プロローグ
大勢の観客が見つめる先にあるコンサート会場で見る様なモニター
そこには、迷彩服に身を包み、スコープを覗いている2人の兵士の視点を半分ずつ映し出している。
薄暗く天井まで届くほどに物が積み重ねられ、まるで倉庫のような場所で2人はお互いの位置を探るように慎重に歩みを進める。
風が通らないせいか音は一切ならない。
足音がすれば、すぐに場所を知られるだろう。
それは負けを、すなわち死を意味する。
そして、二人の距離は着々と近くなる。
見守る観客も息を殺すかのように静まり返っている。
モニターの画面に迷彩服の兵士が2人映る。
二つの銃声が会場を震わせた。
今までの沈黙を唐突に切り裂いた銃声とともに大きな声がモニターの横から飛んだ。
それが勝負の終わりを告げる鐘となり、一呼吸遅れその声を聴いた観客から言葉にならない声や拍手が飛ばされる。
「おめでとうございます!優勝はFacTioDogです!!」
歓声と拍手が止まらないと判断した司会が、マイクを通した大きな声で勝者の名前を呼んだ。
客席が静かになっていく。
神楽大介《かぐらだいすけ》が時代遅れなゲームに惹きつけられた瞬間だった。