36日目
「もう飽きた!」
半壊したジェフトの街で私は叫んだ。
「……何に飽いたかわからぬが、息の根なら止めてやろう……」
「『月止めの魔法』ってわかりますか」
「……それがどうした……」
ラーナがロバ竜の後ろに隠れる。
「油断しないでください」
私は何も言わなかった。
「……魔王スーラへの贄となれ……」
「願い下げだ!」
私が叫んだ瞬間、上級魔物の横合いからタンクが殴りつける。
死角からの同時攻撃にも奴は冷静だった。地面の影に滑り込んでいく。
「後ろだ、エルゼン!」
私自身の影から魔物が出て来た。
つばぜり合いの間にも腹が痛み、思わず膝を折る。敵の懐に入った瞬間、衝撃が襲った。
「がッ」
弾き飛ばされ、瓦礫に背中を叩きつける。
敵の手に光弾が見えた。
その下にある鋼と肉塊が混ざった血だまりは、私の腹から続いていた。
「ホヒーー」
ロバ竜が前に躍り出る。光弾を鱗で退けるのか。
と、思った瞬間、ロバ竜が大きく口を開けた。
光弾を飲み込んだ。
「……なんと……」
ボールのように膨らんだロバ竜はそのまま突進していく。
バクン、と上級魔物の頭が食われた。
そのまま縁日の綿飴でも味わうように齧り取っていった。
「ムッチャムッチャムッチャ」
「………」
「いいこいいこ」
上級魔物を完食し戻って来たロバ竜の頭を、ラーナがなでた。
「そいつだけでよかったのでは……?」
私は気を失った。




