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ビズリーの夕暮れにて 1

「それじゃあ明日はフォートまで帰るから、ここで解散して朝に集合しようか。」


「はい。」


 エリーはハンター組織「ビオライン」の長であるトルベリとの挨拶をした後、バルサから街の案内を受けていた。


 おおまかな案内が終わったころには夕方になっており、エリーとバルサは一度解散しようという話をしていたのだった。


「私は集会所の寝床で寝るけど、エリーはどうする?集会所なら狭いけど安く泊まれるよ。ある程度稼いでる奴は別に宿で寝る奴もいるけど。」


「私も集会所に行くと思います。けど、その前にもう少しこの街を見ていこうと思います。」


 問いかけるバルサに対して、エリーは少し考えてから答えた。


 エリーはすでに疲労していたが、はじめての町だからこそ早めに慣れることが必要だと考えており、バルサの案内になかった場所も見ておこうと思ったのだった。


「わかった。迷うほどの町じゃないけど、深夜までウロついたりするのはやめなね。」


 バルサが少しからかうような調子でエリーに言うが、エリーはまじめな様子で「はい。もちろんです。」と答えた。


 そして、「それでは行ってきます。」と続けて言うと、エリーはバルサに背を向けて歩きだしていった。


 その様子を見てバルサは少し渋い顔をして息を吐いた。


「少し真面目過ぎだねぇ。悪くないけど、生き急いでるのはよくないね。しかも女の子なんだし、体も細いしねぇ。」


 そう独り言をいうバルサの顔は、ハンターの後輩を見るというよりも親が子供を見るかのようだった。





 それからしばらく後、エリーはビズリーの町の路地裏を歩いていた。そして、頭の中で地図を描きながら、エリーは路地裏にも意外とお店があることに驚いていた。


(大きい町ではないけれど、それなりに入り組んでいる場所がありそう。それに、バルサさんが言う通り、町長兼ハンター長のトルベリさんはやり手なのかもしれない。)


 バルサはエリーに町を案内する中で、ハンターの集会所で出会ったトルベリについても話をしていた。


 バルサの話では、トルベリは太っていて運動はからきしだが、お金を稼いだりする頭はいいのだという。


 そしてハンターは通常、体力がない人間を見下しがちだが、トルベリは意外とハンターから尊敬されているらしい。


 それは、ハンターは戦うことはできても頭が良くない者が多く、お金に無頓着な者もいる中で、トルベリが仕事とお金を回してくれるためだという。


 エリー自身もお金に無頓着な部分があるため、エリーは、(これからはお金の勉強もがんばらないと。)と心の中で拳を固めたのだった。


(おや?)


 そんなことを考えているとき、エリーは1つの看板の前で歩みを止めた。


 その看板には『肩もみ屋』という文言と共に、店がある方向を示しているのだろう、矢印マークが描かれていた。看板は無地で文字以外には何も書かれておらず、情報を伝えるだけで商売気を感じられない。


(怪しい。)


 エリーが看板を一目見た感想はそれだった。


 看板の名称をそのまま考えると、やはり肩をもむのだろうか。しかしながら、肩もみだけでお店を開くのは変だ。肩もみなどをするなら普通、全身を扱うマッサージ店や整体などをするのではないだろうか。


 そんなことを考えるが、エリーは商売をしたことがなく、肩もみだけを専門に行っていても不思議ではないとも思える。


 しかしながら、エリーは判断に迷ったときは自分の直感を信じることにしていた。そしてさらに、エリーは何か怪しいことが行われていたり犯罪が行われていたなら、それを正さなければならないと考える人間だった。


(怪しいと思ったなら行くしかない。)


 エリーは好奇心と疑念を併せ持ちながら看板が示す方向へ進んでいく。


 そしてしばらく進むと、エリーは人気のない小さな広場のような場所に辿り着いた。


 そしてエリーは、その広場の端の方に先ほどと同じ『肩もみ屋』という看板が置いてあるのを見つけた。


 さらに、看板から少し離れたところに背もたれのあるイスが3つ並べて置いてあり、そのイスの1つには老婆が座っていた。


 エリーは警戒しながら老婆に近づき様子をうかがう。うつむいた姿勢で微動だにしない老婆はどうやら眠っているようだった。


「お客さんですか?」


「わっ!?」


 突然声を掛けられて、老婆に気を取られていたエリーは驚きの声を上げた。


 エリーが声が聞こえた方を見ると、看板の傍に1人の男が丸椅子に座って佇んでいた。


(存在感がなくて気づかなかった。)


 実際に目を向けると、確かに看板もあるし男も傍にいたが、エリーは男から声をかけられるまで男の存在を認識できていなかった。


 感覚は鋭い方だと自負しているエリーは男に気づけなかったことに驚きつつ、男を観察する。


「あっ!あなたはたしか、アッシュさん。でしたよね?」


 それはエリーがバルサと一緒に山道を歩いているときに出会った男だった。

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