100日目
魔王はしばらく考えた後、言葉を発した。
――胸が大きいからかな。
「ふざけるな!!」
私は魔王を殴り飛ばした。
黒い闇の胸のあたりが膨らみ、爆散する。
――ぐえー
私はその勢いのまま窓から飛び出して、魔王の城を破壊した。
「ボヒーー」
邪竜の口から凝縮した炎が吐かれる。
ラーナは邪竜の背中に乗り火球を地上に降らせている。
タンクは周りに居た上級魔物を片っ端から殴り飛ばす。
私たちは上級魔物を霧に変えていった。
歪んだ時空の中、魔王の国を滅ぼした。
「さて、魔王の騎士も諦めてこれからどうするかだが」
地獄と化したヤーム・タの街、黒くひび割れた地面に腰を下ろした。
猛獣の爪で頭を掻く。
「とりあえずタンクさんの里に行ってみますか」
「大丈夫か? 半魔だぞ今の私たち」
半魔となった元ヤーム・タ国民たちは魔王を失って茫然としている。
一時は私を新たな魔王として担ぎ出そうとしていたが、視線で牽制した。
「その前に気になることがある」
男女の顔が左右に分かれたタンクを見上げる。
「どうした、タンク」
二つの顔は真剣な表情で、宙を見つめている。
「股間を見てもらえるか」
「嫌に決まっとるだろ」
即答した。
「正中線から『分かれてる』のはわかるんだが、己で見る勇気がない……」
「こっちも見たくないわ。忘れろ」
「自分、見てみたいです」
「マジか」
めくれた服の合わせ目をラーナが覗く。
「………」
「どうだ」
「宇宙が見えます」
気になったが、己の好奇心を押さえつけた。
「なんだこの時間」
邪竜が月の光を食んでいる。
「ムッチャムッチャムッチャ」
おわり
■キャラクターしょうかい
バスト・エルゼン:騎士♀。強い爪を手に入れた。
ラーナ・ケインベルグ:宮廷魔術師♀。飛べる羽を手に入れた。
タンク:戦士♂♀。頭と股間が左右に分かれた。
邪竜:元魔法生物。何も考えてないのかもしれない。
魔王:疑似的に形成された人格だが、形があるなら殺せる。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。