4:攻略対象の生徒会長
入学式会場に着くと、天井にはふわふわとたくさんのランタンが浮いていた。
どれも異なる色と形をしており、魔法で作られたとは思えないほどに精巧だった。
「え〜やだ〜あの子男の子じゃん」
「くすくす、珍しいお客さんだね」
「ねえねえ、話しかけていいかな〜」
天井からくすくすと笑い声が聞こえてくる。
まるでランタンたちが俺を見て笑っているようだ。
「すごいでしょ?あのランタン、2年生のリアムくんって子が作った魔法なんだ。去年、クラフト魔法最優秀賞っていう学内の賞を取ったんだよ。ああいう、ちょっと変わった魔法があるとワクワクするよね。」
笑顔で話しかけてきた先輩が、見学者案内ロボットのような流暢さで説明してくれた。
俺はその指示に従い、自分の席へと案内された。
(確かに入学式にたくさんのランタンが浮いていたけど…喋るランタンっていう設定ではなかったはずだよな。)
考え込んでいるうちに、入学式が始まった。
「えー…新入生の皆さん…」
校長の長い話が終わり、生徒会長が祝辞に入った。
「こんにちは!新入生の皆さん、生徒会長のリアム・ホークウィングです。アストリア魔法学園の生徒会長をしています。」
ニコッと爽やかな笑顔で現れた生徒会長は、2人目の攻略対象、リアム・ホークウィングだった。
彼の設定は、誰にでも優しく活発的。
学園では生徒会長であり、人当たりも良く、生徒たちの相談に乗っているため、男女問わず人気者という、まさに王道キャラクターだ。
爽やかで優しそうな雰囲気と、少し長めの茶髪を後ろでくくっているのがよく似合っている。
彼もイケメンだが、アレクサンダーとは違い、かわいい系のイケメンだ。
(自分が設定を作ったといえど、我ながらいいキャラを作ったな…。)
しみじみと思っていると、また天井のランタンたちがひそひそと話しているのが耳に入ってきた。
今度は何やら妙な話だった。
「リアム出てきたよ!!」
「あのことを早く、話さないと!」
「今僕たちの声が聞こえる子はいないの!?」
(なんの話しだろう?)
ランタンたちの話が気になり、上を見上げる。先ほどよりも声が小さくて聞き取りづらいが、何だか焦っているようだった。
「あ、あの子…」
1つのランタンが俺に気づき、話しかけようとした瞬間、ランタンたちの声がピタッと止んだ。
(さっきランタンが何か言いたそうだったけど、気のせいか…?)
そう思い、壇上のリアムに視線を戻すと、リアムがこちらを見ているような気がした。
「今年は有望な新入生がたくさんいるようだね。ここではたくさんの魔法を勉強したり研究をすることができるから、皆もぜひこの学園で頑張ってね。」
リアムが指をパチンと鳴らすと、先ほどまで静かだったランタンたちが、新入生たちに歓迎の言葉を楽しそうに話し始めた。
新入生たちは、珍しい魔法に歓喜の声を上げていた。
(やっぱりさっきのは気のせいだったみたいだな。きっと誰かが話していた声が聞こえただけだろう)
入学式が終わり、順番にクラスが呼ばれていく。
担当の先生に従い、教室へと向かった。
リアムは何も言わずに、シエルが入学式会場を後にする後ろ姿をじっと見つめていた。




