Ⅵ鬼崎 勇次⑤
2年B組、俺がこれから一年間お世話になるクラスだ。まだ、他の生徒は新入生顔見せから帰ってきてないらしく2学年廊下に人の気配はない。この様子だと教室に一番乗りだろう。
なんかこう、誰もいない空間ってふざけてくなる時あるよな。
――――ザッ
「鬼崎勇次二等兵ただ今救護室より帰還しました」
俺は、いきよいよくドアノブをつかみ、そのままのいきおいでドアをスライドしてサーイェッサーをかました。
「おかえりなさい。鬼崎君」
いたよ人が。終わったよ人生がサーイェッサー
「朝からテンションが高いね。何かいいことでもあったのかい?」
「なに、人は一人で助かるだけなのさ」
「はぁ?」
「あーこのネタがわからないなんなんてまだまだ未熟だな。もっと自分を磨け昌輝よ。西尾維新さん尊敬してます!」
「心に留めておくよ。救護室から来たということは、鬼崎君、新入生顔見せをさぼったんだね」
「まあな、その様子だとお前もさぼったのか昌輝よ」
このさわやかイケメン君の名前は豊田 昌輝交通科に所属していて、一年の時に一緒のクラスだった。いつもにこにこしていて何を考えているのかよくわからないやつである。
「まあね、あんまり人ごみの多いところは、好きじゃなくてね」
「イケメンの御曹司君は大変ですね~」
「はは、それほどでもないよ」
こいつ開き直りやがった。
そう、こいつの親はみんなも知ってるだろう日本の超大手企業トヨタの社長である。その一人息子なもんで両親からは蝶よ花よとかわいがられているようだ。そして、こいつのすごいところは他にある、こいつは、乗り物なら何でも乗りこなす才能があるのだ、ハンドルとエンジン、そしてアクセルとブレーキのあるものならたとえそれが初見の乗り物でも、ものの15分ほどあれば乗りこなせてしまうのである。
お互い名家の出身ということで気苦労も多く共通する話も多かったのでなんとなく仲良くなった。
「にしても、2年生でも同じクラスなんて驚きだね。これからもよろしく頼むよ。」
「ああ」
そうこうしている間にぞろぞろとここのクラスであろう人たちが教室に入ってきた。
知った顔半分、知らない顔半分といったところか
そんな中に見知った顔が一人こっちに近づいてきた。
「はぁ、勇次様。結局さぼったのですね。あれほど言ったのに」
「まあ、そういうな。でも、さぼったかいはあったぞ」
ちょいちょいとはるかに手招きをする。
「というと?」
春香が耳をこちらに寄せてくる
うーん
なんだかいけない女の子の匂いが春香からしてくるな。春香もしっかり女の子として成長している証拠だな。今日は、お赤飯を炊くとしよう。俺は、三杯は食べちゃうゾ☆彡
変な間に春香が首をかしげる。
「あぁ、済まない。どうやらこの学校にアメリカ人の留学生が来るらしい」
俺は、誰かに読唇術で読まれるのを防止するために手で口元を隠しながらささやく。
「その話ですか、それなら先ほど生徒会の方でも大きな話題になっていましたよ」
「なに!さすがは生徒会だな」
「さらに、その生徒どうやらうちのクラスに入ってくるみたいですよ」
「なんと!」
突如横から目を輝かせて突っ込んできた満は、どうやら聞き耳を立てていたらしい。
「やべーまさかのこのクラスに来るのかよ。もっとおめかししてくるべきだったかこれ」
窓ガラスの前で髪を細かくいじってる満をみて自分とのレベルの違いを理解できないやはり手遅れな奴なんだと思い知らされる。
「いえ、今日ではなく明日からこちらに来るみたいですよ」
「え?よかったー明日は早起きしなきゃっ」
「お前は、初デートの女子中学生か」
しかし、俺も明日はワックスぐらいはつけていっていいかもしれんな。あの高校生にもなったんだからと買ってはみたもののいまいちつけ方がわからずに棚の奥にほこりをかぶっているやつを。
どうやら、俺も手遅れ一歩手前らしい・・・
あれ?急に影が
突然できた大きな影に顔をあげてみると
「よう、勇次なんだ2年生にあがれたのか」
「クククク」「ヘヘへへ」
「あ、えーと。ど、どう、どうてい君だっけ?」
あと、取り巻き1と2(名前は知らない)!
「堂本だ!堂本 剛だこらぁ。あんまり、俺をなめるなよ屑が」
いかにも悪そうな面相、そして制服からもわかるしっかりと隆起した筋肉。そして何よりもこの巨体からくるこの威圧感こいつは、一年の時からいろいろと突っかかってきた男で俺と同じ近接戦闘科に所属しており一年の時には時折任務にも就いていた。
「いきなりのご挨拶だね堂本君」
いきなりのけんか腰に昌輝が割って入ってくる。
「ブーブー乗ることしか能がない奴は引っ込んどけ」
おっと、ただ盛り上げただけにしか過ぎないね。ここは、早急の解決をはかるべきだな
「えーと、ドーモ君だっけ?ちょっと一回落ち行きなよ」
「だれが、N○Kのマスコットキャラクターがこらぁ。いい加減にしろよ。俺はなお前みたいな落ちこぼれにご丁寧に助言をしに来てやったんだよ。悪いことはいわねぇ早く生産科にでも移った方がいいぜお前には銃よりも鍬がお似合いだ。あ、お前の武器は抜けねぇ刀だったかじゃあ、鍬と一緒だ。」
―――ぎり
おっと、春香がもう限界にきてるな。皆さんここから血を見ることが出来るかもしれません。心の準備を。
アーーーーーーメン