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97日目
「ラーナ!」
――しまった。まだ殺すつもりはなかったのに。
思ったよりも軽い調子で魔王の声は響いた。
――でも、ちょうどいいや。取引してよ。というか勧誘かな。
「……え?」
暗色の腕が伸び、ラーナを抱えあげる。
――これを生き返らせるから、僕の騎士団に入ってほしい。
「馬鹿を言うな、魔物になんてなったら……!」
魔王はラーナを、幼子をあやすようにゆすった。
――君たちの記憶は保持されるよ。魔物になった人間の脳機能が低下するのはね、多幸感で現世のことがどうでもよくなるからさ。
――嘘だと思うならなってみたらいい。
信じられはしなかった。
しかし。
――まあ、猶予はあたえてあげるよ。
研究所の床が変形する。
空間そのものが歪んでいく。
窓の外は昼か夜かもわからぬ、暗色で染め上げられている。
魔王城が顕現した。
ヤーム・タは魔王の支配下に墜ちた。
私は。




