12:アレクサンダーの部屋へ-1
骸骨は俺が手紙を受け取ったのを確認すると灰となって消えていった。
(マジでなんだったんだ…。)
改めて手紙を確認すると、差出人は確かに「アレクサンダー・ノクターン」と書かれている。
「宛先は…書いてないな。骸骨が渡してきたから、たぶん俺宛てでいいんだろうけど、嫌な予感しかしないな。」
急いで自分の部屋に戻り、アレクサンダーからの手紙を開封した。
**「シエル・クライス殿
この度は、下僕を使わせて手紙を送らせていただきました。非礼をお許しください。
本題ですが、君を僕の部屋へ招待したい。もちろん学内寮の部屋にだ。
明日、20時に女子寮の前まで迎えに行きます。君のお友達のラヴクロフト公爵の嫡男にはくれぐれも伝えず君一人で来てくれたまえ。
アレクサンダー・ノクターン」**
いや、骸骨が下僕なの? なんで骸骨から手紙を送ってくるの? 意味が分からないからやめてほしい。
「ま、まぁ…とりあえず、明日20時に女子寮の前に迎えに来るって書いてあるけど…これって完全に罠だよな?」
このことはセバスには話すなと書いてある。悪い予感しかしない。
本当はセバスに手紙のことを話すべきなんだろうが、話したことがバレてアレクサンダーに会えないという可能性もある。
「セバスには協力してもらっておきながら悪いけど、アレクサンダーの手がかりが無くなるのは惜しい…。明日はとりあえずセバスには何も言わずにアレクサンダーと会ってみるか。」
ここまでシナリオから大きく外れている。なんなら恋愛要素など、ここまで1ミリもないが…アレクサンダーの異常さだけはゲームと同じように存在しているように思えた。
(アレクサンダーと次に会うまでに少しでも情報があれば良かったんだが…間に合いそうにないな。)
俺がアレクサンダーの情報を少しでも知りたかった理由は、ゲームと同じ生い立ちであるかどうかだ。
しかし、セバスや学園内の貴族たちに聞いても、侯爵家の子息であるにもかかわらず、幼少期の情報はほとんどない。だが、情報がないということはある意味でゲームと同じなのかもしれない。
ゲームで描かれるアレクサンダーの幼少期は、まるで暗闇の中でひっそりと咲く毒花のように悲惨だった。ノクターン侯爵家の次男として生まれた彼は、虚弱体質で医者からは「大人にはなれないだろう」と宣告されていた。その話を聞いた両親は、「そんな失敗作はいらない」と言い放ち、アレクサンダーの育児を放棄してしまった。
彼が物心ついた頃には、屋敷の敷地内にある小さな小屋に住まわされていた。両親からの愛情を求め、彼は必死に魔法の研究を行い、幼いながらも多くの成果を上げたが、両親からの愛は得られなかった。
ある日、アレクサンダーが小屋の外で薬草を観察していると、一羽の寿命を迎えた小鳥が近くで倒れていた。彼はその小鳥を助けようとしたが、寿命には抗えず、小鳥はその場で息を引き取ってしまった。その瞬間、彼は「ここに愛があった」と確信した。何も言わず、ただ黙って傍にいてくれる存在を見つけたのだ。
アレクサンダーは、無言で彼を愛してくれる「死体」に心を奪われ、以来、人間には手を出さないものの、動物の死体を収集するようになった。
というのがゲームに出てくるアレクサンダーの過去だ。彼が話すまでは過去のことは何もわからない。
そしてここまでの話でわかるかもしれないが、アレクサンダーにとってシエルとは無条件で自分に愛をくれる存在なのだ。だからゲームでの彼は永遠の愛としてシエルを殺し、死体として傍に置いておきたかったのだ。
しかしこれはアレクサンダーの好感度がMAXの場合の話だ。
しかもゲームではアレクサンダーの部屋になんて招かれない。何があるかわからない。
「でももうここで逃すとなんとなく会えない気がする。…やるしかない。」
俺はそう決意し、眠りについた。




