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07



 心優しい攻略者は、絡み倒すヒロインの話に延々と耳を傾け、慰めてくれた。ついでに、何度か手持ちの水筒らしき物をすすめていた。水です、と。ヒロインはそれを受け取ることなく、何度も酒瓶に口をつけ、最後は飲み干した。


 水は飲んでもらえなかったものの、酒が無くなったのでもう帰るだろう、と安心した攻略対象。だがしかし、ヒロインは絶対に帰らない、と宣言して立ち去ろうとしてしまう。


 このままでは流石にマズイ、と攻略対象はヒロインを仕方なく自宅へと連れ帰った。


 だが、それが間違いだった。


 攻略対象がヒロインをベッドに運ぶと、ヒロインは攻略対象を押し倒した。


 ヒロインの暴挙を止めようと、必死に呼びかける攻略対象の衣服を剥ぎ取り、自分で服を脱ぎ捨て――。


「あああああああっ」


 よみがえった、自分ではないものの記憶に、羞恥心が爆発していく。


 顔を真っ赤に染め、必死に記憶を締め出そうと首を左右に振った。


「あ、あのぉ……」

「あああああああっ」

「す、すみません……」

「いやぁああああっ私のへんたいぃいいいいいっ」


 小さな声が合間に入っているが、気づかない。


 ついには両手で頭を抱え、ぼふっと、倒れこんだ。


 そのまま右へ左へと転がりまわる。


 素っ裸のまま、ばたばたと足をばたつかせ、転がりまわる佐也加。女としてどうかとは思う姿だが、一人ならばそれもまぁ許されたかもしれない。しかし、その部屋には一人ではなかった。


 先ほどからずっと声をかける存在がいる。それも、すぐそばに。


「あの、す、すみません……服、服をぉ……」

「うぁあああああああっ」


 弱弱しくも訴えるが、佐也加の耳には届かない。


 ついには己の寝ていた柔らかい寝具に、頭を打ち付け始めた。


 柔らかい寝具は、まるで子供の全てを受け入れる母の胸のように優しく、佐也加の頭部を受けとめる。


 ふわふわふかふか。


 恥ずかしさに悶えていた佐也加の意識が、少しずつ、少しずつ、心地よさに浸食されていく。


 真っ赤に染まり、作画崩壊起こしそうだった顔が、スライムのように溶け、新たな作画崩壊を起こし始めた。


「あふぅう……なにこの感触……は、初めての感覚ぅう……」


 涎を垂れ流し、すりすりと頬を寄せる。


 ふへへへ、と奇妙な笑い声を零す姿は、どう考えてもヒロインからかけ離れているのだが、そんなことに気が回らないほどの魔性の感触。


 もみもみさわさわを繰り返し続けた佐也加は、次の瞬間吹き飛ばされた。



▽トドは乙女ゲームにおけるヒロインが、どういう存在だったか忘れてしまった……。


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