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世界最強は異世界でも最強ですか?  作者: 鯨鼠さん
世界最強は異世界に召喚されたようです。
18/23

<16>異変の原因を探ろうとしますが……?

 

 勇者がこの町に来てから3日目の朝。

 今日でお別れとなってしまう勇者のため、少しだけ豪華な朝食を食べながらユウは異変のことについて考えていた。

 考えすぎはよくないかもしれないが、何かあった時のために最悪を考えておいて損はない。



「……最初勇者様が来た時はどうしようかと思いましたけど、居なくなるとなると寂しいですね……」


「勇者様もう少し泊まらない?」


「そう言って頂けるのはありがたいのですが、これ以上いると町の人たちに影響が出てしまいますから」


「僕らみたいに慣れればいいのにね!」



 最初勇者の威圧感で倒れていたトオヤであったが、今では普通に会話することができるようになっていた。

 町の人間も、3日間同じ宿で泊まっていたらこうなるのだろうか?

 


「……町の人たちもフーリやトオヤと同じならいいんだけどな……」


「あはは……それは無理ですよユウさん」



 普通の人は最初の威圧感で苦手意識を持ち、それ以上関わりを持たないようにするのでフーリやトオヤのようなパターンは珍しいようだ。

 誰もかれもと仲良くなれとは言わないが、もう少し勇者を知ろうと思わないのだろうか、と疑問には思う。

 だが町の人間は勇者を化け物と呼ぶ。そんな偏見がある限り勇者を知ろうと思う人間は増えることはないだろう。



「それで、調査は昼からにするんだよな?」


「はい。お昼までに1度町を見て回りたいんです。そのあとここで昼食を頂いてから、外の異変を調べて何もなければそのまま次の町に行こうと思います」


「……昼すぎから移動始めて次の町に辿り着くのか?」


「無理です」


「…………」


「ですが、それは朝に出発しても同じです。なので、お昼すぎからで問題ありません」


「……あんたがいいならそれでいいけど」


「ええ。というわけで、私はお昼まで出かけて来ます。女将さん、お昼もお願いします」


「……あ! はい! お昼もちゃんと用意しておきますね!」


「みんなで一緒に食べようね!」


「……はい」



 嬉しさを噛みしめた声音で勇者は言葉を返した。



――――



 朝食を食べ終え、微笑むフーリと元気の良いトオヤに見送られながらユウと勇者は宿から出た。



「……って、何でユウさん付いて来てるんですか」


「いや、一緒に外出そとでただけだが」


「……本当ですか?」



 なぜかジトーとした目で勇者に見つめられる。



「なんだよ……」



 どうしてそんな目で見られるのかわからないので素直に尋ねて見る。



「いえ……。すみません何でもないです」


「そうか」



 それ以降勇者と会話をすることもなく、途中の道で別れることに。

 ユウはなんでも屋へ。勇者は全体的に町を見回るそうだ。




「こんちゃーです」



 特に何事もなくユウはなんでも屋へ辿り着いていた。

 町の様子に何か変化はないか観察しながら歩いて来たが、これと言って気になるところはなかった。

 強いてあげるあらば、勇者のことについて話し合っている町人が少しいたくらいだろう。



「お、ユウか。今日も来たんだな」


「……ムバムは毎日いるのか?」


 

 ユウがなんでも屋に行くと、大抵ムバムはそこにいる。……アリア目当てなのだろうか。



「ちげーよ! ラミとフゾーと集まる時にここを待ち合わせ場所にしてるだけだよ!」


「……声に出していたか?」


「目が変態を見るような感じだったぞ!」


「……ふーん?」



 変態を見るような目だけで考えている内容までわかるものなのだろうか。

 と今日はムバムは放っておいて、ユウはなんでも屋受付のアリアの所へ向かう。

 相変わらず緑の帽子と丸眼鏡を装備している。



「……偶には帽子替えたりしないのか?」


「いきなりなんですか」


「いやいや! ちょっとした冗談だから!」



 私不快です、と言わんばかりの声音だったので慌てて訂正する。



「おいユウてめぇ! アリアさん口説いてんじゃねぇよ!」


「口説いてねぇよ……」


「ムバムさんの耳は腐っているんですか? 耳の交換をオススメします」


「風当たり強すぎないか!?」



 突如会話に入ってきたムバムも適当にあしらい、ユウは本題に入る。



「最近この町の周辺に魔物がいないことは知っているか?」


「ええ、ムバムさんが聞いてもないのに話して来るので」


「……その中で何か変に感じたこととか、何時もと変わったこととか報告来てないか?」


「そうですね……」



 頭に手を当て考える動作をしながらアリアは言葉を紡ぐ、



「……これといった報告はありません。ですが、魔物が居なくなるのは珍しいです。大規模な狩りを行ったわけでもないですし、少し不思議ですよね」


「…………不思議ですね、で済ませていいんですか」


「ですが、どうしようもないじゃないですか。一応ムバムさんや他の人たちが町の外を探索しましたが、特に異常はないと報告を受けていますし」


「まぁ、確かに」


「まぁまぁ! そこまで不安がる必要もないんじゃないか?」



 ムバムが近付いて来ながら会話に加わる。

 遠くで仲間はずれにされていたのが嫌だったようだ。



「魔物がいなくなって困ることは……結構あるが、まだ2日目だ。これが一週間とか1ヶ月とか続いたらやばいけどよ、本格的に原因を探るのは今日じゃなくてもいいんじゃないか?」


「……そうやって後回しにして、手遅れにならないといいけどな」


「手遅れってなんだ? この町が滅びるとかか?」


「…………いや、考えすぎか。悪かったよ」


「別に謝らなくていいんだけどよ、お前の世界じゃこういうことが起きるのは悪い予兆なのか?」


「どうだろう。前の世界じゃ嫌われ者だったし、そこまで同じ場所にもいなかったからよくわからないや」


「嫌われ者? ユウがか?」


「意外ですね……。ユウクラリアさんが嫌われてる所が想像できません……」


「あ、あははは……。ちょっと、その辺はあまり深く聞かないで欲しいな……」


「おお、悪い。だが、少なくとも俺はお前のこと嫌いじゃないからな!」


「私も嫌いではありませんよ。ですが、好きという程でもないですね」


「……君たちはっきり言うね……。いや、嫌われてないならいいんだけどさ……」



 前の世界から比べるなら嬉しい限りだが、この世界で暮らしている今となっては微妙な評価である。

 


「ま! 俺もアリアさんもお前のことを悪く思ってないってことだな!」


「……そりゃどうも。それじゃ今日は俺戻るわ」


「なんだよ。金不足って言ってなかったか?」



 つい疑問に思ったムバムが引き止める。

 アリアも今日は依頼を受けると思っていたのか、依頼のまとめ本を手に持って停止していた。



「あ、ああ。金不足は不足してるけど、今日勇者が町から出て行くから見送り。ついでに魔物がいない原因も探ってみてくれるらしいから付いて行く事にしてるんだ」


「…………」


「…………」


「……なんだよ」



 無言で顔を見合わせている2人に不満の声を上げてしまう。

 何かおかしいことを言ってしまったのだろうかと不安になっていると、



「お前……勇者に惚れてんのか?」


「はぁ?」


「……その反応ですと何も考えていないようですね」



 ユウが首を傾げている間にも、どんどん話が広がっていくようで、



「これは、もしかしたらもしかするのか?」


「……考えられますが、本当に何も考えていないだけのようにも」


「しかし、あの様子だと自分が気付いていないだけとか……」



 と2人でぶつぶつ話を続けるている。

 ユウはもうなんでも屋(ここ)にいても仕方がないので、話に夢中になっている2人を放って店を出た。

 

 まだ昼には早いが、宿に戻って部屋でゆっくりするのも悪くないだろう。

 何かが起こった時に体力不足で動けない、なんてことになったら本末転倒である。


 



――――



「ユウさん。勇者様帰って来ましたよ」


「…………フーリさんか」


「はい♪ おはようございます!」


「……昼だけどな」



 部屋でゆっくりしようと、ベッドに寝転んでいたらいつの間にか眠っていたようだ。

 何時ぞやと同じようにフーリに起こされてしまった。

 ……鍵は閉めていたような気がするのだが、忘れていたのだろうか……?


 ちょっとした2度寝でぼうっとした頭を覚ますそうと、軽く頭を振りながら1階に降りる。

 1階にいた勇者は、最初申し訳なさそうな顔をしていたが、ユウの様子を見ると、



「……寝ていたんですか?」



 不機嫌そうな顔になったのだった。

 


「なんでそんな機嫌悪くなるんだよ」


「いいえー? 私ももう少し寝て居たかったので羨ましいだけですよー」


「嫉妬かよ……」



 そんなやり取りを見ていたフーリが、くすくす笑い始めたのに気が付き2人は気恥ずかしくなったのか黙って椅子に座る。

 


「あらら♪」



 やり取りを見守っていたフーリはなんでもなかった風を装いながら昼食を並べていく。

 勇者がこの町を出る前の最後の食事だ。




――――



「町を見て来ましたが、これといって異変はありませんでした」



 サラダをもしゃもしゃ食べながら勇者は言う。



「魔物がいないという話も尋ねてみたんですが、皆それ程気にしていないようです」


「……そうなのか」



 今のところ何かを感じているのはユウと門番のジョンソンだけである。

 ここまで皆が皆何も感じていないとなると、おかしいのは自分のように思えてくる。



「でも、魔物がいなくなると困りますね。お肉が無くなっちゃいます」


「ええー! お肉食べれなくなったら僕何食べて生きていけばいいの!?」


「葉っぱ食べましょう!」


「……えぇー」



 トオヤが不満そうに言う。



「えー」



 ユウも不満そうに言う。



「し、仕方ないじゃないですか! 取れないんですもの!」


「そうだけど……。葉っぱあんまり好きじゃないし」


「そうだーそうだー! 早く魔物でてこーい!」


「出て来ーい!」


「子供が2人です……!」




――――



 ソレは唐突だった。

 違和感はあった。

 ユウやジョンソンが感じ取っていたソレがそうだ。


 ソレは南の森からやって来た。

 森と町の間を一歩《、、》で通り越して、ソレは町の周りを囲っている塀を上から踏み潰した。

 町中に響き渡る程の轟音。

 耳を塞いでいたとしても聞こえる異変に、町の人々はその音がした方向を見やる。


 そこにいたのは白く、巨大な怪物だった。

 異常に細く長い手と足。

 その足と手に比べると全く釣り合いの取れない巨大な上半身。

 そして上半身の真上に、目と口だけが付いている小さめの顔があった。


 あまりの巨大さに、人々は恐怖を忘れてしまった。

 だが忘れてはいけない。

 この怪物は一歩しか歩いていないということを――!


 怪物がもう片方の足を上げる。

 今度は塀を踏み潰すためではなく、障害物を蹴り飛ばすかのように……。



「ま、まずい!」



 誰かが叫んだ。

 だがどうしようもない。

 あんな巨大な怪物を、どうしろというのだろう?

 怪物が足を振るう。

 それだけで町の一角が吹き飛んだ。



――――



「な、なんだ!?」



 轟音がした直後、ユウと勇者は即座に外へ出ていた。

 キョロキョロと辺りを見回すと、巨大な白い怪物がいるのに気が付いた。

 宿の周りは、他にも背の高い建物がいくつもあるというのに、その白い怪物の姿ははっきりと確認することができる。



「……なんですか、あれ」



 隣いる勇者が思わず口に出す。

 ユウはあの怪物を知っている。

 だが、最初に会った時はあそこまででかくなかった!



「っいけない!」



 怪物が動き始めたのを見て、即座に勇者は宿の中に戻った。

 数瞬遅れてユウも宿に戻った。

 このままでは、フーリとトオヤが為す術なく死んでしまう!



「フーリ! トオヤ!」



 宿の中で固まっていた2人の名前を呼ぶが、混乱からか動く様子がない。

 ユウがトオヤを手で抱えて、勇者がフーリを抱きかかえる。

 宿の入り口に戻っている暇はないので、仕方がなくユウは宿の壁を蹴り壊して外に出た。

 

 見ればもう怪物の足が迫ってきている。

 ユウと勇者は全力で飛び上がり、その場から離脱する。

 フーリとトオヤが目を回す程の速度だが、そんな心配をする余裕もない。


 再び轟音が響き渡る。

 今度は町が消し飛んだ。




 


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