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月桃館503号室の男 ~黒衣の刺客~  作者: 山極 由磨
第四章・恩讐の終着点
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恩讐の終着点 その4

 突然、鋭いまなざしに戻り、涙を振り払い、手甲に手を添えると何かを引っ張り出し墓石の向こう目掛け投げつける。

 銃声のあと、左腕に手裏剣を生やした帝国陸軍の兵士が、短い悲鳴を上げ墓石の陰で15式歩兵銃を地面に落とした。

 周囲から装填音が聞こえ、自分たちが囲まれていることに気付く。

 背中に手をやり、20式将校銃を構える。気が付けば娘の両手の指には8本の棒手裏剣。


「トブネズミは当然だが、ネズミを狩り損ねた野良ネコも殺処分だな」


 墓石の間から現れたのは、防暑略装姿のクズギ少将閣下。終戦間際から太り始めていたが、今では随分恰幅よろしくなられまして。


「これはこれは少将閣下、御自らご出陣とは恐れ入りますなぁ」

「貴様がきっちりくたばる所を確認せん内は、おちおち眠れんとオムロ閣下が仰せなのでな、儂が見届けにきたのよ。それにしてもさすが『インチキ隊長』の異名も伊達では無いな。この田舎娘をコロリと口車に乗せ寄った」

「口車は酷いなぁ。全部本当の事ですよ。インチキなのはお宅でしょ?」

「面白そうだから口から出まかせを言って、お前を姉の仇に仕立ててみたが、まさかここまで真に受けるとは。さすが蛮族、驚くほど知恵が足らんわい」


 クズギが片手を上げる。銃口が一斉に此方を向いた。


「墓石の陰へ!」

 

 全自動で20式を撃ちまくりながら墓石の陰に飛び込む。娘も手裏剣を投げつけあの素晴らしい倒立前転で墓の陰へ。

 無数の7.7(ミリ)弾が殺到し、墓石を打ち砕く。

 舞い散る石の粉や土煙の中。背中をぴったり墓石に寄せた娘は、俺の方を見て。


「吾があほうだった。すまない」


 右手の茂みから回り込んできた兵士が現れる。娘は素早く手裏剣を投げ腿に命中させ動きを奪う。俺は俺で墓石の陰から出て来たヤツに一連射叩き込む引っ込めさせる。


「そんな話はあとあと、此処を切り抜けなきゃな」


 そう言ってまた現れた兵隊の脚元に7.5(ミリ)を叩き込みつつ、懐から信号銃を取り出すと夜空目掛けぶっ放す。

 白い煙の尾を吹いて内がったのは彩光弾。パッと明るい赤い輝きを放ちつつゆっくり降りてくる。次弾を装填しまた空へ、今度は緑の光で暗闇を染め上げる。


「わざわざ自分の居場所を教えてくれるとは、世を儚んで死にたくなったか?」


 クズギがそうほざいて馬鹿笑いするので、俺もそれに被せて笑ってやり。


「こっちの位置がおたくらに分かったって事は、向うにもお宅らの位置が分かったという事ですよ。さっさと逃げたほうが良いですよ、閣下」


「なにをバカな」とクズギが言ったその時。甲高い風切り音が夜風に乗って聞こえたかと思うと、徐々に大きくなりやがて鼓膜を散々に打ち据えるようになった瞬間。

 目の前の地面が墓石と共に吹き飛び、強烈な衝撃波が砂埃を巻き上げものすごい速度で辺りを駆け巡る。

 背中を預けていた墓石が倒れそうになり思わず飛び退く、娘も地面を回転して崩れる墓石から逃げ出した。

 濛々と立ちあがった土煙が晴れると、そこに現れたのは巨大な穴。

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