47日目
「というわけで、ワーウルフを仕留めた」
「ワーボアです」
「他にも潜伏している可能性がある」
証拠品の死体は外に吊るしてある。
クコーの女村長ザラは手を組んだまま動かない。
「人狼が住み着いているなどと言って村民を惑わせる気か」
「人猪です」
「事実だとしてもその一人だけだ。お前たちは己の仕事を遂行せよ」
「そう言える理由は」
「胸が大きい」
村長はこちらを指さして言った。
「胸の大きな冒険者は信用するなと、わが村の占い師は言っておる」
彼女の隣の席につく副村長ノースは視線をそらしている。
私はこめかみを押さえた。
「話にならない、こちらで勝手に調査させてもらう」
「魔法を使いこなす魔物についてだが」
私はラーナに話を振った。
「かつて人間の魔法使いだったものがワーウルフになる、そうして存在する可能性はないか」
「魔物化した者は著しく脳機能が低下するのです。想像力と正確な詠唱を必要とする魔法を扱うことはできません」
「そうか。占い師とやらをあたるぞ」
「去れ! 胸の豊かなる者どもよ!」
占い師の家を追い出された。
表札には『占い師 メルバの館』とある
「自分は胸の豊かなる者ではないのですが、仕方ないですね」
「どう思う」
「占い師は二種類あるのです。魔法を使う者とそうではない者」
後者は詐欺師とどう見分けられるのか。
疑問は後にして、ラーナの見立てを聴く。
「彼女は前者です。魔力増強のアイテムがちりばめられていました、あの部屋」
「ワーウルフの可能性はないと」
「わかりません」
ラーナは眼鏡を直す。
「なったばかりであれば、しばらくは周囲に気付かれません。様子を見ましょう」