フォークダンスと体育祭
……とうとうこの日がやって来た。
私はグラウンドの遥か向こうにいる彼を見る。同学年の私達はこの3年間一度も同じクラスになる事も無く、委員会なども違った。部活も彼は陸上部で私は茶道部。
――そう、見事な程に全く関わりのなかった私達。
それが、今日こそはその悪しきジンクスが破られる(ハズ)!!
何故ならば、今日は体育祭……! 本来茶道部である私には嬉しくはないイベントであり、昨年まではただ彼の勇姿を熱く見守るだけだった。
しかーし! 今年の体育祭は昨年までの体育祭とは一味違う!
それは……我が高校では3年生のみ参加の『フォークダンス』!
今まで見ている事しか出来なかった、憧れの陸上部の彼と! 手を取って見つめ合ってそして……。ぐふふ。
以前チラリと見た時の彼の手は、スラリと長く綺麗だった。その彼の手と……いやーん、どうしよう!
私はどこか浮かれながら友人達と昼食を食べる。そして……やらかした。
お弁当のおかずのオムレツ。そのケチャップがクラスTシャツについてしまったのだ……!
慌てて拭いたがおかしなシミが付いてしまった。
そんなやらかしに打ちのめされる私に、フォークダンスの招集がかかる。傷心の私も行かねばならない。
せっかく今日の髪型は可愛く出来たのに、まさかこんなオチがくるとは……!
私はなんとか気持ちを落ち着け自分の場所に並ぶ。少し向こうに彼が並んでいる。
そしてダンスが始まった。
順調にダンスは進み、少し手前に彼の姿を確認した。
いよいよだ!
ん?
ポツポツ……ザーーーーッ!!
大粒の雨粒が落ちて来たと思ったら、いきなりの夕立ち。
私は、彼の手を取る寸前だったのだが。
無情にも中断の放送が入り、そのまま再開される事は無かった。
私達は慌てて近くのテントに入った。
落ち込む私の前に、スッと何かが差し出された。私は少し虚な目でそれを見る。……ハチマキ?
そこには憧れの彼が少し困ったように微笑んでいた。
「……ココと、ココ。多分ケチャップ? 付いてる。コレで隠した方がいいよ」
「………………ありがとう」
私は優しい彼と自分の不甲斐なさに泣いた。
その体育祭の思い出と返しそびれたハチマキは、恋の記念として今も大切に引出しに仕舞われている。
主人公は『茶道部』に入ってお淑やか系女子を目指していましたが、実は結構やらかし系(ドジ系)女子です。