9:アレクサンダー先輩って実は怖い人?
「あなた、入学早々大変だったわねぇ!ノクターンくんの実験に付き合わされるなんてねぇ!」
保健医のブラウン先生は、シエルの手に包帯を巻きながら、さも面白そうに言った。
「いたっ!先生、痛い!もう少し優しく…。」
「んまっ!これくらいきつく巻いておかないとダメよぉ!ほらぁ!身体に異常はないみたいだし、授業に戻っても大丈夫よぉ!」
「えぇ…、でも、アレクサンダー先輩に毒物を嗅がされたんですけど…?」
「何も検知されなかったわねぇ!」
「でも…」
「心配しなくても大丈夫よぉ!身体は元気そのものよぉ!」
ニコニコ笑顔でそう言われて、強引に保健室から追い出された。
ブラウン先生は、アレクサンダーから「幻覚薬の実験をしていた」と報告を受けていたらしい。
だから、先生は私がまだ混乱しているだけだと思っているんだろう。
「致死量だ…って言葉が聞こえた気がするけど、何も異常はないし…あれは幻覚だったのか?これ以上は何を言っても無駄だよな。というか、授業に出ろってどうなんだよ。」
ブツブツ言いながら廊下を歩いていると、猛ダッシュでこちらに向かってくる人影が見えた。
「シーエールー!!!」
涙を浮かべながらエリカが走ってきた。
この速度でぶつかられたら大変だ。
エリカの後ろにはセバスチャンが追いかけてきていた。
彼が口パクで「避けろ。」と伝えてくれた。
すっと俺がエリカを避けると、そのまま盛大に転んだ。
「酷いですわー!私、とっても心配しましたのよ!授業には全然戻ってこないし、先生からは『実験の事故にあった』とか言われるし!本当に心配しましたのよ!!」
「ちょ、ちょっと、泣かないで!エリカ、ごめん!」
泣き出したエリカを慰めようとオロオロしていると、セバスチャンが神妙な面持ちで尋ねてきた。
「それで、ノクターン先輩と何の研究をしていたんだ?」
「一応、先輩は『幻覚薬の実験』だと言っているみたいなんだけど…」
「幻覚薬か…。クライスさん、俺がこう言うのもなんだが、ノクターン先輩とはあんまり関わらない方がいい。」
「え?なんで?」
「ノクターン様にはあまり良い噂がないのよ。身寄りのない人を使って実験を繰り返し、被験者を見殺しにしたとか、劇薬を裏のルートへ流しているだとか、噂されてるわ。」
「それに、禁忌魔法の研究に没頭していると噂されているんだ。どれも噂の域を出ないが…。どっちにしろ、先輩には近付かない方がいいと思う。今回のこともあるしな。」
(禁忌魔術…?ゲームにはそんな魔法はなかったはずだ。少し調べてみる必要がありそうだな…。)
「二人ともありがとう。今回のこともあったし、あまり先輩には近寄らないようにするよ。」
そう言って二人に微笑むと、エリカに抱きつかれた。
「次にノクターン様が近寄ってきましたら、私が守りますわ!ボコボコにしてあげますわ!」
「今回のことがあったし、あまり近付いてこないとは思うが…一応忠告しておくが、ノクターン先輩のことはくれぐれも探るんじゃないぞ。あと禁忌魔法のことも…だ。」
エリカを俺からベリベリと剥がしながら、セバスチャンが釘を刺してきた。
「わ、わかってるって!もう危ないことはしないからさ!ほら、次の授業は何だったっけ?」
「あっ!魔法薬学の時間でしたわ!早く行かないと遅刻してしまいますわ!」
「魔法薬学といえば、フレイヤ先生だな。怒ると怖いらしいぞ。」
「ちょ、そんなこと言ってる場合か!急がないと!」
三人で教室へ急いで向かった。




