11:骸骨の下僕
セバスと一緒に学園内でアレクサンダーのことを聞き込みしてみたが、どれも有益な情報は得られなかった。
ある女子生徒からは、こう言われた。
「ノクターン様が連日休まれるのは日常茶飯事よ。特別なことじゃないわ。たぶん、研究に没頭されてるんでしょうね。そういうところがすごくカッコいいのよね〜」
俺の心の中では、(いや、かっこよくないよ…。俺はアレクサンダーに襲われたんですけど…?)とツッコミたかったが、ここはグッと我慢だ。
「先輩の研究室にもいないし、聞き込みしても有益な情報はないし…。アレクサンダー先輩が研究熱心なことはわかったけど、一体どこに行ったんだよ…。」
「淑女がその言葉遣いは良くないな。シエルの方はあまり情報が集まらなかったみたいだな。俺の方は、ノクターン先輩が学園の研究室にいない時は、ご実家に帰省している可能性が高いと聞いた。まあ、両親に呼び出されて帰省することは貴族にはよくあることだし、学園にいる時はほとんど自分の研究室に籠っているらしい。」
「気をつけます…。でもその情報を信じるなら、今回も普通に実家に帰っただけなのかな。」
(なんとなく胸騒ぎがするんだよな…。あの事があってからアレクサンダー先輩のことを警戒しないとと思って調べたかったんだが。)
「その可能性は高いだろうな。」
セバスがちらりと外を確認し、「もう夕方だ。今日はこれで終わりにしよう。女子寮まで送るよ。」と言った。
(さすが攻略対象。エリカがセバスチャンのファンクラブがあるって言ってたけど、こんなに紳士的な対応されたらファンクラブもできるわけだ…。)
セバスに寮の前まで送ってもらい、俺たちは解散した。
(そういえば…色々あってずっと忘れてたけど、あの日、窓の外に動く骸骨がいたんだった。次も出てきたら怖いし、夢だったのか確認してから部屋に戻るか。)
俺は骸骨のことを思い出し、それが夢だったのか確認するため、自分の部屋付近まで移動した。
「たしか…この辺だったよな…。うーん、特にそれらしいものはないな…。骨とかも落ちてないし。でも、あれから数日も経ってるし、何か落ちてたとしても片付けられてるか?」
骸骨がいたと思われる場所を探してみたが、なんの痕跡も見つからなかった。
「やっぱり夢だったのか…。あの日疲れてたし、嫌な夢でも見たんだな。」
辺りはすっかり暗くなっており、俺が寮に戻ろうとした時、背後から「カタカタカタ」という音が聞こえた。
あの日見た骸骨と同じ音だ。
(夢じゃなかったのかよ。やばい、なんで今出てくるんだよ。)
嫌な汗が全身を伝う。
(そ、そうだ。ここは魔法の世界なんだ。ここ数日で魔法も少しは使えるようになったし、アレクサンダーの時みたいに暴走はしないはず…はず…。)
だがやっぱり怖いものは怖い。
俺は幽霊とかオカルト話とか、そういう怖い話は苦手だ。勘弁して欲しい。
確認なんてしに行かなければよかった。
俺は骸骨から逃げようと走り出したが、服を引っ張られ、逃げられないようにされていた。
「ま、マジでやめてくれよ!!」
俺が発狂しかけたその時、骸骨は一通の手紙を差し出してきた。
骸骨から貰う手紙なんて、ろくなもんじゃない。
きっと呪われるに違いない。
だが、骸骨は受け取れと言わんばかりに手紙を押し付けてくる。
受け取らなければ離してくれそうにない。
チラリと手紙を横目で見ると、差出人はなんとアレクサンダー・ノクターンと書かれていた。この骸骨はアレクサンダーが寄越したものなのだろうか。
戦々恐々としながら、俺はアレクサンダーからの手紙を骸骨から受け取った。




