表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/29

凛耶の心情[3]

 遂にこの日がやってきた。

  今日は契約最終日。つまり、深夜と勝負をする日だ。


  俺は深夜との勝負に期待をしつつ、万全の装備で如月紅夜の家に向かった。


 


  案の定深夜は俺の事を待っていた。


  「おう、深夜待たせたな」


  俺はとりあえずお決まりの言葉を掛けた。

  これはいつもの事で、俺が如月紅夜の家に行くと、必ずと言っていい程深夜が出迎えてくれる。


  「いや、待っていない」


  いつもの深夜なら、ここは超待ったとか言うのだが、今日の深夜は言わなかった。


  (なるほど⋯⋯真剣ってわけか)


  「⋯⋯そんじゃ始めるか⋯⋯隔離空間アイソレーション


  俺は深夜の意思に答えるように、無駄な言葉は言わずに隔離空間を発動した。




 

  (なかなか仕掛けてこないな⋯⋯)


  隔離空間を発動してから数分が経ったが、深夜の方からは仕掛けてこなかった。


  (俺から仕掛けるか?⋯⋯いや、それは無しだ)


  俺から仕掛けようかと思ったが、それは止めた。

  それをしてしまうと、折角の楽しみを潰してしまう可能性があるからだ。


  そんな事を考えていると、遂に深夜が動いた。


  深夜は全身に強化ブーストをかけていた。


  (まずは接近ね⋯⋯セオリーではないな)


  普通魔法を使う者同士の戦闘は、小回りの効く魔法で牽制しつつ、大技を決め込んでいくというのが一般的な戦い方だ。


  時折近接の武器を得意とする魔法使いも居るが、深夜はそれには当てはまらない。


  (天才とは言え素人だしな⋯⋯)


  深夜の戦闘スタイルを分析していると、既に五mの距離まで接近して来ていた。


  「炎拳ファイアーハンド!!」


  深夜は魔法を発動した。


  (炎拳ねぇ⋯⋯まぁ通用しない事を教えてやれば戦術も変えるだろう)


  俺は接近してくる深夜に、無発声で烈風ウインドを発動した。


  俺の烈風を直撃した深夜は、三十mぐらい飛ばされていた。


  「俺が接近戦に弱いと踏んだようだが、それは甘い⋯⋯それに俺は接近戦は苦手ではない。お前が懐に入れたとしても、何も出来ずに終わってたぞ」


  俺は追い討ちを掛けるように、接近戦は苦手ではないと示唆した。


  「そうかい⋯⋯ならこれはどうだ?」


  しかし、深夜はまたしても接近して来た。


  (⋯⋯馬鹿なのか?いや、作戦があるのか?)


  俺は少し戸惑ったが、先程と同じく烈風を発動させた。


  「烈風!!」


  だが、俺の烈風は深夜の烈風によって相殺レジストされた。


  「!?相殺か⋯⋯」


  この事に俺は驚きを隠せなかった。

  深夜は俺の無発声の魔法を相殺したのだ。

  無発声の魔法を相殺するには、長年の経験が必要になる。

  いくら天才とは言えど、実戦経験皆無の深夜に相殺出来る筈が無かった。


  だが、俺は今になって思い出した。

  深夜は()()持ちだった事に。


  (深夜の贈り物は、魔法を見る事が出来る類の物だったか⋯⋯)


  そして、深夜の贈り物の種類に気付いた。


  (⋯⋯イカれた贈り物だな⋯⋯さすが親子と言ったところか)


  俺はどこまで深夜が出来るのかを試したくなってきた。

 

 

  (さっきより威力を高めたやつにするか)


  俺は接近してきた深夜に、先程の数十倍の威力を誇る烈風を放った。


  (さぁーて、当たったら腕は飛ぶかな)


  俺は軽く腕を飛ばすつもりで烈風を放った。


  「!?」


  だが、深夜は突然炎拳の発動を止め、俺の烈風を完璧に避けた。


  深夜は、一mmも掠らずに完璧に避けたのだ。


  「やるじゃねーか!今のを避けるとはな」


  俺は無意識の内に、賞賛の言葉を投げ掛けていた。

  それと同時に、俺は深夜の秘策を見たいという欲求が湧いてきた。

  俺とヤリあおうとしているのに、この程度の作戦で挑んで来るわけがない。

  更なる秘策がある筈だ。


  そう考えたら、俺はもう欲求を抑えられなくなっていた。


  「おいおい、まさかこれで終わりじゃねーよな?」


  俺は、烈風で抉れた地面を見続ける深夜に問いかけた。


  「まさか、そんなわけないだろ?」

  「なら、早く秘策を見せろ。こんなちまちました事をやってても、俺にかすり傷さえ与えられないぞ?」


  俺の言葉を聞いた深夜は、逡巡した様子を見せたが、直ぐに決断をしたようだ。


「凛耶!俺は次の魔法で最後の攻撃にする」


  「言うじゃねーか⋯⋯さっさとその魔法を見せてみろ」


  深夜の言葉に俺は、自然と身構えていた。


「最後にもう一つだけ聞いても良いか?」

「あ?何だ」

「もし、俺自信が死ぬような技を使ったらどうする?」


だが、深夜は魔法を使用せず妙な質問をして来た。

こんな質問をするということは、おそらくだが深夜がこれから使う魔法は、自傷行為を伴う魔法な筈だ。

だからその魔法に恐怖を感じている。それ故に俺にこの質問をぶつけたのだろう。


ならば俺の答えるべき回答は、これしかない。


「そんな魔法お前が使えるとは思えねーが・・・・・・もし使ったなら打ち消してみせるさ」


俺は直接助けると言うのは気恥ずかしかったので、遠まわしにそれを匂わせる回答をした。


俺の回答を聞いた深夜は、軽く頷き魔法を発動した。


  「水作成クリエイトウォーター


  だが、深夜がそこまで言って使った魔法は、ただの水作成だった。


  それも、その水作成で隔離空間を埋めて、俺の動きを封じる作戦に出たのだ。


  「それが秘策か?⋯⋯俺の行動力を封じると言ったところか」


  俺は思わず呆れて言葉に出てしまった。


「そんな事の為に使うわけないだろ?⋯⋯なぁ凛耶、水蒸気爆発って知ってるか?」


  だが、対する深夜は違うと言い、唐突に水蒸気爆発について聞いてきた。


「あれだろ?大量の水と高温の熱が接触した場合に起こる爆発だろ⋯⋯お前まさか水蒸気爆発を起こす気か!?」


  俺は深夜が水蒸気爆発という言葉を出した事によって、水作成を使った意図がやっと分かった。

  だが、水蒸気爆発何て事を起こしてしまえば、深夜本人が死ぬ。

  それにこれは魔法ではなく、魔法を使って自然現象を起こす技術だ。相殺する事なんて不可能だ。

打ち消すとは言ったものの、ここまでの事をしてくるとは思っていなかった。


  「おい!深夜止めろ」


  俺は心の底から叫びながら、深夜の事を止めに行った。

  だが、俺には水属性の魔法が使えない。

  更に、大量の水で移動が制限されている。


  深夜の魔法発動までに、間に合うわけがなかった。


  「凛耶今までありがとうな⋯⋯暴走熱量オーバーヒート!!」


  深夜は暴走熱量を発動させた。


  これでもう、()では止められない。


  「深夜!チッ⋯⋯あれを使うか⋯⋯歪み時(クロックストレイン)


  俺は禁術である歪み時を使い、爆発した瞬間で時間の流れを変える事に成功した。


  (ふぅ⋯⋯止めたは良いけどこれを使ってしまったか)


  だが、俺はここからが正念場だと思った。


  一般的に魔法の級位は、初級から天災級まであると言われているが、ではそうではない。


  禁術魔法とは、世界⋯⋯地球その物に干渉する魔法の事を言う。


  歪み時は、隔離空間内の時間の流れる速さを、千万分の一の速さまで遅らせる魔法だ。

  もちろん、使用者には効果は掛からないので、隔離空間内だけは無双が出来る魔法だ。


  しかし、デメリットがある。


  隔離空間はその名の通り、世界から隔離された空間だ。


  つまり、隔離空間内の時間の流れを遅くしても、地球の時間の流れは変わらないのだ。

  それ故に隔離空間内の三秒は、地球の一年となる。

さらに、歪み時から解放された瞬間、時間の流れは地球本来の流れに戻る。

それ故に、使われた側は歪み時から解放されると同時に、肉体までもが急成長してしまう。


  これが、歪み時が禁術魔法と言われる所以だ。


 


  俺は出来るだけ影響を抑えるために、深夜の元に急いだ。


  深夜と俺の距離は、約三十m。

  俺の泳ぎで、十五秒で着いた。


  そこから、俺が禁術魔法を使った事を隠蔽する為に深夜を気絶させる。

  時間にして一秒。


  隔離空間の発動を完全に止めるのに二秒。

  合計で十八秒かかった。


  (チッ⋯⋯六年か⋯⋯まぁ俺には身体的な影響は無いから良いか)


  こうして俺は十八秒、深夜は六年の月日を経て、隔離空間内から無事に出る事に成功した。

これにて一章が終わりになります。


これまでの感想及び評価を下さると幸いです。

感想は、なるべく返信するように心掛けております。


※誹謗中傷する感想は無視します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ