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79日目
私はドレスに着替えた。
自分の部屋に入る。
なにもかも昔のまま、とは言わないが、あの時代を思い出す。
「お父様……」
かつて優しくしてくれたお父様。
お風呂も『いつまでも一緒に入ろう』と言ってくれたお父様。
はじめての鎧をくれたお父様……――
「ろくな思い出じゃないですね」
ラーナが回想に口をはさむ。
「どんなクズであろうと私の父だ。他人にどうこう言われる筋合いはない」
「クズって気付いてるんですか」
ラーナが隣に座る。
「思い出なんて、そんなに大事ですかね」
その言葉にひっかかりを覚え、私は尋ねてみた。
「ラーナの両親は」
「居ません」
「そうか、すまない……」
「どうこう言われる筋合いはないですよ」
ラーナは笑った。
私も、つられて頬が緩む。
「そうだな」