた。
「生と死の狭間、って……」
昭は言葉を繰り返し、笑おうとして失敗した。
「そんなの、信じられるわけないだろ」
ヒナは即答しなかった。
フェンス越しに、校庭を見下ろしてから、ぽつりと言った。
「でも、あの黒い影、私たちの世界で見たことある?」
その一言で、昭は黙り込んだ。
「じゃあ、その友達に聞いてみようよ、何組?今はどこにいるの?」
昭がそう尋ねると、少女はまた、悲しそうな顔でうつむき、話した。
「友達はね、黒くなっちゃったんだ。仲良くなって3日目くらいかな?その日は少しぼんやりと薄暗くなっていて、心配だったから声をかけようとしたの。そしたらその友達が私を制して、黒板に書いたの」
「何を?」
「『私にしゃべりかけるな』。って。それ以来、日に日に友達は黒くなっていって、最後は見分けがつかなくなっちゃった。だからあの教室の中の黒い人の誰かかもしれないし、もう消えちゃったかもしれない。だから話を聞くことはできないんだ。ごめんね」
そういうと、少女はフェンスにもたれかかった。
「けど、昭君が来てくれてやっと人と話せたよ。私はヒナ!太陽の「陽」に野菜の「菜」でヒナだよ!改めてよろしくね!」
そういうと、太陽よりもまぶしい笑顔で微笑みかけた。
昭は少し恥ずかしがりながら答えた。「昭、日向昭です。とりあえず、よくわからないけどよろしくね」
そういうと、チャイムの音が鳴り響く
「いけない!授業が始まっちゃう!」
そういうと陽菜は走って教室に戻ろうとしている。
昭もそれについていく。
訳がわからないことばかりだ。
けれど、この世界で一人になるよりは、彼女のそばにいたほうがいい。
少なくとも今は。この少女をすべて信じるわけにはいかないが、
まずは話を聞いてみよう。そう決心し、教室へ向かった。




