指導者
深夜が眠りについてからの父親と母親の会話になります。
まさか、この年で大嵐を使うとはな⋯⋯
俺は息子の才能に驚いている。
それは妻である深冬も同じ気持ちだ。
今はスヤスヤと寝ている息子だが、数分前までは天災級魔法である大嵐を発動させていたのだ。
「なぁ⋯⋯どうする?」
俺は具体的な言葉も含めず、深冬に問いかけた。
「どうする?って言われても⋯⋯」
俺達は絶賛悩み中だ。
それは、息子が天才過ぎてどうすればいいか分からないという贅沢な悩みだ。
「俺が魔法を指導したい気持ちはやまやまなんだが、如何せん体質上教える事が厳しいからな⋯⋯」
「私だって教えたいけど、風魔法に適正無いし⋯⋯」
俺達夫妻は、魔法を教えたくても教えられないという立場だった。
それに深夜はまだ二歳だ。ろくに言葉も話せないのに指導をするのは、厳しいと言わざるを得ないだろう。
深冬が使える魔法を片っ端に見せつつ教えるという手もあるが、それだと深夜に、深冬の使える属性の魔法適正が無ければ意味が無い。
「家庭教師でも雇ってみるか?」
深夜は二歳児とは思えない程しっかりしている。他人に指導を任せる事に心配は無かった。
それに指導するプロならば、あまり言葉が話せない子供相手でも、教える事が出来るだろう。
だが、家庭教師を雇うのには一つ問題があった。
「紅夜?天災級魔法を扱える家庭教師の人ってどのくらい居ると思う?」
そう、これが問題なのだ。
深夜が使った魔法は天災級魔法なのだ。天災級魔法を扱える人間は、基本的に裏に存在している。
家庭教師という表舞台に立っている人間に、天災級魔法を扱える人は居なかった。
「「はぁ〜」」
俺と深冬はついついため息をついてしまった。
俺はふと、とある事を思った。
深夜には魔法が見えている。これはもう揺るぎない事実だ。
俺も魔法を見る事は出来るが、魔法の本質までは見抜けない。
俺が深夜に見せた魔法は確かに大嵐だが、本質は見せていなかった。
しかし深夜が使った大嵐は、俺の使った本質を隠す様な大嵐ではなく、紛れもなく本物の大嵐だった。
魔法の知識を持っていない子供が見た目に騙されること無く、しつかりと本物の大嵐を発動したのだ。
つまり、深夜には魔法を見る事だけではなく、魔法の本質を見抜く事も出来るのではないのかと俺は思う。
おそらくだが深夜は、贈り物を持っている。
だからこそ、幼少期に魔法の扱い方を叩き込まなくてはいけない。
ならば俺は腹を括ろう。
奴らも贈り物持ちだと知れば、興味を持つだろう。
「なぁ深冬」
俺は先程の表情とは一変させ、真剣な眼差しで妻の名前を呼んだ。
「んー?⋯⋯どうしたの?」
俺の表情の変化に気付き、深冬の表情も変わった。
「裏の人間に深夜の指導を頼もうと思う」
「⋯⋯本気で言ってる?」
俺は何も答えず無言で深冬の目を見続けた。
「はぁ〜どうせ駄目って言っても聞かないでしょ?なら私も腹を括るよ」
深冬は裏の人間を指導者として雇う事を渋々ながら、了承してくれたようだ。
「アテはもちろんあるよね?」
「もちろんだ」
俺は間髪入れずにそう答えた。
「なら、私からは言う事はもう何も無いよ」
深冬はそう言い、寝ている深夜を撫で始めた。
俺は息子の成長が楽しみであるが、心配でもある。
この年で裏に関わらせてしまう事もそうだが、俺の家事情の事にも巻き込まれそうな気がしてならなかった。
だからこそ俺は守る力を手に入れなくてはならない⋯⋯どんな手を使ってもだ。
俺は改めて大切な人達を何としてでも守ると決意した。




