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59日目
朝。
空には晴天が広がりつつある。
結局、夜通し堤の補修に付き合った。
私は泥だらけの顔をぬぐい、兄弟を休憩所に放り込んだ。
「無茶をするな、お前ら」
「別にいいんだって」
ハンプが飲み水を温めながらつぶやく。
「俺なんかいつ死んでもいいんだ」
私はなにも言えなかった。
「ハンプ」
タオルで顔を隠したまま、タンクが応えた。
「おれは怒っていないし、悲しんでもいない。誰にも傷つけられてはいない」
いつものように、不器用な言葉だった。
「兄ちゃんは強いからな」
間。
「……あっそ」
張り詰めた空気がほどけ、私はようやく息を吐いた。