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俺の怠惰は世界を救う。  作者: 秋 廻
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Ⅳ鬼崎 勇次③

もう、登校時間ぎりぎりとあって高校へとつながる一本道を通る生徒はせわしない。

きらきらと輝く海を横目に歩きながらこれからどこに行こうか考える。

先日送られてきたメールには、新入生顔見せには極力参加することとあったので、絶対出席しろというわけではない。よって俺が行くことはまず、ありえない。  

「ほらほら門閉めるから早く入りなさい遅刻してしまうよ」

門警のおじさんが気楽に話しかけてくる。

ああなんて優しい顔のおじさんなんだこれがまさに朝の顔というやつに違いない

門警まで強面のがちむちとかだったら自主退学まであるからねこれ。

「ほーい、今はいりますよー」

「そんなに眠そうな顔しないで、シャキッとしなさい」

「へいへい」


「うーんまだ眠いや」

5人横に並んでも通れそうなおおきな門をくぐりながらそれに負けないぐらいの大きな背伸びをする。

こうなったら行くところは一つしかないだろ

みんなが向かう正面の玄関を回れ右して一般棟を後にした。



「こんちゃー」

「勇次てめぇノックをしろっていつも言ってるよな」

「あ、そうでした。すんません。さより姉さん」

―――ゴン

「誰がさより姉さんか誰が。暁先生だ。」

くぅ~相変わらず良いげんこつしてる危うく俺の目が覚めるところだったぜこれから眠りに入ろうとしてるのに覚めるわけにはいかねぇ


ここは、メディカの学生が主に使用する第7棟で今、俺がいるのは第3救護室だ。

そして、この腰まで伸びた、真っ直ぐな黒髪に眼鏡をかけ煙草をふかしてる人は暁さより先生メディカの教諭である。すらっとした長い脚、締まるとこはきっちり締まっており出るところは我こそはと出ている完璧ボディノ持ち主で言葉遣いはちょっと悪いが根はやさしくてこの人とは高校一年の時から何かと世話をしてくれた。

「さ、暁先生。またベット貸してもらっていいすか。」

さより姉さんとまた言いかけたその時に放たれた殺意におどけながらもいつも通りのやり取りをかわす。

「あのなぁ、ここは休憩所じゃないと何度言ったらその小さい脳みそで理解する。というかこの後新入生顔見せがあるんじゃないのか」

ぷはーとたばこの煙を換気扇に向けて吐きながら非難の目を浴びせてくる

「いや、それはあれがあれであれです」

「あれしか言ってないぞ。君たち上級生にとってこれから上がってくるものを見ることは非常に大事なことなんだ。今後頭角を現すものは今のうちに目星をつけておきたいだろ」

「あ、それは俺があれなんで大丈夫です」

先生はすっと顔を曇らせて顔をしかめる

暁先生には唯一俺のことをすべてではないが話しているので俺の言いたいことが少しはわかるのだろう。口にくわえていた煙草を携帯灰皿の中にねじ込み。さきほどとは違う真剣な顔をして俺の顔を見る。

「ここ護国高校は、入学して一年で戦場に立てる技術をすべて叩き込まれる。それからさらに一年で専門性を磨き戦場において最前線に立てるエリートを育成する。

そして、めでたくか不幸か3年生となった暁には、プロとしてそれぞれ第一線に仮派遣されていくものもいれば己の道を模索していくやつもいる。

この学校に入ったのなら己を磨き続けなければならない。誰のためでもない己自身のためにそしてその経験は将来自分の命を守ってくれる。そのためにこの今という時間は非常に重要だ。鬼崎お前は、一年の時基礎戦闘科目を受けただけで実践訓練に出たことは一度もないみたいじゃないか」

「まあ、はい。俺は出る気満々だったんですがなぜだかおかしな理由をつけられて教官が受けさせてくれなくて・・ハハハおかしな話です」

「・・・・お前はこのままでいいのか」

「教官という立場でこんなことしかいえないのは本当に申し訳ないが。鬼崎家は日本の守り刀政府とのつながりは非常に強い。そしてこの学校も国に運営されている。よって国からの干渉は避けられない。そいつらを上司にもつ我々は上からの指令は守らねばならない。

お前の親と学校に一言言ってやりたいのはやまやまなんだがそれが出来ない。むろん悔しいが私もそうだ。しかし、鬼崎家であり、当主の息子であるお前なら話が違うお前がその気なら」

「先生、俺は大丈夫ですよ」

「しかし、鬼崎勇次には一切の戦闘行為及び今後に影響を与えるコネクション作り等を一切禁ずるなんてあまりにも

「先生!これ以上はやめてくださいこれ以上は先生の立場が危うくなってしまう。誰が聞いてるか分かりませんよ」

暁先生ははっとして高まる気持ちを抑える。

「すまない。教官である私がつい冷静さをかいてしまった」

「いえ、ありがとうございます。しかし、先生自分は意外と気に入っているんですよこの生活が。怠惰な生活を親から許されてるなんてこの世界で俺だけなんじゃないですか。これはかなりの俺得ですよ。じゃあ、俺は親の教えに従ってひと眠りしますね。」

無理やりな話の切り方だったかもしれない。しかし、これ以上の話をする気は俺にはない。ここは大人しく引いてほしい。

「・・・あぁ、いつものところ使っていいぞ」

鬼崎勇次、本当にそんなこと思っている奴はそんな目をしない。感情も一切入ってない虚無に満ちた目。どこを見つめるわけでないその目は時に私ですらゾッとする。

「くそ」

――ガン

先生が蹴った机の音が虚しく部屋に響いた。


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