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月桃館503号室の男 ~黒衣の刺客~  作者: 山極 由磨
終章・そしてそいつはやって来た。
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そしてそいつはやって来た。その1

皇紀835年干月7日 

拓洋市御座区新領総軍総司令部特務機関長室 


「ちょっと、文句を言わせてもらえませんか?少将閣下」


 俺は椅子に座るよう促されたにも関わらず、思わず少将閣下に詰めよう様に机の前に立った。


「オムロとクズギの始末の件か?」 


 高そうな椅子に深々と座り、黒い長靴を履いたおみ足を優雅に組みつつ、こともなげに聞く閣下に、さしもの俺もカッカと来て。


「オムロは陸軍大臣補佐官、クズギは宰相官房軍事顧問。あのクサレ悪党どもの行き先としちゃちぃと生温過ぎませんか?」


 ぞっとする様な冷笑を頬に浮かべた閣下は。


「私が決めたことでは無いし、そもそも私にその様な権限はない。軍上層部の決定だ。無論、私からの情報を参考にはしているだろうが」


 そして、またあの部屋の気温が一気に氷点下まで下がりそうな声色で。


「それとも、軍法会議にでも掛けて欲しかったか?そすれば貴様の所業も公けに成るぞ、それでも良かったのか?」


 たしかに。

 さらに被せて。


「因みに、奴らの溜め込んだ金のすべては新領総軍特務機関の秘密資金となった。オムロとクズギが一切の秘密の保持と軍中央への移動を条件に私に差し出したのだ」


 思わず口に出てしまった。


「コリャ、全く持っての恐れ入りましてですな」


 少将閣下の為されたことは、つまりは恐喝。2人が溜め込んだ金を過去から今までの悪行をちらつかせ脅し取ったのだ。

 そもそも、俺を自分の部下にしたのも、裏金を撒き上げるためだったのかも??

 悪党の上を行く悪党だ。これが名門貴族の御令嬢がやる事か?

 実に・・・・・・。


 愉快だ。


「それに、今の陸軍大臣は『軍規の鬼』と恐れられるトノベ・ノ・ホツオミ大将、宰相は『陰険卿』と悪名高いシロシミ・ノ・ロハン公爵だ。共にさぞかし働き甲斐のある栄転さきだろうよ」


 そう楽し気に仰る少将閣下。なるほど、これは理想的な転属先だ流石我が上官。そつが無い。

 溜飲を下げた俺がニヤ付くのを我慢していると、少将閣下は思い出したように言いだした。


「あ、そうそう、もう一つ、貴様に関係する人事の話があってな」

「なんです?」


 そう問うなり少将閣下は「通せ」と命じると、あの巻角の可愛らしい当番兵がもう一人、カンカン帽を被り白い寛衣ブラウスに濃紺の女袴スカート姿の、まるで女学生の様な少女を連れて来た。

 少将閣下は当番兵に下がるよう命じた後、少女に「帽子を取ってお前のご主人に挨拶なさい」と促す。

 帽子の下から現れたのは、適当にブチ切った様な黒髪の間には小さな黒い角が2本、黒い瞳の大きな猫目は恥ずかし気に伏し目がち。


「なんであの娘がここに?」


 俺は実に頓狂な声で少将閣下に問う。


「軍の法務に問い合わせたのだが、彼女の一連の行為はオムロ一味の欺瞞によってなされた物だからして、成人していない彼女に何らかの責任を負わせることは難しいそうだ。かと言ってこのまま市中に放り出すわけにもいくまい。そこでだ、自身に身の振りようどうするかを聞いてみたら、姉の恩人である貴様の役に立ちたいとの言うのでな、特務機関の傭人として雇用する事とした。本日より貴様に付ける。能力は貴様も身に染みて把握しておるだろう。良かったな、可愛い部下ができて」


 何をどう言うべきか?まごついていると娘の方から言い出した。


「吾が名はシスル。エルツァンポ郷のおさブドゥンが娘だ。大恩人には一生をかけてその恩に報いるのが一族の掟。姉ぇの最後を看取り弔いまでしてくれた汝は吾がの本当の大恩人だ。何でも言ってくれ何でもしてやる」


 そうか、この娘の名はシスルって言うのか。ふ~ん。


 月桃館、部屋まだ空いてるだろうか?


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