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魂の宝石  作者: しる
1/1

 この世界では人が死ぬと、宝石になる。

 0.1カラットの小さな宝石。その輝きは鈍く、特に人の目を惹きつけない。

 しかし宝石になった亡き者の縁者にとっては、何物にも代えることのできない、世界で唯一の形見となる。

 その宝石の所有者は、宝石が生まれた時点で既に決まっていた。


「死ぬ間際の最後に思い浮かべた人」


 宝石は、宝石になった時点で、その託されるべき人へと託される。

 誰が作ったかわからないその不可思議なルールは、厳然としてこの世界に存在していた。

 もし一度でも、宝石の所有権が奪われれば、宝石を奪った者に対し天罰が下される。

 宝石を奪った者は、異形の化物へと姿を変えられ、完全に人ではなくなってしまう。

「宝石狩り」と呼ばれるその化物は、ただちに警察によって始末される。

 そして、奪われた宝石は、化物が命を失うと同時に跡形もなく消え去ってしまう。

 人はこの宝石を、宝石魂ほうせきこんと呼んだ。


 ーーーーーーーーーー


「宝石狩りだぁー!!」

 買い物客で賑わう繁華街を、一つの叫び声が混乱に陥れた。

 ーー宝石狩り!?

 辺りを振り返ると、人々が一つの方向へと逃げ去っていく。その女性も人々の流れに従うように、走り出した。

 と、足を挫いて転んでしまった。靴を見るとヒールが外れている。

「もう、こんな時に・・・!!」

 擦り傷のできた膝を見て、女性はイラつく。立とうとするが、どうやら足を痛めてしまったようだ。立てない。

 彼女を無視して、逃げていく人々。

「誰か・・・」

 助けを求めようと、人々に視線を向けるが、逃げることに必死で彼女のことは視界にもはいっていないようだった。

 すると、一つの大きな影が姿を現した。

 異形の化物、宝石狩り。二メートルを超すであろうその体に、顔らしきものは見当たらない。触手のようなものが体中から生えており、表面は血糊でテカテカしている。

 見ただけで吐き気を催すその化物の姿に、女性は恐怖で体が固まった。這って逃げようと考えるも体は動かない。

 化物が、女性の姿に気付き近寄る。

「た・・・たすけ・・・」

 化物の触手が女性を襲いかかるその瞬間、背後からけたたましい銃声音が鳴り響いた。弾丸は、化物の体を貫通し、血が飛び散る。

 体のどこから発しているのかもわからない奇声を上げながら、化物の体はみるみる内に萎んでいった。

 警官が女性に走り寄る。

「ケガはありませんか?」

 化物の血を浴びていたが、転んだ時に痛めた足以外は無事だった。

「あ、ハイ・・・」

 気付いたら自分の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。

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