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父親の過去

しんやの父親の過去話となります。


早足で物語を進めた為内容が分かりづらいと感じる所があるかもしれません。

それに加え、視点変換をする場面も多々あります。

もし、分かりづらいと感じたら感想にて伝えてもらえると嬉しいです。

  紅夜こうやは名門如月家の次男だった。

  日本には名門と言われる家系がいくつかある。

  その中でも如月家は名門と言われる家系の中でも、エリート中のエリートだ。

 

  だからこそ、紅夜は自分が如月の家の人間だと思うと、はらわたが煮えくり返る思いをする。

 



  紅夜には二つ年上の兄がいる。

  その兄は、万人が万人認める魔法の天才だ。

  十五才にして五属性の魔法を操り、その内二属性は超級魔法を扱える。

  才能のある大人でも、三属性が使えれば良いほうだ。

 

  五属性を扱えるだけでも規格外なのに、超級魔法も扱える。超級魔法は歴史的に名を残す様な人物でも扱えるかどうか分からない魔法だ。


  こんな規格外な兄は、親と周囲の人間からは神童と言われ褒め上げられていた。

 

  一方弟の紅夜は、何度魔法を()()()も無属性の魔法しか使えず、その無属性の魔法も初級が何とか使える程度にしか成長しなかった。

  そんな紅夜は如月家の恥と言われ、親からは無用の長物と言われている。


  如月家当主である夜光やこうは、無用の長物である紅夜の存在を押し隠すように、部屋に拘禁していた。


  これは理不尽では無く、当然の判断だ。

  名門である如月家に魔法の才能が皆無の息子が居ると知られれば、他の名門に何をされるか分からない。


  紅夜はその態度が気に入らなかった。

  紅夜は自分の存在が如月家にとって邪魔であると分かっていた。しかし、部屋に拘禁されるのは我慢できなかった。


  自分も皆と同じ様な生活をしたい。

  学校にも行きたいし、友達と外で遊びたとも思った。


  紅夜のその思いは、日に日に強くなっていった。




  十四歳の時、紅夜は夜光に訴えかけた。


  如月家に生まれたからには絶対に魔法の才能があるはずだ。十五歳になるまでに、魔法の才能の片鱗を見せなかったら破門してい。だからそれまでは自由にさせてくれと何度も訴えかけた。


  しかし、夜光は紅夜の言葉を聞き入れなかった。

  それも夜光は、紅夜の言葉を耳にすら入れてない様子だった。

  それでも紅夜は挫けず何度も夜光に訴えかけた。

  そして、十回目にしてようやく夜光は口を開いた。


  「あと一度でも俺の所に来てみろ、次は幽閉するぞ」

 

  しかし、夜光の口から出た言葉は紅夜にとって死刑宣告のような言葉だった。


  今の拘禁されている状態ですら、家の中をろくに歩けていないのに、幽閉なんてされてしまっては、もはや部屋から出る事すら叶わない。


  この言葉を聞いて紅夜は確信した。

  夜光⋯⋯父親は俺の事をいずれ消すつもりだと。


  紅夜は決意した。絶対にこの家から抜け出してやると。

 

  しかし、この家から抜け出すのは容易ではない。

  紅夜は拘禁されている立場だ。

  敷地内にある全ての監視を掻い潜らなくてはならない。

  それも名門と言われる如月家の監視をだ。


  そんな事は常人には到底不可能であった。


  しかし、紅夜には秘策がある。

  紅夜は天才と呼ばれる兄でも使えない、天災級魔法が使えるのだ。


  天災級魔法とはその名の通り、発動すれば天災並の被害をもたらす魔法だ。


  才能の無いと言われている紅夜がなぜそのような魔法が使えるのかというと、紅夜が実際に天災級魔法を()()からだ。


  紅夜には魔法を()()事ができる。


  いつ魔法を見る能力が備わったかは分からないが、ついこの間、夜光が発動した天災級魔法の大嵐テンペストを偶々見かけた時に、魔法陣のような何かを見かけた。


  その魔法陣は、発動する前段階の、魔法を脳内構築する際に出来上がる物だ。


  簡単に言うと、魔法を発動する為の核とも言える物だ。

 

  紅夜はその時に、魔法陣のプロセスを自分で解析し、自ら大嵐を扱えるようにした。


  ならばその魔法を夜光に見せて、自分は無能ではないと証明すればいいと思った事もあるが、紅夜はすぐにその考えを捨てた。


  ろくに魔法が使えなかった紅夜が、突然俺は天災級魔法が使えると言っても怪しまれるだけだ。


  実際に使える所を見せたとしても、教えた事も無い天災級魔法だけはなぜ使えるのかと、夜光に疑問に思われるだろう。


  そうすると、どうやったら天災級魔法だけを使えるようになったかを解明する為に、夜光は紅夜を実験に使う筈だ。

  夜光には優秀な長男が居る。仮に紅夜が実験で死んだとしても何ら問題が無い。



 ――



  そして、紅夜はその天災級魔法を使い家からの脱出をした。


  基本的には紅夜は部屋の中で一人だ。夜光は紅夜が初級魔法が何とか使える程度だと思っているので、魔法対策は一切していなかった。

  紅夜はそれを知っていたので作戦など何も考えずに、部屋で天災級魔法の大嵐テンペストを発動させた。


  唐突に天災級魔法大嵐に襲われた如月家は、一瞬にして半壊状態まで追いやられた。


  紅夜は大嵐で家の中がごった返しているのを利用し、家から逃走した。




  Side如月家


  夜光は混乱した。

  家の内部で天災級魔法大嵐が発動したのかではなく、家の中の誰かが大嵐を発動させた事にだ。


  如月家と言っても天災級魔法を扱えるのは、当主の夜光しかいない。

  他の名門家のスパイが紛れ込んだ可能性が濃厚だが、そんな優秀な人物を雇っている所は一つしかない。

  しかし、その名門が如月家を攻撃するメリットがない。

 

  では、誰がやったのか⋯⋯考えても皆目見当がつかなかった。


  ⋯⋯考えても分からない。

  今は大嵐を相殺レジストする方が先決だと思い、自らも大嵐を発動させた。


  一般常識として相手が使った魔法と同じ魔法を使えば、相殺されると言われている。これは小学校で習うレベルの事だ

  事実、今までは相殺出来た。


  しかし、この大嵐は相殺出来なかった。


  この事実には夜光も怒りを隠せなかった。

  なぜ夜光が怒っているか?

 

  今までは魔法を相殺出来た。しかし、今発動している大嵐は相殺出来なかった。

  つまり、どこかの家が魔法を相殺出来なくする技術を開発したという事になるからだ。


  相殺が出来ないという事は、一方的に相手に叩きのめされるだけだ。

  これでは日本でのパワーバランスが大幅に変わってしまう。

  つまり、やりようによっては一つの家が日本を征服する事も可能なのだ。


  もう一つ相殺出来なくする方法はあるのだが、それを使ったとは考えにくかった。

  もう一つの方法とは、魔法をアレンジする事だ。


  アレンジとは、魔法構築を正しくやらずに何かを省いたり、逆に何かを足したりする事を言う。


  もちろん、何かを省けば魔法の威力は減少するし、何かを足せば威力は上がる。


  しかし、アレンジをするには相当腕が利かないと不可能だ。


  初級魔法をアレンジするのにも、才能がある人間が数年かけてやっと出来るようになると言われている。

  それ程難しいアレンジを、天災級魔法でやってのけてしまう人物が居たとしたら、それはもはや神と言えるだろう。


  事実、今まで天災級魔法のアレンジを成功させた人物は一人も存在しなかった。


 




  だから夜光は、この大嵐が相殺出来ないのは何かの間違いだと信じて、相殺をする為に大嵐を発動し続けた。

  しかし、それは無駄な努力に終わった。


  十分後大嵐は治まった。いや、正確には治まったというより、消滅したと言った方が正しい。


  大嵐が消滅した後広がっていた光景は、名門とはとても思えない如月家の姿だった。




  紅夜が家から脱出してまず最初に向かったのは、幼馴染みである深冬みふゆの家であった。

  深冬は名門白露しらつゆ家の次女だ。


  まだ拘禁されていなかった頃に、名門繋がりで仲良くなった。

  拘禁されてからも深冬と会うことだけは許されていた。

 

  しかし、如月家と白露家の家の距離は近くない。

  如月家は埼玉にあり、白露家は東京にある。

  車や電車等を使うとなると距離は短く感じるが、歩くとなると一日で行ける距離ではない。

  紅夜はお金の所持を認められていなかったので、徒歩という選択肢しかない。


  そこで紅夜がとった行動は、自分を大嵐で東京湾に飛ばすというなんともぶっ飛んだ方法だった。


  これは単に移動する為という理由ではなく、別の目的があった。

  それは、東京湾に大嵐を発動させ白露家をおびき出す事だ。

 

  天災級魔法が自分の家の近くに発動すれば、たとえ名門だろうと発動現場に来るだろうという考えだ。


  紅夜は作戦が決まった瞬間威力は強め、範囲は自分の足元のみに設定した大嵐を発動させた。

  発動させた瞬間、自分の体は空に投げだされた。


  作戦の第一段階は成功した。


  次は作戦の第二段階だ。

  東京湾が見えてきたら威力は弱めで派手に大嵐を発動させる事が重要である。

  しかし、威力は弱めすぎては駄目だ。

  大嵐と認識されない可能性があるからだ。

 

 


  ――――




  イメージトレーニングをしている内に東京湾が見えてきた。

 

  紅夜は東京湾が見えたと同時に、大嵐を発動させた。


  イメージトレーニングを事前にしていたので、難なく理想の大嵐を発動させる事が出来た。


  数秒が経ち、自分が大嵐に乗った事を確認した。

  後は、大嵐の威力を少しずつ弱め、水面に着水するだけだ。


  大嵐の威力を弱め、水面に着水しようとしたその時だった。


  大嵐が唐突に階段状に氷り始めた。


  この瞬間から作戦の第二段階は成功していた。


  大嵐を階段状に氷らすという規格外な事ができるのは、白露家の当主である白露冬音しらつゆふゆねしか居ないからだ。


 


  Side白露家


  とてつもない魔力を東京湾から感じた。

  超級魔法を軽々と超える魔力だ。


  そんな魔法は天災級魔法しか存在しない。

  どこかの当主が、直接殴り込むという馬鹿げだ行動をとったのだろうと思い、私は転移魔法を使い魔力の発生元である東京湾に向かった。


  東京湾には十秒もしない内に着いた。

 

  そこで見た光景は、水を巻き込んだ大嵐の上に座っている少年という何とも奇妙な光景だった。


  そう、座っていたのだ。まるで椅子に座るかの様にして。

 

  しかも、その少年には見覚えがあった。

  娘である深冬の想い人の如月紅夜だ。


  如月家とは敵対していない。寧ろ味方と言っていいだろう。

  だからこそ、なぜ連絡も無しに東京に来たのか、そして何よりも天災級魔法を使った意図が全く掴めなかった。


  私は、なぜ天災級魔法を使ったのか、何の用件があって東京に来たかをを聞くために、同じ天災級魔法である絶対零度アブソリュートゼロを発動させ、大嵐を氷らせた。




  紅夜は、大嵐が階段状に氷ったのを確認し、その氷の階段を降りた。


  そこに居たのはやはり白露家の当主である白露冬音だった。


  「紅夜くん、何の意図があって夜光は大嵐を発動させたのか答えてくれるかな?そして、どんな用件で東京に来たのかな?」


  氷状の階段を下りて最初に言われた言葉は予想通り、警戒の意味が篭められた言葉だった。


  「父は大嵐を発動させていません。発動させたのは俺です」


  俺はまず、この件に関して父が全く関与していない事を伝えた。


  「紅夜くん?さすがにそのような話を信じられるわけないでしょ」


  俺の発言は当然信じてもらえなかった。

 

  当たり前だ。普通は十四歳の少年が天災級魔法など使えるわけがないのだから。


  ならば無理にでも信じてもらおう。

  俺は信じてもらうために、大嵐を発動させる瞬間まで魔力を込めた。


  「なにその膨大な魔力は?超級魔法を軽々と超えている⋯⋯まさか本当に大嵐を使えるの?」


  冬音さんは俺の膨大な魔力量を感じて、超級魔法を超える魔法だとすぐに分析していた。


  ここまで分かっていれば信じてもらえそうだったので、俺は魔力を込めるのを中断した。


  「まさか本当に大嵐を使えるとは⋯⋯それでは完全に私用で東京に来たという事かな?もしそうだとしたら、なんで大嵐を使ったの?」


  俺は今まで家で受けていた仕打ちを全て話した。

  拘禁されていたことや無用の長物と言われいた事もだ。


  「なるほどそれで大嵐を使ったのね⋯⋯でも、まだ東京に来た本当の理由は話してないよね?家から逃走したのならもっと遠くにいけばいいし」


  ついに話す時が来た。

  本題である俺の事を匿ってほしいと伝える時が来た。

  俺は心臓の鼓動が速くなるを感じた。

  そして⋯⋯


  「俺の事を匿ってください」


  俺は一切隠さずストレートに伝えた。

  俺の言葉を聞いた冬音さんの顔は、一瞬怪訝な面持ちを見せた。

  だが、それも僅かな間の事だった。

  冬音さんは俺をどうするか決めたようで、すぐに元の顔つきに戻った。


  「いいわよ」


  発した言葉は、「いいわよ」の一言だった。

  だがその一言は、俺にとって何よりも嬉しい言葉だ。


  「い、いいんですか!?」


  俺はこんなにすんなり許可が貰えると思っていなかったので、感謝の言葉よりも先に、驚きの言葉が出てしまった。


  「紅夜くんが匿ってほしいって言ったんでしょ?」


  冬音さんから出た言葉は、少し俺をからかう様な言葉だった。


  俺はこれで自由になれると思うと涙が出そうになった。

  だが、俺はギリギリの所で堪えた。

 

  その様子を見た冬音さんは……


  「辛かったのね⋯⋯」


  一言そう言い、俺の事を抱きしめてくれた。


  俺は冬音さんに抱き締められた事によって、涙を堪えきれず、情けなく涙を流した。




  Side冬音


  紅夜くんの言葉を聞いた時、何かの作戦かな?と疑った。しかし、すぐにその考えを否定した。なぜなら、紅夜くんの目は助けを求めるそれだったからだ。


  余程辛い思いをしないとあんな目はできない。

  だから私は、匿う事を決めた。

 

  (それに、紅夜くんを匿うことで面白い事も起きそうだし)



 ――――




  冬音さんに匿ってもらってから七年が経った。


  匿ってもらってから俺の周囲の環境は激的に変わった。


  まずは、学校に行けるようになった。

 

  冬音さんの伝手で、深冬と同じ私立中学校に途中入学した。

  そこで俺は、普通の人と同じ様に勉強し、部活動に励み青春を謳歌した。


  次に、俺は魔法の才能を開花させた。いや、開花させたというよりかは、自分がどうやったら魔法を使える様になるかが分かったと言った方が正しい。


  どうやら俺は魔法を直接()()()()()魔法を使えない体質らしい。


  その事に気づいた俺は色々な魔法を見た。初級から超級まで属性問わず色々な魔法を見た。


  その結果、風属性と火属性が超級魔法を操れるまで成長した。

  他には、重力魔法が扱える。


  最後に、俺に恋人⋯⋯妻が出来た。

  相手は幼馴染みである深冬だ。

 

  高校の卒業式の時に告白をして結ばれた。


  その一年後に結婚式を挙げた。

  かなりのスピード婚だったが、浮気の心配や離婚の心配などは殆どない。

 

  これらは今までの拘禁生活を送っていたら、絶対に体験出来なかった事だ。


  そして、俺は明日二十歳の誕生日を迎える。

  それと同時に、深冬と二人で暮らす予定だ。


  妊娠もしていないが、子供の名前も決めた。

  男の子なら深夜しんや女の子なら深夜みよだ。

 

  俺は深冬との暮らしに思いを馳せ、胸が高鳴った。




 ――――




  深冬と暮らし始めてから一年が経った頃、深冬が妊娠している事に気付いた。


  妊娠は七週目だった。


  俺は嬉しさと同時に、申し訳なさがこみ上げてきた。


  俺は長期出張に出てしまい、出産予定日前後には戻って来れなそうだったからだ。


  だから、戻って自分の子供の姿を見たら全力の俺なりの愛情を伝えようと思う。

 

  生まれてきた子が、男の子だったら深夜しんや女の子だったら深夜みよと呼び、全力で抱き締めようとそう思った。

魔法の属性の種類


火属性・水属性・風属性・氷属性・地属性・光属性・闇属性・無属性魔法があります。


無属性魔法に属する魔法は多数あります。

この話の中で言葉だけ出てくる重力魔法もその内の一つです。

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