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不気味な魔物と戦いは始まる

 アッシュが街を出る前のこと。


 バルサとエリーはすでにビズリーの外に出ており、そこでバルサはエリーに指示を出していた。


「よし、エリー。今日は山の中を通ってフォートまで行こうか。」


「え、そうなんですか?道を戻るわけではなく?」


 エリーはフォートからビズリーに道なりに来たのと同様に、道なりにフォートまで行くものと考えていたため、疑問の声を上げた。


 それに対して、バルサはエリーの肩をバンと叩いて「まだまだだね。」と言った。


「道なりに戻るなんてつまらないだろう。そのうち山に入る時だってあるんだし、今のうちから山に入るのに慣れておいた方がいいだろうさ。」


 そう言って笑顔を見せるバルサに、エリーは思ったより強く叩かれた肩をさすりながら「わかりました。」と答えた。


「じゃあエリー、あんた一人でフォートまで行ってみな。」


「え?」


 唐突なバルサの言葉にエリーは再び疑問の声を上げる。


「え?じゃないよ。山の奥に入れとは言わないから、道が見えるくらいの近さで山を歩いてみな。」


 エリーはバルサから今度は背中を叩かれ、「うっ」とうめき声を上げることになった。


「けほっ。わかりましたバルサさん。……ですが、バルサさんはどうするのですか?」


 背中を叩かれてむせながらエリーはバルサに尋ねる。


「私かい?私はストレス解消に山の奥に行ってくるよ。」


「ストレス解消に山の奥、ですか?」


 エリーの脳裏に、バルサとドルペリが話していたときにドルペリが語った、バルサが予定を変えて魔物狩りにいくのではないかという記憶がよみがえる。


(もしかすると、バルサさんは依頼の最中でもどこかによく行ったりしているのだろうか。)


 う~む、バルサさんならやってそうだ。


 そんなことを思いながらエリーがバルサの様子をうかがっていると、バルサはバックから片手で持てるくらいの筒状の物を取り出しエリーに手渡した。


「これは発煙筒だよ。使えば色の付いた煙が上がるから、もしも何かあったら使いな。私も遠くには行かないからすぐに気づくはずさ。」


「はい。わかりました。集合はフォートの集会所で?」


 エリーは受け取った発煙筒を手に持ったままバルサに尋ねる。


「そうしようか。エリーなら半日もしないで着くだろうけど、私はもう少しかかるだろうから待たせる事になるだろうけどね。」


「いえ、まだフォートにも慣れてないので、街をまわってようと思います。」


「そうかい。じゃあ私は行くから、頑張りなよ。」


 そう言うと、バルサはズンズンと足音を立てるように山の中へ入り、フォートの方角とは別の方向へ歩いて行った。


 残されたエリーはバルサの姿が見えなくなると、手に持った発煙筒をしまった。


(とにかく一人で行くことは決まったし、私だって山の中を歩いたことはある。早くフォートまで行って、自分の実力を見せるんだ。)


 エリーは決意を固めると、バルサに続くように山の中に入っていったのだった。



 そして、エリーが山へ入ってから少しして、エリーは奇妙な匂いが漂ってくるのに気づいた。


(なんだろう。人の匂いと、それに加えて魔物の匂いがする。)


 そう感じたエリーは、自身の魔力を使って五感を研ぎ澄ませる。


 一般的な人は、魔力を使って火などを生じさせる。しかしながら、ハンターは魔力を使って火を出すのではなく、魔力を使って運動能力を高めたり、エリーのように五感を研ぎ澄ませる者が多い。


 これは、ハンターの仕事が主に肉体労働であるためだ。遠くまで移動したり重い荷物を扱うためには、火を出すよりも運動能力を高める方が理にかなっている。(もちろん、他の魔法がまったく使えないわけではない。)


 また、動物程度ならまだしも、魔物を相手にする場合は多少の火を出せるくらいでは効果が薄く、強力な火を出すと周囲の人に危険が及ぶ可能性もある。


 このため、ハンターの多くは火や電気を出すといった魔法を使うよりも、魔力で自分の身体能力を高める者が多かったのだ。


(これはハンターの多くが、考えるよりも先に体を動かす事が好きということも一因であった。一方で、一つの拠点で用心棒のような働き方をしているハンターは、デモンストレーションのためにあえて見栄えのよい魔法を覚える者もいるのだという。)


「こっちのほうだ。」


 エリーは匂いのする場所がここから近いことを察知すると、素早く駆け出した。その走りは速く、それでいて体重の重さを感じさせないほど軽かった。


 風のように木々の合間を駆け抜けていくエリーの姿はまるで低空飛行する鳥を思わせた。


「見つけた!」


 山中を走り出してからほどなくして、エリーは視界の先に人の姿を発見した。


 そして、現場に辿り着いたエリーは人の姿と同時に、奇妙な、人のような形をした魔物の姿も視界に捉えていた。


 驚くことに、その魔物は人を肩に担いで歩いていた。


「待て!!」


 エリーは考えるよりも先に魔物に向かって叫んでいた。エリーの声に反応したのか、魔物がグルリと頭を動かすようにしてエリーの方へ向く。


 だが、エリーの方へ向いた魔物の顔は目も口もくぼんでいた。そして、くぼんだ場所には眼球も歯も見当たらなかった。


 顔なのか判然としない部位を向けてくる魔物に、エリーは不気味な感覚を覚える。


(なんだろう?目がない魔物なのか?そうだとしたら、どうやってこちらを見ているのだろう。)


 エリーが改めて魔物を観察すると、魔物の頭と思える部分には、人間だったら目と口がある場所がへこんでいるだけで、実際には目も鼻も口も、耳すらもないようだった。


 次に魔物の体に目を向けると、大きさは成人男性ほどで、魔物の体は人のような形をしているが、人よりも腕が長い。


 人間や動物のように体毛があったり筋肉や関節で凹凸がある感じがなく、腕も体も陶器で作った円筒状のパーツをつなぎ合わせて作ったようだった。


(なんだか人形かマネキンみたいだ。)


 エリーの魔物に対する率直な感想はそれだった。


 エリーは全ての魔物を知っているわけではないが、魔物は動物に近い見た目をしているのが普通である。


 魔物にはオオカミや熊を狂暴にしたような魔物や、竜といわれるような強大な魔物もいる。そうした魔物はもちろん動物よりも体が大きく狂暴で、恐ろしい存在である。しかしながら、どんな魔物であっても生気を感じられるものだ。


 そして、エリーが対峙している人型の魔物は動いてはいるが、その姿からは生気が感じられなかった。


(それに、魔物が人を襲ったり食べたりするのではなく、どこかに運ぼうとしてるのもおかしい。)


 そんな意図的なことは人間のやることだ。魔物がやることじゃない。


 魔物に担がれている人は1人で、男性と思われた。担がれた体は手足を力なくぶら下げているが、死んではいないように見える。


(生きているなら私が早く助けないと。)


 エリーの頭には魔物に対する疑問点がいくつも浮かんでいたが、疑問を押し殺して男性を救う事に集中することにした。


「その人を放しなさい!早く!」


 言葉が通じるのかわからないが、魔物に強く言い放ちながらエリーは腰から剣を抜いた。


 そして、魔物に切りかかるために姿勢を低くして構え、足に魔力を集中させていく。


 対する魔物は、動くこともなくじっとエリーのほうへ頭を向けていたが、ゆっくりと振り向くように体をエリーの方へ向けた。


 肩に人を担いだまま1歩、2歩と地面を踏みしめるようにエリーに近づいて来る。


 そして、魔物が人を担いだ方とは別の腕を上げはじめた、その時


「はあっ!!」


 エリーは空気が破裂するような声とともに足に集中させた魔力を解放し、弾丸のように魔物に突撃したのだった。

寒すぎて脳細胞が凍死している気がする。

読んでいただきありがとうございます。

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