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01. 古の都からの使者

 空気が少し、変わった気がした。

 大地の境界を繋ぐ門を抜けてから、さほど時間は経っていないはずだ。人間が魔族である自分たちを長く“こちら側”へ置いておくとは思えないから。


「……太陽の力が強いな」


 完全に独り言のつもりだった。しかし、近くに人影がある以上そうもいかない。


「ご気分が優れないようでしたら、我々だけで先に……」


 そばに控える男が真剣な面持ちで声をかけてくる。どうやら体調を崩したものだと勘違いさせてしまったようだ。余計な心配をかけないように、できる限り明朗な声で答えを返す。


「いや、大丈夫だ。お前たちは平気か?」


 ここは人間界──、“魔族”と呼ばれる人々が住む魔界とは異なる魔力が流れている地だ。

 魔力とは、この世界を支えるかけがえのない力。人間界は太陽の性質を持つ力が強く、魔界には月の性質を持つ力が強く流れている。まったく逆の性質をもつ二つの力。慣れるまで身体に影響が出ることもあるらしい。

 だが目の前の男は「心配ない」という表情で会話を続ける。


「私たちは慣れていますから。人間界へは何度も訪れておりますので」


 彼らは魔界──いや、自分が住む街の中で有数の精鋭たちだ。今や敵国同士に近い人間界へと忍び込む機会も少なくはない。


「すまないな。お前たちにばかり危険な役目を任せてしまって」

「街をお守りするのが我々の仕事です。どうかお気になさらず」


 微かに笑い、男は軽く一礼を返す。

 再び前に向き直した彼は、そのまま言葉を続けた。


「それに、今回はもっと大切な方をお守りする任務です。そんな職務に関われて光栄ですよ」


 何よりも危険な場所に眠るのは、この世界にとってかけがえのない宝。

 他の何にも変えることのできない、確かな存在。


 人間界を訪れた目的。

 それは、“彼女”を迎えるため──

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