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56日目


 その日はタンクが手伝いに来ているという酒場へ乗り込んだ。

 無論、ハンプを連れて。


「いらっしゃいませ~♫」


 給仕のフリフリスカートを履いたタンクが出迎えた。


「帰る」


 ハンプの肩を掴む。


「帰るっつってんだろ!」

「いいぞータンクー」

「ぎゃははは」

「お前らも囃子立てんな!」


 できあがった酔っぱらい共を威嚇する。

 私はそんな彼を静かに諭した。


「見るのだハンプ。お前の兄の雄姿を」

「はぁ?」


 巨体を揺らして懸命に働くタンク。

 客の一人がフリルを盛大にめくった。

 そんなハプニングにも彼は冷静だった。


「お客様、おさわり厳禁です」

「帰るわ」


 私の腕を脱してハンプは店を出た。




「違ったな」

「違いましたね」

「あってると思ったのか?」


 タンクは普段通りの裏方バックヤードの仕事に回っていた。

 給仕服を脱がない彼を見上げる。


「お前もノリノリだったではないか」

「憧れるだろ、フリフリスカートは誰でも」

「わかりました!」


 ラーナが珍しく叫ぶ。


「今度は弟さんにも」

「やめよう」


 やめておいた。


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