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第7話 ローランズ公爵邸にて 

今日も読みに来て頂き、ありがとうございます!


皆様からの応援が執筆の何よりの励みになっています(*^^*)

 馬車に揺られること約15分。


 御者からローランズ公爵邸前に到着したと声がかけられたので、ルークのエスコートでシルヴィアは馬車を降り、二人はそのままローランズ公爵邸の正面玄関に向かう。


 今回はシルヴィアが昨夜ベレスフォード公爵邸に泊まり、先触れで10時頃向かうと連絡を入れている上、ルークというお客様も連れている為、シルヴィアはルークと共に堂々と公爵邸の正面玄関から入ることにした。



 シルヴィアが正面玄関の扉の呼び鈴を鳴らすと、家令のジョナスが屋敷の内側から外側に向かって扉を開ける。


「シルヴィアお嬢様、お帰りなさいませ。旦那様と奥様、ベアトリスお嬢様とダニエル坊ちゃまを呼んで参りますので、それまで応接室でお待ち下さいませ。お連れの方は連絡をして下さったルーク様でよろしいでしょうか?」


 家令がルークのことをそう呼ぶことは本来ならあり得ないが、シルヴィアの前で家名を言わないでほしいという一文が先触れに記載されていたので、やむなく名前に様付けという呼び方となった。



「ただいま、ジョナス。そうですわ。昨夜は彼の屋敷でお世話になりました」


「ルーク様。お嬢様がお世話になりました。旦那様から丁重におもてなしをするよう仰せつかっております。ルーク様もシルヴィアお嬢様と共に応接室にご案内させて頂きます」


 ジョナスの案内でシルヴィアとルークは応接室に入室し、シルヴィアの家族が全員揃うまで紅茶と茶菓子――今日の茶菓子はフィナンシェ――を楽しみながら待つ。



 しばらくするとぱたぱたと軽快な足音がしたかと思うと、応接室のドアがバンッと勢いよく開き、小さい少年が「シルヴィ姉様……!」と叫びながら、ソファーに腰掛けていたシルヴィアのところへ一直線に飛び込んできた。


「シルヴィ姉様! ぼく、昨日の夜、姉様と一緒に本を読もうとして姉様のお部屋に行ったら姉様がいなくて心配したよ……!」


「ごめんね、ダニエル。まだ小さいあなたを心配させて」


 ダニエルはシルヴィアの弟だ。


 後継ぎの男子を諦められなかったローランズ公爵夫妻がこれが最後と子作りした結果、生まれたのがダニエルだ。


 シルヴィアと彼女の妹が年齢の離れたダニエルを可愛がった結果、彼はすっかり甘えたのお姉ちゃんっ子になってしまった。



「昨日何があったかお父様から聞いたよ。やっぱりあいつろくでもないやつだったね」


「ダニエル。一応相手は王太子殿下だからそんなこと言っちゃだめよ」


 シルヴィアはフィリップが碌でもない男であるという点には同意するが、彼は腐っても王太子なので、下手なことを言ったら冗談抜きに王族に対する侮辱罪や不敬罪で罰せられてしまう。


 シルヴィアはそれは勘弁願いたいので、ダニエルを窘める。



 ここには家族だけではなく、ルークという客人もいる。


 迂闊なことを言って、ルークが王家に”ローランズ公爵家の家人は、フィリップ王太子殿下にろくでもない奴だ”という評価を下していたと暴露でもされたら堪らない。


「はーい」


 ダニエルも年少ながらもその辺りのことは弁えており、シルヴィアからの注意に素直に頷く。


 多少渋々頷いている感じが否めなくもないが、一応はこれで良しとする。



 シルヴィアがダニエルとそんなやり取りをしていたら、シルヴィアの父で現ローランズ公爵のデイヴィットと母のナターシャ、それから妹のベアトリスも応接室に到着していた。


 応接室は一気に人が増え、賑やかになる。



「シルヴィ、お帰り。婚約破棄の件は聞いた。お前は悪くない。気にするな」


「シルヴィちゃん、お帰りなさい。無事に帰ってきてくれて安心したわ。私達の可愛いシルヴィちゃんを傷つけるなんてどうしてやろうかしら? 精神的に疲れたでしょうからしばらくゆっくりしなさい」


「お父様、お母様……」


(フィリップ王太子殿下に婚約破棄された私なんて、お父様達からすればお荷物でしょうに二人ともそんなことは仰らないのですわね……)


「ルーク殿。シルヴィアの父、デイヴィットです。この度はシルヴィアがお世話になりました。シルヴィアがいないと判明した時、変な事件に巻き込まれたのではと焦っておりましたが、貴殿から連絡を頂いて我々家族は安堵致しました」 


「閣下達ご家族の心配は僕にも理解出来ます。それで、僕は閣下にお話があるので後ほどお時間を頂いてもよろしいでしょうか? 閣下と二人で話したいことがあるのです」


「今日は一日屋敷にいるので、構いません」


「シルヴィちゃんったらあの王太子に婚約破棄されたと思ったら早速こんな美青年のお世話になるなんて、流石私の娘ね。ルーク様、私はデイヴィットの妻でシルヴィアの母のナターシャです。よろしくね」


「此方こそよろしくお願いします。シルヴィはお母上似なんですね」


 シルヴィアはナターシャと同じく豊かに波打つストロベリーブロンドの髪に紫の瞳の美女である。


 ナターシャとシルヴィアが並べばまるで姉妹のように見える。



「ルーク様、初めまして。私はシルヴィお姉様の妹のベアトリスですわ。私は15歳なので、お姉様とは三歳違いになります」


 ベアトリスは父親似で、柔らかなミルクティー色の髪にエメラルドグリーンの瞳だ。



「ルーク様、はじめまして。ぼくはダニエル。8歳です。ルーク様は姉様の旦那様候補なの?」


 ダニエルはベアトリスと同じくふわふわとしたミルクティー色の髪に、シルヴィアと同じ紫色の瞳の美少年である。


 ダニエルは無邪気にとんでもないことを発言したので、シルヴィアは慌てて窘め、ルークに謝る。


「ダニエル、何てことを言うの!? ルーク様、すみません」

 

「ルーク様はそのつもりでいるような気が致しますわ。シルヴィお姉様を見る目が優しいですし」


「そうね。私もベアトリスちゃんと同意見」


「ベアトリスとお母様まで……!」


「僕もシルヴィの旦那様になれたらいいなとは思っています」


「まぁ! 楽しみね」


「こんなに素敵な方が未来のお義兄様になったら私も嬉しいですわ!」



 ルークはシルヴィアの家族に好意的に受け入れられた。 


 ベアトリスがもうすぐ語学のレッスンの時間ということで一旦解散することになった。


 シルヴィアが昨夜の埋め合わせとして自室でダニエルと読書をする間、ルークとデイヴィットはデイヴィットの執務室で二人で話をする。

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