3:1人目の攻略対象
アレクサンダー・ノクターン。1人目の攻略対象だ。
彼の設定は確か、主人公の2学年上の3年生。
クールで自分にも他人にも厳しい性格だが、心を開いた相手には少し甘くなる…いわゆる乙女ゲームのクール系キャラのポジションだ。
すらっとしていて背が高く、黒髪と鋭い目つきがまさにそのキャラクターにぴったり合っている。近くで見ると想像以上にイケメンだった。
「君、ずっと僕を見ているけど何か用かな。」
アレクサンダーの冷たい視線がこちらに突き刺さる。彼の視線は、まるで「なんだこいつ」という感じだ。
(あれ?この場面ってこんな感じだったっけ?
確かにここでアレクサンダーと出会うシーンだけど…)
「あ、あの、君から少し不思議な匂いがするな〜って思って…」
(あれ?俺、何言ってんだ?これじゃあ完全に変態じゃん!)
恐る恐るアレクサンダーの顔を見ると、彼は親の仇でも見るような目つきで睨んでいた。
(あちゃー、言葉の選択を完全にミスったか?
すごい怒ってるみたいだぞ…。)
「ご、ごめんなさい!ほんと、気持ち悪いですよね!ごめんなさい!!」
慌てて俺はその場から逃げようとしたが、アレクサンダーに腕をがっしりと掴まれた。
(いやいや、さっきはめっちゃ怒ってたじゃん!ここは見逃してくれよ!)
「寮生か?」
「え?」
「君は寮生なのかと聞いているんだ。」
「あー…はい。今日から寮に入る予定です。」
「ちっ、新入生か…。」
何故か不機嫌そうに俺の手を離した。っていうか、今舌打ちしたよな?
「はぁ…君はいつまでここにいるつもりだ。入学式に遅れたいのか?会場はあっちだ。」
アレクサンダーは校舎から少し離れた大きな建物を指さした。
(腕を掴んで引き止めたのはそっちだろ…。)
そう思ったが言葉を飲み込み、俺はアレクサンダーにお礼を言って入学式会場へ向かった。
「この新入生は調べておくか…。」
アレクサンダーは去っていく俺の後ろ姿を見ながら、そう呟いた。