83日目
夜風に当たりに甲板へ上がった。
「おや」
「来ましたねえ、胸の大きい人お」
鳥人と人魚からなぜか仲間扱いされている。
私は酒の瓶を傾ける。
「うちの胸はほとんど筋肉さ。長いこと飛ぶには必要なんだ」
鳥人のウィンザムが己の胸を叩く。
「わたしの胸は歌うために鍛えられてるのよお」
人魚のフィーネが歌声を自慢する。
「わたしいー、演奏会でもちょっとしたスターなのお。その点ハルピーは汚物もまき散らすしい」
「ハルピーは違うから! 魔物と同一視されてた頃の呼び名! そちらがそう言うならセイレーンもいくつ船を沈めたか」
「まああ、国際法違反ですよお」
「お前が先だろ!」
私を挟んで口論が繰り広げられている。
「鳥と魚の仲が良いわけがないか」
「鎧のあなたあ、あなたの胸はなんのためにあってえ?」
火の粉が飛んできた。
「私の胸は剣を振るい、人々を守るためにあるのだ」
間。
「下品ねえ」
「神経を疑う」
「なぜだ!」
その時、船が大きく傾いた。
「な、なんだ!?」
甲板から投げ出されたのもつかの間、視界が閉ざされた。
携帯していた魔光の明かりをつける。
私とウィンザム、フィーネは暗い空間に閉じ込められていた。
足元は液体に浸り、その下はぐにぐにする。
「『鯨』さんのおなかの中ですねえ」
「よくわかるな」
「はいいー、絵本で見たことがあるのでえ」
ウィンザムが走り出した。
「こんなところに居られないよ! 外へ出るんだ!」
胃壁に跳ね返された。
「なに笑ってんだ!」
「笑っとらん」
「出られたとしてもお、お外は海の中ですよお」
胃壁に手をつく。
「どうにかして出られぬものか」
「その剣でズバッとやっちまえば?」
「鯨を殺すのは国際協定上できん。死骸で港が封鎖されるほどだしな」
ウィンザムの提案に首を振る。
「大きさがわからなければ剣が折れて手詰まりになる可能性すらある」
「そうですかあーなんのための剣なんでしょうねえー」
「ぐ」
助けが来るのを期待して、寝て体力を温存した。




