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7/12

7:自分自身と向き合う時間

朝、目が覚めると冷や汗をかいていた。

昨晩、意識を失う前に窓の外に骸骨がいたことを思い出す。恐る恐るカーテンを開けるが、何もいない。


「昨日のは夢だったのか…?」


ほっと胸を撫で下ろし、時計に目をやる。

時刻は朝の8時50分を指していた。


「や、やばい!!遅刻だ!!」


急いで支度をして寮を飛び出す。


(考え事は後回しだ。まずは教室に急がないと!カイル先生に目をつけられると厄介だ!)


バタバタと廊下を走り、勢いよく教室の扉を開ける。


「はぁ…はぁ…す、すみません…遅れました…。」


カイル先生はじっとシエルを見つめている。


(ああ、怒ってる…。無言の圧力が怖い。)


「クライス、放課後、職員室に来い。とりあえず席に着け。」


入学早々、放課後の呼び出しを食らってしまった。

このままでは問題児認定されてしまいそうだ…。


「さて、気を取り直して。今日は入学したばかりだが、魔法実習の授業を行う。まずは、自分の適性属性を知ってもらう。」


そう言ってカイル先生は胸の前で手を合わせ、目を閉じる。しばらくすると彼の手が光り、氷の結晶が現れた。


(氷属性…?)


「このように、魔力を手に集中させ、自分自身と魔力と向き合うんだ。難しいことはない、やってみろ。」


これはゲームの序盤に、主人公に四大元素のうち1つが割り当てられるというイベントだった。

火・水・土・風の四大元素魔法が存在するが、カイル先生のような氷属性はなかった。

ここもゲームとは少し違うようだ。

もしかすると、氷属性以外の魔法も存在しているのかもしれない。


「エリカ、貴族の人たちはもう適性属性を知っているの?」


「ええ、魔法を習う時に必ず初めに適性を確認しますの。かくいう私も適性は知っているのですが、一度やってみますわね。」


エリカはニコッと笑い、手に魔力を集中させる。すると、彼女の手には光の玉が現れた。


「うわっ、すごい…綺麗だ」


「ふふっ、ありがとう。私は光属性なの。シエルの適性も気になりますわ!」


エリカに促され、シエルも手に魔力を集中させる。


(ゲームではプレイヤーの選択肢で属性が決まる仕組みだったんだよな。)


かなりの時間集中していたが、カイル先生やエリカのようにはうまくいかない。


「な、なんで出ないんだよ〜…」


「あら、どうしてでしょう?適性がない…なんてことはないですわよね、魔法学園に入学しているのですから。」


二人で「うーん」と悩んでいたが、一向に答えは出ない。


「なんだ、クライス。まだできていないのか」


皮肉めいた言い方でカイル先生がやってきた。


「いいか、魔法は素直なんだ。お前が中途半端だと、魔法も答えたくても答えられない。何が中途半端かは、お前自身が一番わかっているだろうが…。」


カイル先生はひらひらと手を振り、他の生徒たちの見回りへ行った。


「中途半端…か。」


確かに今の俺は中途半端だ。シエルとして生きるのか、男として桜井悠として生きるのか、はっきり決めていない。

この世界のことも知ろうとせず、中途半端に投げ出そうとしている。攻略対象たちのこともよく知らずに危険視していた。


(情けないよな。元々はこの世界を作ったのに、向き合わずに投げ出そうとするなんて。自分が作った世界なんだ。シエルとして最後までしっかり見届けないといけないよな。)


すると、手が光りだし、色とりどりの玉ができあがった。


「な、何属性なんだ…これ…。」


「あら…これは…。」


「これは珍しいな。君は全属性に適性があるみたいだな、シエル・クライス。」


聞き覚えのある声に顔を上げると、アレクサンダーが目の前に立っていた。


「え!?アレクサンダー!?っていうか今授業中じゃ…?」


「授業はとっくに終わっている。それより、僕は君に名前を教えた覚えはないが?」


(しまった!つい咄嗟に名前を呼んでしまった。)


「まあまあ、学園内ではノクターン様は有名人ですから、名前を知っていてもおかしくないと思いますわ。」


「まぁいい。」


エリカのフォローにより、追及は免れたようだった。


「君に用事があるんだ。ついてきてくれ」


アレクサンダーは断る隙を与えずに教室から出ていってしまった。


(どうやら拒否権はないみたいだな。)


シエルはエリカに一言伝え、教室を後にした。


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