41日目
「エルゼンさんの洗濯って変わってますよね」
「そうか?」
井戸水で洗った服を物干し竿にかける。
「竜炎団にいる間もこの方法でやっておった。普通だろう」
「まあ、洗うところまでは普通なんですが」
物干し竿に通したロープを左手に巻き付け、右手で保持する。
そのまま天に向かって勢いよく回す。
「よく腕がもちますね」
「別に普通だろう」
「裸で恥ずかしくないんですか」
「誰も見ておらん。お前のもやってやろうか」
「魔法で清潔は維持してるので」
飛散した水滴がレンガの壁に吸われていく。
「少し、よろしいでしょうか」
女が話しかけて来た。
「わたくし、ホセイ町内騎士団の勧誘をしております。あなたの膂力に目をみはりました。ぜひお話を聴くだけでも」
羊皮紙に印刷された案内を置いて去っていった。
「毎朝、洗濯をしておくものだな」
「その分、昼に寝てますけどね」
「お別れだラーナ。私はこの町に骨を埋めるだろう」
「気が早いですね」
洗濯物を乾かしながら、夜明け空のあわいを見上げる。
「タンクにも伝えてくれ。たまには立ち寄れとな」
その昼。
「それでは、胸部縮小施術を始めます」
「ウワーーーッ!」
私は台に拘束されていた。
白衣の魔術師に取り囲まれている。
「町内騎士団の審査と聴いたのだが!」
「ええ、一発合格です。他に志願者がいなかったので」
「この拘束はなんだ!?」
「騎士団入隊に必要な儀式です。われわれ巨乳治療学会が援助する騎士団に入るための」
首をかしげそうになったが、拘束されて動かせない。
「きょにゅうちりょう?」
「われわれの独自調査によると、冒険者の巨乳率は一般人の、およそ七倍。七倍ですよ? 冒険者に特有の感染症が蔓延しているに違いありません。その治療法を研究しているのです」
「私の乳は冒険者になる前からこうだ」
「………」
白衣の魔術師、巨乳治療学会の者たちはひそひそと相談し合っている。
「巨乳特有の記憶混濁かと」
「ウワーーーーッ信用ならんこいつら!」
「エルゼンさん!」
施術室の扉が開いた。ラーナだ。
「面白…嫌な予感がして駆けつけました、大丈夫ですか!」
「助けてくれ! 殺されてしまう!」
しばしの間。
「見学いいですか」
「ラーナッ!」
その時、力が発動した。
白衣の胸が次々と膨らんでいく。
「うわぁああああ」
「ひいいい! 胸があああ!」
私は隙をついて拘束を千切り脱出した。
『胸を大きくする力』が役立つ時が来るとは。
「というか胸が膨らんだくらいで騒ぎすぎだ」
「なぜだ! 巨乳で苦労してきたはずでは!」
部屋を出ていく前に、膨らみつづける彼らへ説いた。
「この胸は私の一部。いまさら施術などいらぬ」
「施術は怖くないのよ!」
「魔法差別主義者ですか?」
「もうだめだ……殺してくれ……」
「胸がデカいだけで何も見えなくなるのかお前たちは!」
すぐに町を脱出した。
ラーナも巨乳になりながらついて来た。




