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月桃館503号室の男 ~黒衣の刺客~  作者: 山極 由磨
第二章・黒衣の刺客現る
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黒衣の刺客現る その3

 階段を駆け下り『艶楽書院』を飛び出すころにはゴロツキ共の喚く声が迫って来るのを感じた。

 店を物色する客や呼び込みの兄ちゃんを吹っ飛ばし跳ね飛ばし、物売りの屋台をひっくり返して、全速力で紅楼街の通りを駆け抜ける。

 ゴロツキ共もぴったり後を付けてくる。

 一人が先回りをして俺の前に蛮刀を振りかざし立ちはだかった。

 咄嗟に麺売りの屋台の酢の瓶を奪い取り、邪魔者めがけて投げつける。

 穀物酢が目に入りのたうち回るゴロツキを念のため蹴り上げてさらに駆ける。

 紅楼街を抜け出し、華隆街に入った時だった。背後から銃声。デブが追跡に加わったのか?

 一瞬立ち止まり、銃口を奴等に向ける。

 20式将校銃。7.5(ミリ)弾を毎分800発の速さではじき出す拳銃大の超小型機関銃。

 切り替えを安全位置から単発にして、ゴロツキ共の手前にある消火栓に狙いを定め一発叩き込む。

 古くなった消火栓は狙い通り大量の水をゴロツキ共にぶっ掛ける。

 これである程度の足止めはできる。

 とはいえ追手はあいつらだけとは限らない。比較的安全な場所に逃げ込まねば。


 そこで俺が逃げ込もうと考えたのが『連合租界』だ。

 あの戦争の後、停戦協定によりそれそれの海外領土の首都に置かれる事となった各勢力の外交や交易の拠点。

 この拓洋には華隆街の南側に連合と同盟のそれぞれの租界が置かれていて、ある程度の治外法権が認められた各勢力の小さな領土となっている。

 敵対勢力である同盟の租界は論外として、一応味方の連合の租界なら身分証の無い奴は『租界憲兵隊』が追い返してくれるだろう。

 因みに、布切れ一枚腰に巻いた俺も怪しい奴として身柄を拘束されるだろうが、総司令部に身元を照会してもらえれば無事な、ハズ。


 念のため大通りは避けて路地を選んで租界を目指す。ここまでで奴等の追跡は無し。

 あとこの角を曲がれば華隆街と租界を隔てる通りにでる。と、いう所まで差し掛かった時。

 狭い路地に人が折り重なり俺の行く手を防いでいた。全員、うなりを上げてのたうち回っているか気絶してピクリとも動かない。

 気絶した人の山の中から一本腕がダラリと垂れ下がっている。手には六連発。あのデブだ。

 先回りし、ここで待ち伏せしていたのだろう。だが、別の誰かに襲われ叩きのめされた。


 首筋に痛いほどの殺気を感じ、振り返ると、俺が今さっき駆け抜けて来た路地に小さな黒い人影が佇んでいる。

 手には、闇夜に光る長方形の刃物。ゆるかに内側に反った刀身の先端はかぎ状に折れ曲がり、そこから地面に血が滴り落ちていた。

 俺の感が『味方では無い』と囁いた瞬間。それは此方目掛け駆け出して来た。

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