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9日目
宿を発つ前に、私はラーナに敬意を示す。
「世話になったな」
「いえ、一時とはいえ妃候補には当然の補償です」
まだあどけない少女の顔が朝日に照らされている。
その横顔に私は、かつての自分を重ねた。
「やはり私は私の夢を目指すとするよ」
「夢とは?」
「国付きの正式な騎士となることだ。冒険業などに身をやつす野良騎士などではなく、な」
私は決意を新たにし、一歩踏み出した。
「野良騎士などという職業はありませんが。では自分は、あなたが本当に王子を諦めているか監視させていただきます」
少女の足がそれに続く。
「ん。ん?」
ついてくる。
「なにはともあれ馬だ。騎士には馬が必要だ」
国を出る前に、私は街を練り歩いた。
後ろをついてきている小娘、いや、宮廷魔術師ラーナが諦めやしないかと少し期待しながら。