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1日目


「胸が大きすぎる」

「は?」


 団長コーディの言葉に耳を疑った。


「本当にすまない。でも胸のでかい女が一人いるってだけで依頼者に感じさせるだろ? 頼りなさそうだって」


 依頼者クライアントになにを言われたかわからないが、そんな理由で戦力を一人除くというのか。

 パヴァ国は女冒険者が多い、というよりほとんどの仕事を女性が担っていて、しかも皆胸を潰している。その中で私は確かに大きい方だ。しかし。

 私は当然抗議する。


「ならば、タンクも辞めさせるのか?」

「いや……あいつは男なんだから話が違うだろ」

「わ、私だって半分は筋肉の厚みだ!」

「でも依頼者がさあ、気になるって」

「胸の大きな女騎士がいるだけで取り下げるなら取り下げさせておけ!」


 タンクは後ろで申し訳なさそうに縮こまっている。

 それでも頭一つ抜け出した身長は隠れていない。なにか言え。


「とにかくそういう訳だから」

「訳だからで済むか! おい、待て!」

「あ、馬はこっちの財だから持っていくね」

「待てこら! このアマァ!」


 私、騎士バスト・エルゼンはその日のうちに無職となった。


 馴染んだ鎧、馴染んだ剣、手にはわずかな路銀。

 馬を取り上げられては騎士を名乗ることすらできない。


 何が『頼りなさそう』だ。

 それを言うなら戦闘中も胸ばかり見てくる団長のほうが頼りないではないか。

 同じ女だからと言って気付いてないとでも思ったか。


「いかんいかん、騎士たるもの平静に真摯に……こうなれば己で仕官先を見つけるしかない!」


 精神を整えるため、とりあえず『竜炎団コーディは巨乳フェチ』と百枚ほど羊皮紙にしたためた。

 携えてギルドの酒場に乗り込む。


「頼もう!」


 馴染みの店主に怪文書ビラを預けて一番強い酒を注文する。


「ちょっといいかい、お嬢さん」


慣れない形式ですが、お手柔らかに


■キャラクター・組織・国しょうかい


バスト・エルゼン:竜炎団元団員 騎士♀。主人公。巨乳を理由に追放された。

 たまに口が悪くなるのを気にしている。


□竜炎団 その名を知らぬ者はいない冒険者ごろつき集団。


コーディ:団長 冒険者♀。エルゼンのおさななじみ。胸を見てくる。

タンク:団員 戦士♂。身長も胸もでかい。女所帯の中で数少ない男。


◆パヴァティもしくはパヴァ王国 南の国家。

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