007
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糖尿病、また予備群に対し、アメリカや欧州ではデータに基づいた糖質カットを勧めている。
一人一人の注意力に差があるため、ろくに成分表示を見ない人もいるが、概ね効果をあげている。
アジアにおける米の消費量ナンバーワンのバングラデシュでは栄養不足で体を悪くしている人が多い。
日本とアメリカの生活習慣病の患者数グラフは交差しようとしている。
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召喚されて5年目に入った。
「あまっ」
「甘いですね」
「気持ち悪い」
「歯が溶けそう」
ロウ、
ヨーダ、
プウ、
八木さんの順だ。
どう自動翻訳されているのか、八木と山羊は違うらしい。
日本語って不思議。
八木さんというのは、魔法省トップの山羊角美女。
俺を召喚した張本人。
彼女の名前が長い上に俺の日本語舌では発音できない語がふんだんに使われていて無理だった。
山羊角になぞらえて八木さんと呼ぶ様になったのだが、山羊とは聞こえてないらしい。
八木は発音そのまま認識されている。
自動翻訳って不思議だね。
ヨーダは同い年でロウとプウは少し下だったのだが、山羊さんは少し上だった。
つか、ヨーダよ。
お前、年齢3桁とかじゃないのか? ゴブリンディスティニーってなんなんだ? 沢山のそのシワがディスティニーなのか?
八木さんは俺を召喚してからずっと忙しかった。
俺が難題ばかりお願いしていたせいだ。
最近、金塊が増えて、俺の無駄な魔力をズビズビ保存して使うようになっているため余裕が出てきた。
これホントに黄金なんだろうか。
地球ではアルミニウム電池なるものの開発をしていたが、黄金が電池……いや、電気じゃなくて魔力だが。
「あっ、魔王様、なんか、胸の辺りか、こう…… まさか!毒?」
と、プウが騒ぎ出した。
テンションおかしい。
「私はなんだかクラクラします」
「うむ。私もだ」
ロウとヨーダである。
「わたしは……もう少し食べてみたい気分になってきました」
八木さんはソワソワしている。
「ちょっと入れ過ぎたかも」
俺も何か冷や汗出てきた。
俺達が食べたのはパンケーキだ。
砂糖の代わりに黒糖を使っている。白糖に精製する方法は知らなかったもんで。
日本にいた頃から砂糖をあまり食べてなかった俺と、全く食べたことのなかった彼らの反応がこれである。
「うぉっ、ウォオー」
「プウ落ち着け」
流石熊である。
蜂に刺されて痛みに叫びながらもはちみつをやめられない熊である。
狼より雑食だし。
これ蜂蜜より糖度高いだろうし。
米はちゃんと勇者の目に留まり、増えている。
小麦畑も増えたみたいだ。
奴隷商売も好調。
しかし勇者がいるため、そのうち奴隷解放イベントがあるよとお得意先には言ってある。
奴隷の扱いは国によるが、比較的安定している古代ギリシャ風奴隷制の国から、暴力上等のヴァイキング風奴隷制、攫われて売られて自分を買い戻す事も出来ず死ぬまで働かされている近代黒人奴隷制まで、様々だ。
酷いとこに勇者が行ったら解放イベント起こるから勇者の動向を監視するように伝え、その情報を俺も貰っている。
南側の国のお得意先はすでに奴隷商売から手を引き、奴隷商に対して貸し付けを行っている。
農場が広がり続けているので、お得意先ではない奴隷商は生産拡大の為に借金してでも奴隷を買い集めている。
勇者がきたら破産して資産全部奪われるんだけどね。奴隷商は様々な利権や販路、市場を持っていて、それらはお金を積んだだけで売ってもらえるものではない。破産となれば奪われる他ないが。
美味しいです。
お得意先は農場の地権を握っている。
奴隷を使う農夫や貴族達が賃料を払ってこれを借り耕している。
酷いもんで、◯年契約とかで貸し出しており、途中破産してしまっても支払いは継続、または違約金払って解約しないといけない。
ああ、転生ものとかに出てくる元貴族の少女ってこうやってうまれるのか。
利益は出ている。だからこそ借金なんぞしている。ノるしかねぇ!このビッグウェーブに!!
そしてみんな沈むのだ。
俺はかなりの悪人になっている。
……いや、魔王だったわ。