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第8話 密談 ルーク視点 

今日も読みに来て頂き、ありがとうございます!


皆様からの応援が執筆の何よりの励みになっています(*^^*)

 僕はシルヴィのお父上と共に閣下の執務室へ移動し、話をすることになった。


「それで話とは? ルーク・ベレスフォード殿」


「やはり閣下は僕のことをご存知でしたか」


「私もナターシャも知っている。シルヴィは貴殿と年齢差が確か5つだから、シルヴィが15歳で社交界デビューした頃に、貴殿は王族籍を抜けて公爵家当主になられていた。そして、王家主催のパーティーなども滅多に参加されていないようだったから、シルヴィアが貴殿のことを知らなくても無理はない」


「確かに。僕は18歳になった時に王族籍を抜けましたから。式典やパーティーは本当に最低限しか参加していないからまともに面識はないですね。ただ、甥の婚約者だから当然名前は知っていましたし、数少ない参加したパーティーで遠くから彼女をお見かけしたことはあるので、僕は一方的に彼女のことは知っていました」



 我が国では男女とも18歳で成人とみなされるので、18歳で僕は王族籍を抜けて、当時既に国王に在位していた兄上より公爵位を賜ることになった。


 この頃には既にフィリップもエドワードもエリザベスも生まれていたから、兄上のスペアとして僕が王家に残る必要もなかった。


 それに、パーティー会場では基本的に彼女とフィリップの周りは挨拶にくる人が多いので、自分からは近づかなかった。


「本題なのですが、シルヴィア嬢と婚約させて頂けないでしょうか?」


「それは王家からの補填という形で申し出ているのか? 自分の身内の不始末の責任を取る為に」



 そう取られても仕方ない。


 現状、王家が彼女に不義理をした為、王家が彼女の為に元々の婚約とは完全に同等とまではいかないかもしれないが、駄目になった縁談の代わりに良い縁談を世話するというのは当然だ。


 元々の相手はフィリップだったから、まずは同じく王族関係者からというのが筋だ。


 もし王家から補填という形で紹介するなら、独身で婚約者のいない僕は一番の候補者になり得る。



「王家の意思とは関係ありません。お恥ずかしい話ですが、昨夜偶然酒場で彼女が飲んでいたところにたまたま居合わせ、彼女と色々お話させて頂いたのですが、そこで彼女に好意を持ちまして。嫌々仕方なしに甥がしでかした不始末の責任を取るということではなく、私が望んで婚約したいのです」


「そうか。当人の気持ちは無視して政略的なものだけで婚約した結果の婚約破棄だから、親としては出来れば気持ちがなく政略的な都合のみの婚約より、あの子のことを想って下さる方の方が望ましく思う。良い条件の者ほど早くに婚約者は決まるから、あの子と同年代で良い条件の相手などもう残っていない。王太子殿下との婚約の時よりも条件は悪くなり、そんなことは言っていられなくなる。訳ありもしくは後妻の二択になってしまう。私はシルヴィにそんな二択などさせたくない。だから、貴殿の申し出を有り難く受けよう」


「閣下、ありがとうございます」


「ただし、シルヴィを悲しませるような真似は絶対にするなよ。そんなことをしたら私もナターシャも黙っていない」


 閣下が鋭い目つきで僕を射抜く。


 シルヴィは両親や家族には愛されているようで安心だ。



「勿論です。シルヴィア嬢を大切にするとお約束します。今、話がまとまったばかりで申し訳ありませんが、今日中に婚約について書面にして頂けますか」


「わかった。聞いた話では、王家側から婚約破棄を撤回して、シルヴィアを側妃にするということを提案されかねないからな。しかも、書類不備でまだ婚約破棄が書面上正式に成立した訳ではない。婚約破棄そのものは、不幸中の幸いでパーティー会場で沢山の参加者がいる中での話なので、王太子の発言について証人も大勢いるから押し切れるが、その先の話はしっかり固めておかないとまずい。”婚約破棄されて新たな婚約者は見つかってないんだろう? 婚約破棄をなかったことにするから側妃として役に立て”なんて言われたらたまらない。そもそも婚約自体は王家側のごり押しで決まったものなのに、人前で婚約破棄するなんて王太子殿下の常識を疑う。我々は王家の都合が良いように動かされる駒ではない」


 王家側のごり押しで決まった婚約ということはシルヴィの話には出てこなかったけれど、”我が家が望んでいない婚約”だとは言っていた。


 閣下がそう思うのも無理はない。



「閣下の仰る通りです。そうなってしまう可能性がないとは言い切れません。明日、王宮の役人を連れて此方に僕が訪問しますので、役人立ち合いの下、閣下と僕でサインを入れましょう」


 正式な婚約の書類は役人の立ち合いの下で、両家の当主がサインを入れるというのが一般的だ。


「明日は私は午後から外出予定があるので、それは午前中でもいいか?」


「大丈夫です。申し訳ありませんが、よろしくお願い致します」




 閣下と話を終え、シルヴィに挨拶してから僕はベレスフォード公爵邸に帰った。


 家令のアーロンを呼んで使用人を全員集めてもらった。


「突然だが、婚約を結ぶことになった。結婚の時期はまだ具体的に決まっていないが、なるべく近いうちにと思っている。相手はシルヴィア・ローランズ公爵令嬢。昨日ここに連れて来た令嬢だ。これからここに連れてくることもあるだろうが、その時は将来の女主人だと思って丁重に接して欲しい」


「やっと奥様がこの屋敷に!」、「あの女嫌いの坊ちゃまにお相手が!」と使用人達は一斉に歓声を上げる。



 この屋敷の使用人達は元々後宮勤めだったが、僕がベレスフォード公爵当主になり、住まいをこの屋敷に移した時に後宮から引き抜いてきた者が殆どだ。


 付き合いが長い彼らに祝福されて照れくさいが、喜んでもらえて純粋に嬉しい。


「それに伴い、通常の業務に加えて、少しずつ屋敷内の改装や結婚式に向けての準備もしてもらうことになるが、頼む」


「「「畏まりました!」」」



 さて、まずは肝心のシルヴィアに婚約の話をしないと。

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