34日目
相変わらず腹がズキズキするが、そうも言ってられない。
飛んできた氷塊を転がって避ける。
「ウフッ♡ 抵抗しちゃってかーわいい♡」
戦意を煽るだけの言葉が妖魔の口から紡がれる。
剣を構え直す。
その一瞬の隙をつかれ、背後を取られた。
「なにっ」
「いただきまーす♡」
頭を掴まれた。
「ぐっ、なにを……」
「エルゼンさん!」
ラーナが叫ぶ。
冷気、それと共に体からなにかのエネルギーが離れていくのを感じる。
これは……
「アハハッ! アタシは苦痛を吸ってパワーアップするのよ♡」
「うらぁ!」
柄で殴った。
向き直ると、妖魔が顔を押さえて倒れ伏していた。
「ば、バカな……このアタシが……」
「苦痛を吸い取ってくれたおかげで絶好調だ」
「がッ!」
妖魔の心臓に剣を突き立てた。
おそらく生まれたての上級魔物は、黒い霧となって散った。
「設計コンセプトから見直した方がいいですね」
ラーナがどこ目線かわからないコメントをした。
日が昇る。
それと同時に腹の痛みが戻ってくる。
「飼ってやればよかったな……」
タンクが物騒なことをつぶやく。
「上級魔物は懐きませんよ」
ロバ竜をなでながらラーナが言った。