表裏
「ひょうり」です。
平たい魚に刃を走らせるようにして
光と闇の2枚におろす
臓腑も詰まっていなかったその肚が
せめて空虚で膨れていたならとは今更
背中あわせをひっぺがして得意げな顔するなら
鬼の首でも獲ってこい
馬鹿のやすみやすみが世界を壊すんだ
背中づたいに互いを識る
おのれとふたつでひとつと識る
憎らしいほど愛しくて
そしたら愛しさをまた憎んだ
冷たい壁へと てのひらつたわせるむこうでも
薄皮ほどで隔てたさきは
毛布で包んじゃくれなくて その裏に
よもや誰かが潜んでおるまいとは浅はか
背中あわせをみっつかぞえ 振り向けば顔が見える
鬼が出るのか 邪が出るか
まさにやぶれかぶれだ 世界も変貌わるかも
背中つなぎに違いはなく
おのれが無くしてどちらも無く
忌まわしいほど近しくて
それゆえ近しさをさえ忌むのだ