並なトマト
桜の木の下には死体が埋まっている、こう言った語り口は、皆様よく耳にされるのではないかと存じます。
ですが、其処に誰が埋まってるのか……その点は、あまり語られることのない話なのではありませんか?
実を申しますと、私奴はそれが誰であるか……知っております。
そうですね。本日は特別に、それが示されている資料をお見せしましょう。
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まずは、こちらの和歌。これが謎を解く手がかりとなります。御覧くださいませ。
【伊勢の明日 越後の宴 陸奥の道 伊予の浦辺に 伊豆の味かな】
こちらの、旅情を詠う和歌。そして次はこちらの、炭で文字が書かれた木簡となります。
【炭手 奈良 不死】
たかだか、これだけでございます。ですが……これが、この桜の木の下に埋まっている人物を示しているのですよ。
さぁさ、お考えくださいませ。
(推理用スペースを用意しました。こちらの下には大ヒントがありますゆえ、ご注意くださいませ)
おや、ヒントが必要ですか。そうですね、例えばですが……先の句を私奴が作るのならば
能登の花 石見のアロマ 肥後のハゲ
と、いったところでありましょうか。
さぁさ、もはや正解は目前でありましょう。そうでなければ、ゆるりと推理のひとときをお楽しみくださいませ。
(この先、解答となりますゆえ、ご注意くださいませ)
お分かりになられましたでしょうか?
その通り、答えは島津豊久殿であります。
解説は必要でありましょうか?
必要ありませんな。五十音を眺めれば、すぐにわかる話ですので。
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そうそう、島津豊久殿と言えば関ケ原の戦いにおいて戦死されたとされる方であります。
墓所もあるらしいのですが、異説も存在しており、真偽は定かではありません。
そして島津豊久殿の名を、今回の出題方式で置換すると【すみでならふし】となりますのはご存知の通りかと。
そちらをアナグラム、要は並び替えでありますが……それを行ってみますと【ふしですらなみ】
不死ですら並。いかにもな薩摩武士を思わせるものではありませんでしょうか。
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ちなみに、桜は【しけり】となります。
皆様各々が趣深い【推理をしけり】。
そうであれば幸いであります。では、お後がよろしいようで。