30日目
「生理が来た」
ひとまず布切れを当てたが根本の解決にはなっていない。
私は焦っていた。ものすごく。
ラーナは皮むきの手を止めず、二の腕で眼鏡を直して言った。
「『月止め』があるじゃないですか」
「効力が切れていたのだ、予備も落とした。ら、ラーナ……」
「自分も使い切りました。アテンが魔法後進国だったのが痛かったですね。ホテップまで我慢しましょう」
「宮廷魔術師だろお前、ぐぅぉ」
「宮廷魔術師にも得手不得手はあるのです」
悪寒と痛みがズキズキと襲ってくる。
氷で内臓をねじ上げられたみたいだ。
「女性って大変だな……」
つい最近女になったタンクが神妙な顔でつぶやく。
「お前もいずれこうなるのだぞ」
「怖い……!」
幽鬼のごとき顔で凄んでやったが、痛みは治まらぬ。
朝餉のスープはわずかに飲んだだけで気持ち悪くなった。
「ホヒーー」
残りはロバ竜にやった。
「アテンで調達したものですが」
ラーナから薬草を渡された。
「近い効能があると謳っていました。使ってみては」
「私に毒味させる気か」
「なにもないよりはマシでしょう。……この前、助けられた礼です」
昼。薬草の効果で血は止まった。
腹は痛いままだ。むしろ強まった気がする。
「ああ、おかげで洗濯の手間がはぶける」
私はラーナに頭を下げ、そのままうずくまった。
半日、寝て過ごした。
■キャラクターしょうかい
バスト・エルゼン:騎士♀。巨乳を理由に追放された。
酒が好きで医者が嫌い。
ラーナ・ケインベルグ:パヴァ王国付きの宮廷魔術師♀。
おばあちゃんっ子。
タンク:戦士♂→♀。身長も胸もでかい。
最近♀になった。
ロバ竜:魔法生物。よくわからない。